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わが家の猫生活【その十五/謎解き!モモちゃんの行動範囲】

モモちゃんは、成長してくると日中はほぼ外出するようになっていた。家族がモモちゃんと接する時間は以前と比べるとずいぶん短くなった。

それでも、庭先から「モモちゃーん!ごはんだよー!!」と呼べば、どこからともなくお尻をフリフリして帰ってくるし、母の軽トラックの音を聞けば「ばあちゃん!遊んでくれ!!」とでも言いたげな顔で、突如帰ってきて足元でスリスリする。

「声とか車の音とか覚えとるのか、モモちゃん。賢いのー」

猫を一度も飼ったことがなかったので、家族で「うちの猫、天才じゃないのか!?」ってぐらいの勢いでそう思っていた。完全なる親バカだ。

猫様の外出時間が長くなったため、「あっちの田んぼで見かけたよ」「こっちの畑で掘り掘りしてたで」と、近所のおばちゃんたちからモモちゃん目撃情報をいくつももらうようになった。ただ、呼べば帰ってくることが多かったため、そう遠くない場所で遊んでいるのだと考えていた。


あるとき、「モモちゃんを小学校のところで見た!」と、姉が興奮しながら仕事から帰って来た。
「小学校って、ここから1.5キロはあるやん。いやいやいや、あそこまでは行かんよ」と母。
実はその頃、私も1キロほど離れた場所でモモちゃんを見て母に報告していたのだが、母は「絶対に見間違いや。キジ柄の猫なんかなんぼでもおる」と言い張っていた。

「お尻をふってトーン、トントンと歩くのは、モモちゃんや! 絶対に見間違わん!!」
「いや、違う! モモちゃんはまだ子どもじゃ! そこまで遠くに行くわけない!!」

レベルの低い親子ゲンカ勃発である。

結局結論が出ないまま、数日が過ぎたある日のこと。同じ地区のカワノのおばちゃんが、消防団の寄り合いの文書を持ってやってきた。

母とおばちゃんが世間話をしていたそのとき、モモちゃんが外から帰って来た。すると猫を見たおばちゃんが、「ああ!この猫、あんたとこの猫? まあ!!!」と驚いた様子で言うではないか。

「ここひと月、毎日来てるわー、うちの庭に」

なんと……。

カワノさんの家は小学校の200~300メートルほど手前にある。モモちゃんは、わが家から1キロ以上離れたカワノさんの家まで毎日出かけていたのか!!! どうやら、おばちゃんの家の雌猫がお目当てだったらしい。

少々うろたえた母の様子を、私はこっそり眺めて「ほらみろ、やっぱり私が見たのはモモちゃんじゃないか」と優越感に浸っていた。見間違うわけがないんだから(笑)。

そんなわけで、モモちゃんの行動範囲が思っていたより広いことが分かった。

車の通るコンクリートの道をちゃんと避けて行っているだろうか、よその家で粗相をしていないだろうか、勝手に倉庫に入ったりしていないだろうか……。そんな家族の心配をよそに、尻尾をピーンと上げたモモちゃんはお尻をフリフリしながら、雌猫にフラれるまで毎日その家へ通ったのだった。(つづく)

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