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月刊文芸誌『文活』 | 生活には物語がみちている。

noteの小説家たちで、毎月小説を持ち寄ってつくる文芸誌です。生活のなかの一幕を小説にして、おとどけします。▼価格は390円。コーヒー1杯ぶんの値段でおたのしみいただけます。▼詳… もっと読む
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記事一覧

大宮スーパーマーケット

この作品は、生活に寄り添った物語をとどける文芸誌『文活』2022年1月号に寄稿されています。定期購読マガジンをご購読いただくと、この作品を含め、文活のすべての小説を全文お読みいただけます。 もう少しだけゆっくりと過ぎてほしいと思うほど、時間は速度を上げ、熱を持ち、汗をかき、快活に笑い、満足気に泣き、立派に怒り、見えなくなっていく。時間が見えなくなる寸前で、その背中に向かっておい、と叫ぶと、時間は片手を上げて、結局振り返りもせずに見えなくなる。 ハルオの背中に降ってきた雪が

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シェアハウス・comma 「白洲 彩絢 編」

この作品は、生活に寄り添った物語をとどける文芸誌『文活』1月号の無料公開作品です。定期運営マガジンをご購読いただくと、ほかの小説をすべてお読みいただけます。  人生が、終わった。  5桁の番号が大量に並ぶ掲示板を見て、何度も見て、穴が開くほど見て、焦点が合わなくなるほど見て、それでもあたしの見たいものだけがそこになかった。“膝から崩れ落ちる”という表現はこういう時の為にある言葉なんだ。そう冷静に思いながら直立している自分を今すぐ誰かに褒めて欲しかったけれど、その誰かが全く

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【文活2022年1月号】今月から新体制でおとどけ|リレー小説「シェアハウスcomma」を開始|読み切りテーマ「雪の日のぬくもり」

あけましておめでとうございます!! 昨年末にnoteでおとどけしたとおり、2022年からノベルメディア「文活」は新体制に移行。企画もパワーアップしておとどけします!! なお、新体制への移行に際して、文活の仕組みを以下のように変更させていただきました。 1, 小説の購読をマガジン内限定に変更 2, 小説の投稿ペースを月に一度の一斉公開から、週に一度の定期投稿に変更 1,は、今まで無料で読めていた文活小説が有料になるため、大きな変更となります。こちらの変更理由につきましては

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夜と朝のあいだのサービスエリア

一月十日、午後六時。高速道路を走る暗い車内のなか、ちらほらとフロントガラスに白い粒が吹き付けてくるのが目に入った。雪だ。初雪は年末だったが、これからはどっと積もってもおかしくない日々が続く。大型トラックの運転だけに、慎重に慎重を重ねないといけない季節が来た。 俺の仕事は、食材輸送ドライバーだ。岩手にある乳業工場から、大阪の配送センターまで、冷却機付き配送車で牛乳や乳製品を運んでいる。 目的地に向かう運転席のオーディオからは、大きめの音でラジオ番組が聞こえてくる。長距離の運

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2022年の文活、作家も運営も企画も増強してパワーアップします!

文活では『人々の生活をよくするために、物語をつくる。』をテーマに今年も小説をおとどけしてきました。つくった小説は71本。とにかく走りきった1年でした。作品を読んでくださったみなさん、ありがとうございます。 そして、今日は重大発表。 2022年の文活は、作家も運営も企画も、すべてを増強した新体制で小説をおとどけしていきます! このnoteではそのパワーアップ内容を紹介していきます! ①作家陣に上田聡子さんが参加!文活に上田聡子さんが参加くださることになりました!上田さん

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【文活12月号ライナーノーツ】雪柳あうこ「つづきますように」

 祝、文活1周年。雪柳あうこです。こんにちは。  文活で執筆のお誘いをいただき、とにかく毎月書き続けてきて、気がつけば1年。あっという間でした。いつも読んで下さっている皆様、ありがとうございます。 それでは、ライナーノーツのお品書きをどうぞ。 ■連作、最終話でした 「手紙」というテーマと、「紫」と「藍」という二人の主要な登場人物を固定して始めた1年間の連作短編たちは、10作になりました。 そして、「紫と藍のあいだ」は、12月号の「つづきますように」をもって一区切りとなり

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【文活12月号ライナーノーツ】ささいな笹「none」

 出勤したら、卓上カレンダーの今日の日付のところに、「湯気がぽわりと立ったコーヒーカップの絵」を書く日がある。細字の黒の油性ペンで、いそいそと三秒で書く。カレンダーには、不揃いの手書きのコーヒーカップマークが数個。このマークは、早起きをしてハンドドリップをしたコーヒーを、水筒に入れて職場に持って来れたことを意味する。コーヒーは美味い。どんなおしゃれなカフェで飲むそれよりも、仕事の合間に飲むこれが一番美味いとすら思う。  だけど、冬が深まるとおふとんの引力は強くなるので、来年の

