見出し画像

DXとマーケティングその59:タッチポイントの強化・置き換えのパターン

分析屋の下滝です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とマーケティングとの関係を考えてくシリーズの59回目です。

ここ数回は、最近発売された『コトラーのマーケティング5.0』におけるDXとその他のDX書籍での方法論とがどのように関わり合うのかを分析しています。

DXが全社的な取り組みであるとした場合、その実行のプロセスには、整合性や一貫性が求められます。各DXの方法論において、マーケティング5.0がどのように関係するのかを分析することで、それら方法論にマーケティング5.0の考えを組み込めるかどうかを評価でき、その評価に基づき、適切な方法論を作りだせる可能性があります。

分析の最終的なアウトプットは、各方法論をベースに、マーケティング5.0の要素を組み込んだ新たな方法論となります。以下は『DX実行戦略』の書籍の場合です。

今回のテーマでの連載の議論の流れとしては以下を考えています。
1.マーケティング5.0におけるDXを確認する(第40回の内容)
2.これまでの連載で扱っていたDX関連書籍である『DX実行戦略』『デザインド・フォー・デジタル』『DXナビゲーター』との関係を分析していくにあたり、準備を行う(第41回の内容)。
3.各DX関連書籍での「DXの定義」と比較を行い、共通点や異なる点を明らかにする(第42回の内容)。
 3.1.比較を行うにあたり、枠組みを定義する(今回の内容)。
4.これらDX関連書籍での「方法論・手法」の中に「マーケティング5.0でのDX」がどのように位置付けられるのかを明らかにする。
5.これらDX関連書籍での「方法論・手法」の中に「マーケティング5.0」がどのように位置付けられるのかを明らかにする。

画像
画像

これまでの記事

これまでの連載記事に関しては以下の記事から確認できます。

これまでの話:マーケティング5.0におけるDX

マーケティング5.0に関しての概要と、マーケティング5.0でのDXの位置付けに関しては過去の記事を参照してください。


これまでの話:比較のための枠組み

分析をしていくにあたり、マーケティング5.0の領域とDXの領域をつなぐ独自枠組みを定義しました。詳細は過去の記事を参照してください。

議論の地図

議論の流れで迷子になると思いますので(私もなっています)、どのような流れで議論を進めていこうとしているのかをここに整理しておきます。

マーケティング5.0の領域とDXの領域をつなげるあたり、共通の枠組みが必要だと考えました(過去の記事)。以下の図は、この枠組みにおいて、それぞれの領域でのDXの定義が、この枠組みの要素とどのように関係するのかを示したものです。DXの領域では『DX実行戦略』の定義をここでは使っています。

DXの領域では、定義上は、顧客と関係するようなものとはなっていませんが、実際は、顧客と無関係ではないと考えられます。というのも、ビジネスモデルが有効かどうかは顧客によって決まると考えられるためです。しかし、どのような顧客に対してなのか、という点で、DXの領域がどのように顧客を捉えているのかは分析しておく必要があると考えました。

したがって、デジタル対応顧客(デジタル化した顧客)とその顧客のニーズの定義がまずは必要と考えました。とっかかりとしては、『マーケティング5.0』での顧客の捉え方をベースにしています。

やろうとしていることは、以下となります。
1.デジタル化した顧客(デジタル対応顧客)とはどのような顧客なのかを定義する
2.その顧客のニーズとなるものを定義する
3.『DX実行戦略』といったDX書籍において、デジタル化した顧客がどのように扱われているのかを分析する

この分析結果は、最終的には『マーケティング5.0』と『DX実行戦略』の統合を検討する際に使われます。両領域での顧客の捉え方の違いが、整合性や一貫性を考え上で影響する可能性があるためです。

