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「薬害イレッサ訴訟」と「今」の類似点
今、起きていることと、とても似ている薬害事件があります。ある薬が、申請から異例のスピードで世界で初めて日本で承認されました。承認前から副作用が少ないと宣伝されていましたが、承認直後に多くの人が副作用で亡くなったのです。今起きていることは、それを超える薬害事件となるかもしれません。
8月25日に更新された報告
新型コロナワクチン接種後の副反応疑いについて、厚労省のサイトに最新の報告が公開されました。
コミナティ筋注の症例経過は4321ページあるので、まだ全部は見ていませんが、前回より「間質性肺炎」が増えている印象があります。すべてが報告されているわけではありませんし、副反応だと思っていない人もいるでしょう。数はまだそれほど多くはありませんが、増えてきていることがとても気になります。
厚労省サイト ホーム > 政策について > 審議会・研究会等 > 厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)>2021年8月25日 資料
資料1-1-1より
![間質性肺炎 医療機関](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59856490/picture_pc_fb539fd80a60f490c4a074aa559d8ec9.png?width=800)
前回(8月4日)の「28件」から「34件」。医療機関からの報告は、それほど増えていないようです。
追記:2022年2月18日の報告より。
![](https://assets.st-note.com/img/1645834551805-sV6xAHa9mf.png?width=800)
資料1-2-1より
![間質性肺炎 製造業者](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59856498/picture_pc_38aa6313fb31d16ed931cb20e0f4b072.png?width=800)
前回(8月4日)の「28件」から「54件」。製造業者からの報告は倍近く増えています。
追記:2022年2月18日の報告より
![](https://assets.st-note.com/img/1645834581039-tgy3XGoNOd.png)
医療機関からの報告(上)と、製造販売業者からの報告(下)は、重複している報告もあるようなので、正確な数はわかりません。
症例経過(資料1-2-3-1)からの事例をいくつか見てみましょう。
BNT162B2はコミナティ筋注のことです。
事例9695 65歳男性 コミナティ筋注1回接種 ロット番号:ER9480
基礎疾患等:気管支喘息、前立腺癌術後
2021/03初旬、患者はCOVID-19に感染した(中等症ii)。
2021/04/05から2021/04/10まで他院に入院し、治療を受けた。
2021/05/21 10:00、コミナティを接種した。
2021/05/22 06:00、体温は摂氏36.3度であったが、職場へ出社後に咳、痰、息切れを認め、早退した。
13:00、摂氏37.5度の発熱が出現し、自宅で安静し、経過観察した。
2021/05/23 06:00、解熱したが、咳、痰、息切れは持続した。
2021/05/24も症状が持続し、当院を受診した。
採血で好酸球7000/ulの上昇とCTで両肺に斑状の陰影、小葉間隔壁肥厚が認められ、緊急入院となった。
2021/05/24(ワクチン接種3日後)よりPSL 60mg/日で開始した。
2021/06/01より30mg/日に漸減し、好酸球は著明に低下したため、
退院した。 その後、外来でフォローしていた。
2021/06/07、CTで小葉間隔壁肥厚、両肺斑状陰影は多少残存あるも改善傾向であった。 気道壁肥厚改善、縦隔リンパ節が縮小した。
2021/06/08より20mg/日に減量した。
2021/06/22より15mg/日に減量した。
2021/07/06より10mg/日と漸減し、再燃しなかった。
報告医は本事象を重篤(入院)と分類し、本事象はBNT162B2と関連ありと評価した。他要因(他の疾患等)の可能性はなかった。
報告者意見: ワクチン接種後の副反応と同時期の呼吸器症状及びそれに伴う採血異常、CTでの胸部異常陰影を認め、BNT162B2との関与が非常に強く疑われる。
治療に使われたPSL とは、おそらくプレドニゾロン(ステロイド)のことです。報告した医師は、ワクチン接種と「関連あり」と評価しています。
事例10433 80歳男性 コミナティ筋注1回接種 ロット番号:FC5947
基礎疾患等:高血圧
2020/11、肺に異常は認められなかった。
2021/07/09、患者はワクチン接種を受けた。
翌日(2021/07/10)(ワクチン接種1日後)、倦怠感が出現した。
2021/07/13(ワクチン接種4日後)、症状が改善しない為、患者は前医の医師を受診した。
胸部コンピュータ断層撮影(CT)にて、間質性肺炎の所見が認められた。 器質化肺炎や好酸球性肺炎の可能性が考えられた。
ステロイドと免疫抑制薬が使用された。
改善なく、患者は死亡した。 剖検が実施された。
2021/07/23(ワクチン接種14日後)、患者は死亡した。
報告医師は、事象を重篤(死亡)と分類し、事象はBNT162b2に関連
ありと評価した。他の疾患等、事象を引き起こすと考えられる他の要
因はなかった。
報告医師は、以下の通りにコメントした:
慢性肺病変の病歴はなかった。ワクチン接種後すぐに間質性肺炎の所見を認めている。薬剤性肺障害の可能性が高かった。
この事例も、報告医師は「関連あり」と評価しています。資料1-3-1で該当する事例を調べると、因果関係は「評価中」となっていました。解剖も行っているので、これがどう評価されるのか、次回の報告で確認したいと思っています。
追記:2022年2月18日の報告より
![](https://assets.st-note.com/img/1645834642984-QVe9IjVM9r.png?width=800)
「因果関係が否定できない」とされた事例は、まだありません。医師が関連ありとしている事例でも、「評価不能」とされています。
間質性肺炎とは?
