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無駄な仕事が減らない理由

本社からメールで送られてくる製造指示。
図面や発注書など、5枚ほどの書類が添付されている。

それをすべて印刷。
そして、エクセルで作った専用フォームに入力していく。

入力が終わったらそれを印刷。
本社から届いた書類と合わせて6枚だ。

今度は7つある部署に配るため、各7枚づつコピーする。

配布する前に、たしかに配りましたという証拠を残さないといけない。
そう、割印だ。

7枚ある書類を5ミリずつずらし、原本を重ねて割印を押していく。

ポンポンポンっと。

420枚ある書類全てに割印を押す。
これを怠ると「初をもらっていない!」と言い出す人がいるから、舌苔に手は抜けない。

割印を押したら、次は部署ごとに書類をまとめていく。
そして、左端に部署名を書き、ホチキスで止めたら配る。

ここまでが、私の毎日の仕事だ。

ある日。
私はちょっとした病気で入院することになった。

休みの間、別の人に仕事を変わってもらう。

私と同じ部署の後輩……。
いや、上司かもじれない人に仕事を引き継いだ。

そして2週間後。

退院して職場に復帰した翌日。
私は部長に呼び出された。

何でも、私の代わりに仕事してくれた人が、無駄が多すぎルと言い出したらしい。

私は必死に説明した。
割印の重要性、紙で配る大切さを。

私の仕事がいかに役に立っているのかを。


そして……私は別の部署に異動になった。

何でもメールを使うことで、印刷も配布も要らなくなったとか。
作業時間も128分の1になったらしい。

つまり、私の仕事になんの意味もなかったのだ。

大量にコピーして、大量にハンコを押す。
そんな仕事は時代遅れだという。

けど、私は信じている。

大量にコピーする仕事も、大量にハンコを押す仕事も、会社が利益を出すために絶対に必要だと。

今までそれでやっきたのだから、これからもそうあるべきだと。
やり方を変える必要なんて、1ミリもないと。

それがわからない経営者は、無能なんだと。

私は信じている。

〈了〉

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