『マーケティング5.0』での記述をもとに、デジタル化した顧客かどうかを区別するための3つの基準を定義しました。

3つの基準とは以下です。
・どのような行動をするかどうかの基準
・どのような評価をするかどうかの基準
・行動するかどうかをどのように判断するのかの基準

ただしこれら3つの基準で十分なのかはわかりません。結局の所、デジタル化した顧客とは何であるかの定義が不明確なためです。

そこで、まずは、デジタル化した顧客とは何であるかを議論するための基盤となる枠組みを考えました。基本的には、3つの基準を含むような枠組みとして考えました。

この枠組みだけでは、デジタル化した顧客の定義をしたことにはなりませんが、この枠組みの要素を用いることで、デジタル化した顧客の定義を議論しやすくなると考えられます。

今回の話

これまでの記事を通じて、以下の図に示すような、デジタル対応顧客(デジタル化した顧客)を表現するための行動体験モデルを議論してきました。

画像

図の左下の「デジタル行動」や「デジタル体験」がある顧客は、「デジタル対応顧客」と呼ぶとして考えてみよう、という議論になります。

これまでの記事では『マーケティング5.0』での議論を参考に、デジタル顧客かどうかを判別するための基準を例として使い、上記のモデルの表現力を確認してきました。以下は、特に行動と体験に関わるとして考えている基準です。

1.顧客がデジタルに精通しているかどうか。
2.顧客がデジタルプラットフォームで取引しているかどうか。
3.顧客が製品・サービスを消費または使用するときデジタル・インタフェースで接しているかどうか。
4.顧客が行うカスタマー・ジャーニーが、全部または一部がオンラインで行われているかどうか。
5.顧客が、デジタル・テクノロジーによって置き換えられ強化されたタッチポイントを体験しているかどうか。

そして、これらを「デジタル行動」と「デジタル体験」という上記のモデル要素で表現できるかを確かめてきました。しかし、4つ目と5つ目の項目は、他と少し抽象度が違うように思えます。

今回は、前回から引き続き、5つ目の項目を考えます。
・顧客が、デジタル・テクノロジーによって置き換えられ強化されたタッチポイントを体験しているかどうか。

この表現は、実際は、『マーケティング5.0』では次のように表現されています。
「顧客がイライラする物理的タッチポイントは、デジタル・テクノロジーによって置き換えられ、強化できる」

今回の記事では、「置き換えられ、強化できる」といったことをどのように表現できるのかを見ていきます。

タッチポイントとチャネル

前々回は、『マーケティング5.0』と『マーケティング4.0』でのタッチポイントの定義をもとに、タッチポイントの概念を、行動体験モデルで表現できるかどうかを確認しました。

タッチポイントのモデル

タッチポイントとは、インタラクションであり、行動であるとされていました。具体的な行動の例としては以下が述べられていました。
・製品について知る
・製品を買う
・その製品を使う
・その製品を修理する

さらに具体的に例をあげると、自動車の購入でのタッチポイントとなる行動には以下が述べられていました。
・広告でその自動車について知る
・広告のCTA(行動喚起)をフォローアップする
・別のブランド/モデルについて情報を得ようとする
・試乗の予定を組む
・試乗する
自動車を先行予約する
・代金を支払う
・自動車を使う
・自動車を修理する
・その自動車を推奨する

ここで注意が必要なのは、「試乗の予定を組む」や「自動車を先行予約する」「代金を支払う」といった、特定のブランド(自動車)の理解や印象にあまり影響しないような行動も含まれていることです。これらの行動は、企業レベルへの印象を決めるような行動といっても良いかもしれません。

タッチポイントは、チャネルを使って行われるとして表現されます。チャネルとは『マーケティング4.0』によれば「ブランドが顧客とインタラクションをするために使うオンラインまたはオフラインの媒体手段」でした。

ここで、媒体手段という表現がわかりにくいと思われます。チャネルは「~で」「~を使って」「~により」というものに対応するものと言えそうでした。以下の例では太字がチャネルに対応します。