厚労省のサイトで公開されている「重篤副作用疾患別対応マニュアル」として、間質性肺炎について書かれたPDFがあります。以下、PDFより。
![重篤副作用疾患総合対策事業1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59858794/picture_pc_dc15c2f664c24fae2d40ba618d27bb59.png?width=800)
![重篤副作用疾患総合対策事業5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59864022/picture_pc_05a4184199f04298c6a1275a6981527d.png?width=800)
![重篤副作用疾患総合対策事業2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59858836/picture_pc_ab4a2b29b691babfc49098e62d9984df.png?width=800)
![重篤副作用疾患総合対策事業3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59858845/picture_pc_933c0a07cf833740675ad802f80627ab.png?width=800)
![重篤副作用疾患総合対策事業 4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59859517/picture_pc_be5cc0ffcdb4aae28e6fe5d92200b65b.png?width=800)
薬害イレッサ訴訟とは?
薬剤による間質性肺炎といえば、2002年にイレッサという薬が大きな被害を出しました。詳しいことは、「薬害イレッサ弁護団」のサイトに書かれています。
追記:2024年1月11日
薬害イレッサ弁護団のサイトがなくなってしまったようです。
上記のサイトで公開されている、薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団によるパンフレット「薬害イレッサ訴訟」には、訴訟の経緯がコンパクトにまとめられています。
以下、パンフレットより。
イレッサとは?
イレッサ(一般名ゲフィチニブ)は、イギリスのアストラゼネカ社が製造し、同社の日本法人が販売する肺がん用抗がん剤です。 2002 年 7 月、承認申請からわずか 5 ヶ月あまりという異例のスピードで世界で初めて日本が承認しました。 「がん細胞だけを狙い撃つ『分子標的薬』だから副作用が少ない」などと承認前から宣伝されましたが、販売直後から多数の副作用死を出しました。
アストラゼネカ社が製造し、異例のスピードで承認された薬です。
イレッサの副作用被害
厚生労働省が把握しているだけでも、イレッサによって急性肺障害・間質性肺炎の副作用を発症した患者は2328 人、そのうち実に 857 が死亡しています(2002 年 7 月~ 2012 年 9 月末まで)。間質性肺炎は普通の肺炎とは全く違う病気です。間質性肺炎にかかると肺が線維化して固くなるなど、酸素を取り込むことができなくなり、悪化すれば窒息死してしまいます。
イレッサの副作用被害は、承認直後の 2 年半に集中しているのが特徴で、報告されているだけでも 557 人が間質性肺炎等で死亡しています。これは、承認前から副作用が少ないと宣伝されていたうえ、致死的な間質性肺炎についての警告が不十分だったためです。 この死亡者数は、他の抗がん剤と比較しても突出して多く、例えば、2004 年度に、副作用死亡者数が最も多い抗がん剤でも 50 人です。これに対し、イレッサは 140 人の副作用死を出しています。
「副作用が少ないと宣伝された上に、致死的な副作用についての警告が不十分だった」というのも、今回の流れに似ています。
繰り返された「安全」情報
アストラゼネカ社は、イレッサが承認される 2002 年 7 月の前後の期間、医師や報道機関に向けて、イレッサが、分子標的薬であってがん細胞だけを攻撃して正常細胞は傷つけないから、副作用が少ない画期的な新薬だと宣伝しました。 それを受けて、報道機関でもイレッサに対する期待感を高める報道が数多く、繰り返しなされました。
