わが家の猫生活【その八／宿敵・トラちゃん登場】

良い人（猫）生には良いライバルがいる。
……かどうかはわからないが（笑）、わが家のモモちゃんにはライバルがいた。

宿敵・トラちゃん（♂）。

初めて見た私の衝撃は凄まじかった。

無職のまま実家に戻って数日経ったある日のこと。窓越しに見える田んぼのあぜ道を、大きな何かがノソリと歩くのが見えた。

タヌキ！？
最初はそう思ったのだが、色は黄土色だし、顔がタヌキとは異なる。
猫！？
いやいやいや、猫にしてはデカすぎて異様だ。あんなにデカい猫、いないでしょ！
未確認物体！！

興奮し、
「ちょっとお母さん！ 裏庭から変な生きものが見えるんだけど！！」
と、台所にいた母を急いで呼んだ。

母は大笑いしながら、
「なーんよ、トラちゃんや（笑）」と返した。

「タヌキじゃないよね……？」
「おさむくんの家でごはんをもらってる野良猫のトラちゃん」
「えええーーーーっ！ あれ（アレ呼ばわり……）猫なの!?」
「体は大きいけど、鳴き声は、ほんえらしー（超かわいい）んよ」

その生きものは、それまで猫と無縁な生活をしていた私にとって、想定していた猫の大きさをはるかに上回る物体だった。しかもトラちゃんの顔は台形。体にも増して顔もデカいので、全体がパワーアップされたような印象に見える。

このトラちゃん、たまに行方不明になって、ひどいときはひと月も戻ってこなかった。もしかしてトラちゃんの名前って、“寅さん”から取ったんじゃないかってぐらい。

「トラちゃん、もうどこかで死んでるやろうね」と近所で噂になっても、ある日ヨレヨレになって戻ってくる。

「おさむくんの家のおばちゃん、“トラが帰って来た！ 好きなものいっぱいあげるからなあ！”って言って、好物のプリンとウインナーをいっぱい皿に入れたら、ワシャワシャ食べたんだって」と母から聞いたときには、飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。

あの体にあの顔で、好物がプリンとウインナーって（笑）。
萌えるわー、トラちゃん。持ってるわー、トラちゃん。（敬意です）

そんなトラちゃんは、モモちゃんにとって最大（サイズ的にも）の喧嘩相手となった。（つづく）