・顧客は、バナー広告により、その自動車について知る
・顧客は、コンテンツサイトを使って、別のブランド/モデルについて情報を得ようとする
・顧客は、修理工場で車を修理する
・顧客は、ソーシャルメディアでその車を推奨する

自動車の購入の例での他のチャネルには以下が述べられていました。
<チャネル:コミュニケーション>
・印刷広告
・印刷広告のQRコード 

<チャネル:販売>
・コンタクトセンター
・ショールームのセールスパーソン
・ショールーム
・販売員

ここで、人自体もチャネルとして扱われていることに注意が必要です。

前回の記事では、「顧客」と「チャネル」からなる組み合わせのパターンを、オンライン・オフラインの観点からモデル化するとともに、デジタルなタッチポイントを行動体験モデルの要素で表現できるかどうかを確認しました。

画像

「顧客」と「チャネル」の各組み合わせのパターンに関して、次のように考えました。
・オンラインの顧客:たとえば、ウェブサイトやアプリ、その他のデジタル端末を通じての行動。
 1.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
  ・例:人によるチャット接客
 2.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
  ・例:チャットボットによる接客
 3.オフラインチャネルの人間
  ・存在しない
 4.オフラインチャネルのAI
  ・存在しない

・オフラインの顧客:たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
 5.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
  
・例:人による遠隔接客
 6.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
  ・
例:AIによる遠隔接客
 7.オフラインチャネルの人間(物理的インタラクション)
  
・例:人による物理的な接客
 8.オフラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
  
・例:ロボットによる物理的な接客

ここで考えているモデルをもとにすると、可能な組み合わせは3と4を除く、6つだけでした。

これら6つの組み合わせのなかで、タッチポイントとしての行動が行われます。上記では、「接客」という行動を例にしています。ただし「接客」という行動がどのような範囲や内容を意味するのかは、業種や企業によって異なると考えられます。

ここまでを踏まえて、今回の記事のテーマである以下を見ていきます。
・顧客がイライラする物理的タッチポイントは、デジタル・テクノロジーによって置き換えられ、強化できる

組み合わせとしては6つだけのため、「タッチポイントを置き換える」または、「タッチポイントを強化する」といった操作を適用したタッチポイントも、これらの6つのうちのパターンのどれかに結果としてなると表現できると考えられそうです。

つまり、あるパターンから別のパターンへの遷移のパターンがあるという表現ができそうです。

なお、ここでは、置き換えと強化を別の概念として扱っていますが、
・置き換えた結果として強化される
・置き換えた結果として弱化される
というのが本来の意味かもしれません。

では、順に、あるパターン(From)から別のパターン(To)への遷移が操作により可能なのかを、「接客」というタッチポイントを例にして見ていきます。

【From】============================
・オンラインの顧客:
たとえば、ウェブサイトやアプリ、その他のデジタル端末を通じての行動。
1.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
  
・例:人によるチャット接客

【To】
・オンラインの顧客:
たとえば、ウェブサイトやアプリ、その他のデジタル端末を通じての行動。
2.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
  ・例:チャットボットによる接客

・置き換え:概念としては可能だと思われます。ただし、接客の例の場合は、AIだけでは不安要素がある場合は、人のチャットに戻せるような仕組みを作っておくことや、ボットには、簡単な質問のみに答えるようにしておくことが考えられます。
・強化:顧客からの視点でいうと、必ずしも強化になるとは限りません。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・5.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
 
・例:人による遠隔接客

・置き換え:できません。顧客自体をオンラインからオフラインには変更できないためです。
・強化:できないため、ありません。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・6.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 ・
例:AIによる遠隔接客

・置き換え:できません。顧客自体をオンラインからオフラインには変更できないためです。
・強化:できないため、ありません。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・7.オフラインチャネルの人間(物理的インタラクション)
 
・例:人間による物理的な接客

・置き換え:できません。顧客自体をオンラインからオフラインには変更できないためです。
・強化:できないため、ありません。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・8.オフラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 
・例:ロボットによる物理的な接客

