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閣議決定された地方自治法改正案、このまま両議院で可決されるのか?

地方自治法改正案が閣議決定されましたが、テレビのニュース番組では裏金問題やメジャーリーガーの結婚話に多くの時間を割いて、このことを国民に知らせようとしていません。地方紙は、また共同通信などが配信している情報を元にした記事ばかりです。こんなに重要なことなのに、なぜ国民に関心を持たせようとしないのでしょうか。


地方自治法改正案

地方自治法改正案については、以前の記事でも取り上げました(下記参照)。

以下、NHK NEWSからの引用です。

政府 地方自治法改正案を決定 重大事態発生時の特例設ける
2024年3月1日 11時07分 NHK NEWS

新型コロナウイルスの対応の際に自治体に対する国の権限が明確化されていなかったことが課題となったことを踏まえ、政府は、感染症や災害など重大な事態が発生した場合に、国が自治体に必要な指示を行えるようにする地方自治法の改正案を決定しました。
(中略)
具体的には、大規模な災害や感染症のまん延など、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合に、個別の法律に規定がなくても国が自治体に必要な指示を行うことができる特例を設けるとしています。

この規定をめぐっては自治体側から国との対等な関係が損なわれるのではといった懸念が示されたことから、改正案には国が指示を行う際には自治体に意見の提出を求めるよう努めなければならないことも盛り込まれています。
(以下略)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240301/k10014375571000.html

地方紙は共同通信などの配信を元に書かれているので、どれも同じような見出しの記事になっています。


地方自治体にとって非常に重要なことなのに、なぜ独自に取材をしないのでしょうか。

今回、改正案が「閣議決定」されたので、これから「国会審議」を経て、衆議院及び参議院の両議院で可決したら「法案成立」となる予定です(下記参照)。

提出された法律案は、下記のサイトで見ることができます。

令和6年3月1日 地方自治法の一部を改正する法律案
概要 
要綱
法律案・理由
新旧対照条文
参照条文

「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の定義は、どうなっているのでしょうか。

新旧対照条文 より

第十四章  国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と普通地方公共団体との関係等の特例(資料及び意見の提出の要求)
第二百五十二条の二十六の三  各大臣又は都道府県知事その他の都道府県 (新設)の執行機関は、大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態(以下この章において「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と総称する。)が発生し、又は発生するおそれがある場合において、その担任する事務に関し、当該国民の安全に重大な影響を及ぼす事態への対処に関する基本的な方針について検討を行い、若しくは国民の生命、身体若しくは財産の保護のための措置(以下この章において「生命等の保護の措置」という。)を講じ、又は普通地方公共団体が講ずる生命等の保護の措置について適切と認める普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与(第二百四十五条の四第一項の規定による助言及び勧告を除く。)を行うため必要があると認めるときは、普通地方公共団体に対し、資料の提出を求めることができる。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000931801.pdf

「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」

「その他」「これらに類する」というのが入っていると、何でもありになってしまいそうです。


(生命等の保護の措置に関する指示)
第二百五十二条の二十六の五  各大臣は、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該国民の安全に重大な影響を及ぼす事態の規模及び態様、当該国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に係る地域の状況その他の当該国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に関する状況を勘案して、その担任する事務に関し、生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため特に必要があると認めるときは、他の法律の規定に基づき当該生命等の保護の措置に関し必要な指示をすることができる場合を除き、閣議の決定を経て、その必要な限度において、普通地方公共団体に対し、当該普通地方公共団体の事務の処理について当該生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため講ずべき措置に関し、必要な指示をすることができる。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000931801.pdf

閣議とは、内閣がその職権を行うために開く、内閣総理大臣及びその他の国務大臣による会議です。今回の改正案があっさり決定したように、内閣総理大臣が必要だと言えば、必要と判断されてしまうでしょう。

さらに、「安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生したときだけでなく、「発生するおそれがある場合」でも指示が可能となってしまいます。

このような形で命令を出されたら、各自治体は黙って従うつもりなのでしょうか。

全国知事会のコメント

全国知事会のサイトでは、閣議決定を受けて全国知事会会長が下記のコメントを出しています。


地方自治法改正案の閣議決定を受けて

本日、政府は「地方自治法の一部を改正する法律案」を閣議決定した。
本法律案は、第33次地方制度調査会の答申(※)を踏まえ、公金収納事務のデジタル化などDXの進展を踏まえた対応や地域の多様な主体の連携及び協働の推進、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例に係る規定を整備するものである。

とりわけ、国の地方公共団体に対する補充的な指示(以下「国の補充的な指示」という。)については、新型コロナ対応等で直面した課題を踏まえ、今後も起こりうる想定外の事態に万全を期す観点から、その必要性は理解するものの、憲法で保障された地方自治の本旨や地方分権改革により実現した国と地方の対等な関係が損なわれるおそれもある。そのため、全国知事会として、事前に地方公共団体と十分な協議・調整を行うことや目的達成のために必要最小限度の範囲とすることなどを法案に明記するよう重ねて政府に要請してきた。

この結果、本法律案では、国の補充的な指示について、国と地方公共団体との関係の特例と位置づけられ、必要な限度において行使することやあらかじめ適切な状況把握や講ずべき措置の検討のために地方公共団体に意見等を求めるなど適切な措置を講ずるよう努めなければならないことが規定されており、我々の要請に対して一定の配慮がなされたことは評価したい。

今後、国会審議を経て制度創設に向かうところであるが、なお、法案上必ずしも明記されていないと考えられる点もあることから、国の補充的な指示が地方自治の本旨に反し安易に行使されることがない旨が確実に担保されるよう、事前に適切な協議・調整を行う運用の明確化などが図られるよう強く求める。

令和6年3月1日
全国知事会 会長 宮城県知事 村井 嘉浩

https://www.nga.gr.jp/committee_pt/item/20240301_comment.pdf

※参考:ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(令和5年12月21日

「国の補充的な指示が地方自治の本旨に反し安易に行使されることがない旨が確実に担保されるよう、事前に適切な協議・調整を行う運用の明確化などが図られるよう強く求める」と言っています。

テレビで報じないということは、政府は国民が知らないうちに、成立させてしまいたいということなのでしょう。

パンデミック条約などと同様に、今必要なことは、まずは国民が関心を持ち、「国民が知っている」ことを「成立させたい人たち」に知らせることではないでしょうか。

「閣議決定されてしまった!」と諦めるのではなく、今自分にできることをすることが大切だと思います。

<参考資料>

【参考資料3】専門小委員会における主な意見(非平時関係)