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DXとマーケティングその41:マーケティング5.0でのDXと他のDX方法論との関係の分析

分析屋の下滝です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とマーケティングとの関係を考えてくシリーズの41回目です。

ここ数回は、最近発売された『コトラーのマーケティング5.0』でのDXとマーケティング5.0が、他のDX書籍での方法論とどのように関係するのかの分析に焦点をあてて、議論を行なっています。

前回は、『コトラーのマーケティング5.0』でのDX(文中ではデジタル変革)に対応する「自社のデジタル能力を構築すること」が具体的に何をすることを意味するのかを見ていき、出現した要素と関係を整理しました。

今後の連載の議論の流れとしては以下を考えています。
1.マーケティング5.0におけるDXを確認する(前回の内容)
2.これまでの連載で扱っていたDX関連書籍である『DX実行戦略』『デザインド・フォー・デジタル』『DXナビゲーター』との関係を分析していくにあたり、準備を行う。
3.各DX関連書籍での「DXの定義」と比較を行い、共通点や異なる点を明らかにする
4.これらDX関連書籍での「方法論・手法」の中に「マーケティング5.0でのDX」がどのように位置付けられるのかを明らかにする。
5.これらDX関連書籍での「方法論・手法」の中に「マーケティング5.0」がどのように位置付けられるのかを明らかにする。

最終的なアウトプットは、各方法論をベースに、マーケティング5.0の要素を組み込んだ新たな方法論となります。

これまでの記事

これまでの連載記事に関しては以下の記事から確認できます。

おさらい:マーケティング5.0におけるDX

前回のおさらいです。『マーケティング5.0』の目次は以下の図のようになっています。

・第1部:序論
・第2部:課題
・第3部:戦略
・第4部:戦術
という流れです。

第1部では、マーケティング5.0の背景や概要が述べられています。

第2部では、デジタル世界でマーケティング5.0を実行するときにマーケターが直面する課題が議論されています。課題は、世代間ギャップ、富の二極化、デジタル・デバイドの3つです。

第3部では、戦略に関わる内容であり、マーケターが技術の戦術的利用(戦術に関しては第4部に対応)を検討する前に適切な基盤を得るのに役立つとされることが議論されています。以下の三つの章で構成されます。
・デジタル化への準備度が高い組織:企業が高度なデジタルツールを利用するための自社の準備度を評価する助けになる。
・ネクスト・テクノロジー:ネクスト・テクノロジーに関する初歩的な内容を含んでおり、マーケターがネクスト・テクノロジーを理解する助けになる。
・新しい顧客体験:新しい顧客体験の創出で実績のある様々な事例について検討がされる。

なお「デジタル変革」という言葉は、1つ目の「デジタル化への準備度が高い組織」の第5章で使われています。この章では、デジタル変革という言葉は、「デジタル化」や「組織」と関係のある文脈で使われます。なお、デジタル化や組織といった概念は、他のDX書籍でも主要な対象として議論されますので、おかしなことでは無さそうです。

第4部は、戦術に対応する部分となります。マーケティング5.0の構成要素5つがそれぞれ議論されています。

これまでの記事では、マーケティング5.0と関係する要素を含めて、次の図のように整理を行いました。

次に「デジタル変革」に関わるのは第5章ですので、以下の図に第5章の概要を示します。

この章では、以下の図のように、「顧客のデジタル化への準備度」と、「企業(自社)のデジタル化への準備度」を二つの軸として、4象限の状態をもとに議論がされています。企業は、この2軸での自社の準備度の評価を行い、自社がどの象限にいるのかを把握します。

自社がどの象限にいるのかをもとに、取るべき戦略が決まります。マーケティング5.0では、3つの戦略が議論されています。
1.デジタル能力を構築する戦略
2.顧客をデジタル・チャネルに移行させる戦略
3.デジタル・リーダーシップを強化する戦略

デジタル変革に関係するのは、1つ目のデジタル能力を構築する戦略です。

デジタル能力を構築する戦略は「オリジン」象限または「オーガニック」象限にいる企業がとる戦略とされます。図では、「デジタル能力を構築する」は「オリジン(左下)」から「オンワード(左上)」からの矢印だけですが、「オーガニック(右下)」から「オムニ(右上)」への意味も含みます。