・置き換え:できません。顧客自体をオンラインからオフラインには変更できないためです。
・強化:できないため、ありません。

まとめは以下となります。

以降、議論を簡潔にするため、顧客をオフラインからオンライン、顧客をオンラインからオフラインに変更する操作はできないとします。

【From】============================
・オンラインの顧客:たとえば、ウェブサイトやアプリ、その他のデジタル端末を通じての行動。
2.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
  ・例:チャットボット

【To】
・オンラインの顧客:
たとえば、ウェブサイトやアプリ、その他のデジタル端末を通じての行動。
1.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
  
・例:チャット接客

・置き換え:概念としては可能だと思われます。1to2の逆の操作になります。
・強化:1to2の逆の効果になります。

まとめは以下となります。

【From】============================
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・5.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
 
・例:人による遠隔接客

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・6.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 ・
例:AIによる遠隔接客

・置き換え:概念としては可能だと思われます。ただし、接客の例の場合は、AIだけでは不安要素がある場合は、人のチャットに戻せるような仕組みを作っておくことや、AIには、簡単な質問のみに答えるようにしておくことが考えられます。
・強化:顧客からの視点でいうと、必ずしも強化になるとは限りません。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・7.オフラインチャネルの人間(物理的インタラクション)
 
・例:人間による物理的な接客

・置き換え:可能です。
・強化:顧客からの視点でいうと、必ずしも強化になるとは限りません。前回の記事の事例で見たように、人がいないほうが顧客にとって嬉しい場合があります。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・8.オフラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 
・例:ロボットによる物理的な接客

・置き換え:可能です。オフラインチャネルのAIとの違いは、ここでは単に、ロボットの形をしているかどうかで区別しています。
・強化:顧客からの視点でいうと、もしかすると、ロボットの形の精度によっては人間のような印象を与えすぎてしまうため、顧客にとっては必ずしも望まない場合があります。

まとめは以下となります。すべてのパターンで置き換えが可能となりました。ただし、ここでは接客されるという顧客の行動をもとに考えましたが、その他の顧客の行動によっては、成り立たない場合もあるかもしれません。

【From】============================
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・6.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 ・
例:AIによる遠隔接客

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・5.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
 
・例:人による遠隔接客

・置き換え:可能です。5to6の逆となります。
・強化:5to6の逆の効果となります。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・7.オフラインチャネルの人間(物理的インタラクション)
 
・例:人間による物理的な接客

・置き換え:可能です。
・強化:顧客からの視点でいうと、必ずしも強化になるとは限りません。前回の記事の事例で見たように、人がいないほうが顧客にとって嬉しい場合があります。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・8.オフラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 
・例:ロボットによる物理的な接客

・置き換え:可能です。オフラインチャネルのAIとの違いは、ここでは単に、ロボットの形をしているかどうかで区別しています。
・強化:顧客からの視点でいうと、もしかすると、ロボットの形の精度によっては人間のような印象を与えすぎてしまうため、顧客にとっては必ずしも望まない場合があります。

まとめは以下となります。すべてのパターンで置き換えが可能となりました。ただし、ここでは接客されるという顧客の行動をもとに考えましたが、その他の顧客の行動によっては、成り立たない場合もあるかもしれません。

【From】============================
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・7.オフラインチャネルの人間(物理的インタラクション)
 
・例:人間による物理的な接客

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・5.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
 
・例:人による遠隔接客

・置き換え:可能です。ただし、物理的に無理な場合もあります。たとえば、飲食店における配膳のタッチポイントがそのようなケースとして考えられます。
・強化:顧客からの視点でいうと、前回の記事の事例で見たように、人がいないほうが顧客にとって嬉しい場合があります。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・6.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 ・
例:AIによる遠隔接客