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【文芸誌・文活12月号】「つづく」をテーマに5編の小説をおとどけします。

今月のテーマ : 「つづく」ノベルメディア文活は、今日で1周年を迎えました! 1年間、毎月小説をつくり続けてこられたのは読者のみなさんのおかげです。これからももっとおもしろい文活をおとどけするべく、運営も作家も頑張っていきます。2年目もよろしくおねがいします! 今回のテーマは、そんな節目に合わせて「つづく」をテーマにしました!1年目の文活を第一章とするなら、2022年からはじまる文活は第二章。これからもずっとつづいていく文活と、1年の区切りをイメージして、このテーマにしまし

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駅前猫と三時|左頬にほくろ

   0時は夜で、6時は朝。それなら、3時は夜と朝のどちらに属する時間なのだろうか。深夜にしてはすこし深すぎて、早朝にしてはすこし早すぎる。3時は夜ですか? 朝ですか? 誰かにそう訊ねてみても、きっと年齢や職種によって人々の答えは異なるはずだ。 「・・・という訳で、今回の撤去作業は11日に決定、となりました。イトウちゃん、すまんけど当日は3時に会社前集合で。あー、3時っていうのは11日になった数時間後の方ね? 15時じゃなくて午前の3時。AM、エーエムね?」  11月の月

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都会の男|みくりや佐代子

 「なんで?」とその人は鼻で笑った。公共施設とオフィスビルが雑多に混ざっているのを窓から見て、私が「この街好きですよ」と言ったから。 「とびヶ丘のどこがいいの?俺、この街大っ嫌い」  初対面だった。このへんで働いていると言った。何度かやりとりして優しそうな印象だったから、会ってみることにした。 「マッチングアプリよくするんですか?」 「うん、よくするよ」 「私したことないんです。今回が初めて」 「あー。きみ、北の方の出身って言ってたもんね。こっちだと普通だよ」 なるほ

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猫とドロケイ | なみきかずし

★11月11日 きょうのミッション★  ねこがいなくなったことをつたえる   六限目。どうとくの授業がもうすぐ終わるころ。  ハルカくんは、自分のノートのはじのところに、今日も「ミッション」を落書きをしました。  ハルカくんのノートのはしは「とくべつコーナー」。今日のミッションをじゅんばんに書いていく場所なのです。  ★11月10日 きょうのミッション★  おにいちゃんが読み終わったマンガをかすやくそくをする  ★11月9日 きょうのミッション★  きのうみたドラマ

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シュレーディンガーとポッキーの消失による哲学的省察|雪柳 あうこ

 11月11日、11時11分。   あたしのシュレーディンガーがいなくなっているのを、観測した。   朝8時15分頃だと、中央改札の鳶色のロータリーには等間隔で同じ制服の女子達が並んでいる。皆、友達が来るのを待っているのだ。そこから数分、坂を上ったところにある中高一貫の私立の女子校。その数分を、わざわざ一緒に登校するために。   あたしは、皆が電線の雀みたいに見える、その時間帯が大嫌いだった。   だからあたしは、とびヶ丘駅に到着するのは早くても9時半以降の電車だと決め

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花の名前|西平麻依

——ねえ、こうやってドーナツをはんぶんこしたこと、忘れないでいてね。 理良が言うと、凌が続ける。 ——「人間は忘れる生き物だ」って、誰かが言ってたよ。 ——だったらなおさら、覚えていられるか試してみようよ。 漂う海の泡のような、儚い記憶が、十五年の長い眠りから覚めようと、頭の中をあっちへ行ったりこっちへ来たりしている。 リラの花が咲くのは、いまの季節じゃないな、と、ホテルの小さな裏庭を窓から見下ろしながら凌は思った。花のことなど、何も知らない。彼女と同じ名前の花だか

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まる|北木 鉄

月に向かってジャンプしたら、月も一緒にジャンプした。 びっくりしてえー!って声がでた。もう一度見上げたら、丸い月がなんでもない顔してこっちを見てた。 丸い月。 「死んだらね、丸くなるのよ」 昔ぼくがちいちゃかった頃、母さんが言ってたその言葉を思い出す。今日みたいに真っ暗な夜だったんじゃないだろうか。 丸い月は、なんだか震えてるみたいにも見える。

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