上記の図は、「顧客のデジタル化への準備度」と「企業(自社)のデジタル化への準備度」の二つの軸で構成されていると述べました。「企業のデジタル化への準備度」が低いか高いかを評価する基準の大枠は以下です。
・デジタルな顧客体験を開発できているかどうか
・デジタル・インフラに投資できているかどうか
・デジタルな組織を確立できているかどうか
また、同時に、これらの基準を満たすように戦略が実行されたとすると次の図に示すような準備が整っているとこれまでの記事で整理しました。

今回の話:DXの方法論

ここでは、これまでの連載で見てきた以下の三つのDX書籍における方法論とマーケティング5.0でのDXとの関係を分析するための準備を行います。
・『DX実行戦略』
・『デザインド・フォー・デジタル』
・『DXナビゲーター』

関係を分析する理由は、DXが全社的な取り組みであるとした場合、最終的には、企業としては同時期に一つの実行のみが行えるためです。たとえば、『DX実行戦略』での方法論を行い、かつ、マーケティング5.0を行うとした場合、両者の整合性は保てるでしょうか?

したがって、マーケティング5.0でのプロセスと、各書のDXの方法論のプロセスがどのように関係するのかを把握しなければなりません。そして、恐らく、整合性のあるプロセスを作るための調整が必要となります。

以下の図に、マーケティング5.0の目次に従い、コンセプトやキーワードとなりそうなものを配置しました。

これまでの記事で議論したように、マーケティング5.0でのDXは、選択できる戦略の3つのうちの1つである「デジタル能力を構築する戦略」に対応します。

関係の分析を行うにあたり、二つの視点があると考えました。
・「マーケティング5.0でのDX」と「他のDXの方法論」とが互換性があるかどうか。
・戦術としての「マーケティング5.0」が、他のDXでの方法論とどのように関係するのか。

まずは、1つ目の視点から議論します。「デジタル能力を構築する戦略」が、他のDX戦略の方法論と互換性があるかどうかです。

互換性に関する結論としては、大きく、4つの可能性が考えられます。


ケース1:全く互換性がない。マーケティング5.0でのDXとDX書籍でのDXは、同じ言葉を使っていても、具体的に何を行うのかについては共通する部分がないケースと言えます。
ケース2:マーケティング側にDX側が含まれる。マーケティング5.0でのDXがDXの方法論を含むケースです。実際は、無いと言えます。マーケティング5.0でのDXは、4ページしか議論されていないためです。
ケース3:DX側にマーケティング側が含まれる。DXの方法論内に、マーケティング5.0でのDXを含むケースです。このケースの可能性はあります。
ケース4:DX側とマーケティング側で部分的に重なる。DXの方法論とマーケティング5.0でのDXが部分的に重なるケースです。このケースの可能性はあります。

上記のどのケースに該当するのかを知るためには、マーケティング5.0でのDXの要素と、DX側の方法論の要素を特定し、より詳細なレベルでの分析を行う必要があります。マーケティング5.0でのDXの要素は、前回の記事で整理を行いました。

次のステップとしては、DX側の方法論の要素を特定する必要があります。

前述の図に、非常に大雑把ですが、各書の枠組み・コンセプトとなる要素を仮に配置しました。これでもまだ要素の粒度は大きいため、より詳細な要素に分解して見ていく必要があります。

1つ目の視点はここまでです。

2つ目の視点です。戦術としての「マーケティング5.0」が、他のDXでの方法論とどのように関係するのかということです。「マーケティング5.0」の方が、他のDX書籍よりも後に提唱されたため、他のDXでの方法論の中に、マーケティング5.0がどのように組み込めるのかどうかを分析する視点です。

まとめ

今回は、マーケティング5.0でのDXと戦術としてのマーケティング5.0が、DXの方法論とどのように関係するのかを分析していくために、分析の視点を議論しました。

DXが全社的な取り組みであるとした場合、その実行のプロセスには、整合性や一貫性が求められます。各DXの方法論において、マーケティング5.0がどのように関係するのかを分析することで、それら方法論にマーケティング5.0の考えを組み込めるかどうかを評価でき、その評価に基づき、適切な方法論を作りだせる可能性があります。

次回は、DXの方法論の一つとして『DX実行戦略』をとりあげ、マーケティング5.0との関係を分析していきます。続きはこちら

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