・置き換え:可能です。ただし、物理的に無理な場合もあります。たとえば、飲食店における配膳のタッチポイントがそのようなケースとして考えられます。
・強化:顧客からの視点でいうと、前回の記事の事例で見たように、人がいないほうが顧客にとって嬉しい場合があります。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・8.オフラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 
・例:ロボットによる物理的な接客

・置き換え:可能です。
・強化:顧客からの視点でいうと、必ずしも顧客にとって良いとは限りません。たとえば、配膳では、人間が対応することが望ましいケースとして、以下が考えられます[1]。
 ・体の不自由な顧客
 ・従業員とのコミュニケーションを楽しみたい顧客。たとえば、モーニングサービスを提供しているブランド。

【From】============================
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・8.オフラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 
・例:ロボットによる物理的な接客

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・5.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
 
・例:人による遠隔接客

・置き換え:可能です。ただし、物理的に無理な場合もあります。たとえば、飲食店における配膳のタッチポイントがそのようなケースとして考えられます。
・強化:顧客からの視点でいうと、前回の記事の事例で見たように、人がいないほうが顧客にとって嬉しい場合があります。もしかすると、ロボットの形の精度によっては人間のような印象を与えすぎてしまうため、顧客にとっては、人の姿を気にしなくすむ遠隔接客のほうが好まれるかもしれません。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・6.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 ・
例:AIによる遠隔接客

・置き換え:可能です。オフラインチャネルのAIとの違いは、ここでは単に、ロボットの形をしているかどうかで区別しています。
・強化:顧客からの視点でいうと、もしかすると、ロボットの形の精度によっては人間のような印象を与えすぎてしまうため、AIによる遠隔接客のほうが好まれるかもしれません。

【To】
・オフラインの顧客:
たとえば、物理空間、部屋、店舗内、店舗周辺などにいる状況での行動。
・7.オフラインチャネルの人間(物理的インタラクション)
 
・例:人間による物理的な接客

・置き換え:可能です。
・強化:顧客からの視点でいうと、ロボットよりも人間ほうが好まれる可能性があります。

まとめは以下となります。すべてのパターンで置き換えが可能となりました。ただし、ここでは「接客される」という顧客の行動をもとに考えましたが、その他の顧客の行動によっては、成り立たない場合もあるかもしれません。他の行動でも可能なのかどうかは、次回の記事で検討します。

まとめと考察

考察としては以下となります。
1.顧客の状態(オンライン・オフライン)が変化するような遷移のパターンは存在しない。
2.オンライン顧客の状態における、チャネルの遷移は「人間からAI」、「AIから人間」と両方とも可能である。
3.オフライン顧客の状態における、チャネルの遷移は各パターンから他のパターンに可能である。
4.ただし、顧客の行動(タッチポイント)によっては、遷移が不可能なこともありえる。
5.遷移によってタッチポイントが強化されるかどうかは、顧客視点からみると、ケースバイケースになる。

オンライン顧客での遷移のパターン
オフライン顧客での遷移のパターン

以上の考察をもとに何が言えるかを考えます。
タッチポイントの洗い出しと遷移可能性の分析:タッチポイントごとに可能な遷移が決まるため、タッチポイントごとに、オンラインの場合は、1つ、オフラインの場合は、3つの遷移パターンのうち、可能な遷移を検討することが望ましい。

デジタル化した顧客かどうかの判別の基準

もともとの議論に戻ります。本記事を含むこれまでの3回では、以下の基準を明確にするための議論を行ってきました。
・顧客が、デジタル・テクノロジーによって置き換えられ強化されたタッチポイントを体験しているかどうか。

この基準は、もともとは以下のように『マーケティング5.0』では表現されていました。
・顧客がイライラする物理的タッチポイントは、デジタル・テクノロジーによって置き換えられ、強化できる

