60モモちゃんと音

わが家の猫生活【その十八/嫌いなのは水と掃除機とドライヤー】

猫は音に敏感だ。ご多分に漏れず、わが家のモモちゃんもそうだった。そのくせ、野良猫が自分のごはんを勝手に食べていても気にしないのは何なのか(笑)。

モモちゃんが一番嫌いだった音は、掃除機とドライヤーの音だった。

いつだったか、宿敵・トラちゃんとの喧嘩で、水の張った田んぼに半分落っこちて帰ってきたことがあった。

「泥で毛がツンツンになってるよ。パンクのお兄ちゃんみたい!」
ちょっと笑っていられたのは一瞬で、「モモちゃん! お願いだから そのまま家に入らないで!!」と、母は喚きながら追いかけた。

嫌がるのをどうにか洗ってヘトヘトになったところで、ドライヤーをかけようとしたら瞬く間に逃亡。どうやっても捕まえきれず、部屋中水浸しになった。

「水も嫌いなのに、ドライヤーまでかけやがって」という恨めしい視線を猫様は向けてきた。

害虫駆除の消毒でもやらかしてくれた。当時は、毎年夏前になると集落ごとに室内噴霧が行われていた。これが結構面倒で、消毒したら数時間家に入れない。ミサイルをぶっ放すような形をした器械で且つブッフォオオーーーーン!!と凄まじい音がするので、子どものころは怖かった。

また部屋中に消毒が噴射されるため、何から何まで戸棚に仕舞っておかなければならず、朝から準備が大変。この日もバタバタしていて、家族は完全にモモちゃんのことを忘れていた。

「モモちゃんどこ行った? 外に出てるのかな?」と気づいたのは、わが家の消毒の番が来た直後だった。

ブッフォオオーーーーン!!!

爆音を立てながら、消防団のおじちゃんたちがやって来た。あっという間に家中が真っ白になる。全部終わったら、家の戸を完全に閉め切らなければならない。

で、モモちゃんどこ行った? まさか家の中じゃないだろうね?(焦)

「ずっと音がしてたから、どっかに逃げてるよ。だっていつも物音に敏感じゃん」とのん気に姉が言ったそのとき、真っ白になった家の中から猫が一匹飛び出てきたのだ。

みんなが驚いた以上に、本人(猫)が驚いてそのまま庭の一段下の池へ、まさかのジャンプ! 池の中央には、父が大事に育てていたセッコクを植え付けた岩があった。モモちゃんは、それにめがけてジャンプしたのだ。

そして見事にあと一歩及ばず、池に落ちた。爪だけは岩にひっかけて、セッコクが無残に散った。

ウソでしょ!? 唖然としたけれども、すぐに救助に向かわねば。慌てて姉が階段を駆け下りた。

「猫ってやっぱり猫かきするんだ 」(姉)
姉ちゃん! 違う、違う、今思いを馳せるのはそこじゃないから!

どうにか救いだしたものの、びしょ濡れ、そして池臭い……。目に涙をためた憐れな猫が一匹。

風呂場も消毒を噴射したばかりで入れない。仕方ないので、庭のホースから出る水で洗った。ショックだったのか、モモちゃんはいつもと違っておとなしかった。

35モモセッコク

ごめんよ、家に居るのに気づかなくて。

「でもあんな爆音が近づいてきてたのに、家の中で寝てたの?」
そうモモちゃんに聞きかけたけれど止めた。どうやら本人(猫)、若干反省モードに入っているようだった。そのままタオルにくるんで、猫の体が乾くのを待ちながら撫で続けた。(つづく)

今までの【わが家の猫生活】

その一/わが家に初めて猫がやってきた
その二/三匹の子猫、棲みつく
その三/自由奔放な猫様との暮らし
その四/猫嫌いの私と人見知りのモモちゃん
その五/猫ストーカーと化した無職の私
その六/知ってびっくり、猫の習慣
その七/猫様の恋模様。発情期がきた
その八/宿敵・トラちゃん登場
その九/近所で噂に!? モモちゃん最強説
その十/俺の首輪、どこ行った?
その十一/記憶力と感情に驚く
その十二/モモちゃん、行方不明になる
その十三/平和な縄張りパトロール
その十四/カニ鍋で大騒動
その十五/謎解き!モモちゃんの行動範囲
その十六/捨て猫・ゴマちゃんのこと
その十七/やめてほしい恐怖のお土産

番外編その1/野良猫・クロちゃんのこと
番外編その2/野良猫・アカさんのこと


この記事が参加している募集

我が家のペット自慢

記事を読んでくださり、ありがとうございます。世の中のすき間で生きているので、励みになります! サポートは、ドラマ&映画の感想を書くために使わせていただきます。