医学誌でも、肺がん治療の専門家が登場して、イレッサの効果に期待する内容の対談形式の記事(アストラゼネカ社提供)が掲載されていました。「Medical Tribune」(2001 年 11 月 22 日対談記事)
マスコミもアストラゼネカ社の宣伝を受け、イレッサは分子標的薬だから安全で効果的だという内容の報道を繰り返しました。
この部分は、既視感ありありです。専門家も加担。
今も「安全で効果的」だと、報道が繰り返されています。
過大評価された有効性
イレッサは、一部に著しい効果を示す患者がいることが強調されていましたが、日本での承認条件とされた比較臨床試験(V1532 試験)でも延命効果の証明に失敗しています。
2010 年に発表された比較臨床試験(NEJ002 試験)で、ある特定の遺伝子に変異がある患者(EGFR 遺伝子変異陽性患者)では、イレッサは、従来の抗がん剤に比べて、腫瘍が大きくなるまでの期間(無増悪生存期間)を長くする効果があることを示したとされています。 しかし、生存期間を長くする効果は確認されていません。 この遺伝子変異陽性患者は日本人の非小細胞肺がん患者の約 3 割にとどまるとされています。また従来投与の対象に含められていた遺伝子変異陰性患者には、イレッサは無効であることが明らかとなり、2011 年 10 月に、EGFR 遺伝子変異陽性患者に適応が限定されました。
今回も、発症予防効果は期待できるかもしれませんが、感染予防効果は臨床試験で評価されていないと、特例承認に係る報告書に書かれています。(Vol.1参照)
承認前に分かっていた危険性
イレッサの危険性は、承認段階で既にアストラゼネカ社や厚労省がもっていた情報から明らかでした。 厚労省は、病名だけで副作用を検索していたので、イレッサの重篤な副作用症例を多数見落としたままで、イレッサを承認しました。 下の表は裁判所が認定した、承認前の間質性肺炎による副作用症例です。これらの症例により、イレッサに致死的な間質性肺炎の副作用が起こることは承認前に分かっていたことでした。そのような危険性情報を充分に医療現場に提供することが必要であり、それは可能でした。
※下の表と書かれている表については、パンフレットでご確認ください。
このように、危険性がわかっていても、承認されることはあるのです。
不十分だった危険情報の提供
イレッサの副作用の致死性は、承認前に明らかだったにもかかわらず、初版添付文書には警告欄が設けられることはなく、2 ページ目の「重大な副作用」欄にわずかに「間質性肺炎があらわれることがある」と記載されたたのみでした。 2002 年 10 月 15 日、緊急安全性情報が発出されましたが、その時点で把握されていた副作用症例は、22 例の発症例そのうち 11 例が死亡例でした。承認時に、副作用症例が見逃されなければ緊急安全性情報と同じ警告が発せられていたはずなのです。
今回は、添付文書に書かれていない副反応疑いがたくさん報告されています。「疑い」として報告されていますが、現場の医師が「関連あり」と報告しているものも多数あるのです。そして添付文書などは随時更新され、6月には書かれていなかった副反応が、7月には追記されました。
製薬企業の責任も、国の責任も一切認めなかった東京高裁判決 (2011年11月)・大阪高裁判決(2012年5月)の誤り
薬事法上、医薬品との「因果関係が否定できない」有害な事象は副作用として把握されます。これは危険性の疑いの段階でも適切な対処をするためです。ところが、東京・大阪高裁判決は、「因果関係がある」、「因果関係が濃い」といえなければ安全対策をしなくても良いと言わんばかりの判断をして、アストラゼネカと国の責任を不問にしました。 しかし、危険性の疑いの段階で適切な対処をしなければならないというのがサリドマイド、スモン、薬害エイズなどの薬害事件の教訓で、裁判所もその教訓にしたがって判決、和解勧告をしてきました。今回の東京・大阪高裁判決は、これまでの薬害事件における裁判所の判断とはかけ離れたもので、このような考え方では、到底、薬害を防止することなどできません。
今回も今のところ、死亡に関しては「因果関係は不明」「評価不能」で通しています。多数の被害が出ても、誰も責任をとろうとしないでしょう。
今こそ、過去の事例から学ぶことが必要なのではないでしょうか。原告の訴えなども掲載されているので、ぜひ、パンフレットを読んでみてください。