そのために、前々回の記事から今回の記事を通じて、以下を確認しました。
1.タッチポイントのモデルの定義。顧客体験モデルの要素でタッチポイントを表現できるかどうか。
2.オンラインオフライン軸、人間・AI軸での、タッチポイントのパターンのモデルの定義。顧客体験モデルの要素でデジタルタッチポイントを表現できるかどうか。
3.タッチポイントのパターンの遷移パターンのモデルの定義。

物理的タッチポイントとは、オフラインの顧客が、オフラインチャネルの人間とインタラクションするパターン(パターン7)だと解釈しました。

物理的タッチポイント(パターン7)は、今回のモデルに基づけば、以下の3つのパターンへ遷移できます。
5.オンラインチャネルの人間(デジタルインタラクション)
 
・例:人による遠隔接客
6.オンラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 ・
例:AIによる遠隔接客
8.オフラインチャネルのAI(デジタルインタラクション)
 
・例:ロボットによる物理的な接客

したがって、顧客が、「デジタル・テクノロジーによって置き換えられ、強化でき、そのタッチポイントを体験しているかどうか」の基準は、次の視点で定義できると考えられます。
1.物理的タッチポイントの一覧の特定
2.各物理的タッチポイントにおいて、可能な遷移のパターンの特定(タッチポイントによっては遷移できないことも考えられる)
3.各可能な遷移のパターンでのタッチポイントが強化にあたるかどうかの分析
4.顧客が、その可能な遷移のパターンでのタッチポイントを体験しているかどうかを計測し、顧客の全体のどれくらいの割合が体験しているのかでデジタル顧客とみなす、といった基準の設定

まとめ

顧客がどのような手段による行動によってブランドと接点を持つ(タッチポイント)のかは、その顧客がデジタル化された顧客なのかどうかを判断するための基準の一つとなりえます。デジタルによる手段でブランドと接する顧客は、デジタル化された顧客と判断できそうです。

今回は、顧客とチャネルの組み合わせからなるタッチポイントのパターンをもとに、あるパターンから別のパターンへの遷移のパターンのモデルを定義しました。

物理的タッチポイントを遷移元とする遷移のパターンには3つが考えられます。3つの中のどれかに、物理的タッチポイントを強化するような遷移のパターンがあるかもしれません。

そして、強化されたタッチポイントを、顧客がどれだけ体験しているかでその顧客がデジタル化した顧客かどうかを判別するための基準が設定できそうなことを議論しました。

今回は、「接客」というタッチポイントをもとに、遷移のパターンのモデルを構築しました。次回は、その他タッチポイントを考えることで、モデルの表現力を確認します。たとえば「顧客は、コンテンツサイトを使って、別のブランド/モデルについて情報を得ようとする」というタッチポイントは、今回のモデルで表現できるでしょうか? 続きはこちら

参考

[1] 店舗DX 2023, pp.46-47

株式会社分析屋について

ホームページはこちら。

noteでの会社紹介記事はこちら。

【データ分析で日本を豊かに】
分析屋はシステム分野・ライフサイエンス分野・マーケティング分野の知見を生かし、多種多様な分野の企業様のデータ分析のご支援をさせていただいております。 「あなたの問題解決をする」をモットーに、お客様の抱える課題にあわせた解析・分析手法を用いて、問題解決へのお手伝いをいたします!
【マーケティング】
マーケティング戦略上の目的に向けて、各種のデータ統合及び加工ならびにPDCAサイクル運用全般を支援や高度なデータ分析技術により複雑な課題解決に向けての分析サービスを提供いたします。
【システム】
アプリケーション開発やデータベース構築、WEBサイト構築、運用保守業務などお客様の問題やご要望に沿ってご支援いたします。
【ライフサイエンス】
機械学習や各種アルゴリズムなどの解析アルゴリズム開発サービスを提供いたします。過去には医療系のバイタルデータを扱った解析が主でしたが、今後はそれらで培った経験・技術を工業など他の分野の企業様の問題解決にも役立てていく方針です。
【SES】
SESサービスも行っております。