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給食マニアの教師と生徒の死闘/ドラマ『おいしい給食』

ここ数ヵ月、すっかり虜になっているドラマがある。2019年にseason1が放送された『おいしい給食』である。私の住むまちでは、ようやく現在地上波で放送されているので、今さら感があったらごめんなさい。

舞台は1984年の常節中学校。
まず、今だったら絶対アウトなシチュエーションも、この時代なら許されたかもしれないと思わせるところがいい。

主人公は、母親の料理への不満から給食を楽しみとするようになった中学教師・甘利田幸男と、給食をこよなく愛する謎多き生徒・神野ゴウ。それぞれが日々の給食を密かに楽しんでいたが、互いが給食マニアであることに気づき、特に甘利田は神野をライバル視するように。どちらが、より給食を楽しむか。し烈な闘いを繰り広げる甘利田と神野。止まらぬ給食愛が、静かだけれど情熱的に描かれる。そしてライバルであった(まあ誰もそんなことに気づいていないのだが)2人の関係は、やがて認め合う同志へと変化していく。

給食以外は眼中にないように見える教師・甘利田。演じているのは市原隼人さんだ。一視聴者としての彼の印象は、ストイックで熱血人間。なんだか毎日サウナで汗をかいてそうじゃないか。だが役柄である甘利田が熱いのは、給食に関してだけ。いつも職員室で、献立を眺めてソワソワしている。いざ給食の時間になると一人の世界へ。メニューをひと通り熱く語り、一人で納得。一人で悦に入り、毎回完食する。全力で甘利田を演じる市原さんの食事シーンは、給食愛がバースト寸前なのがわかるほど熱を帯びており、一見の価値あり。甘利田という人間は給食以外に関心がほぼないのだが、実は冷静に生徒ひとりひとりを理解している。

一方の神野を演じるのは、佐藤大志くん。神野は妙に大人びていて、掴みどころのない少年だ。「僕の今日の給食の楽しみ方は、こうだ!」と自信満々の笑みで、毎回甘利田を挑発する。笑っているのに笑っていない神野の強く大きな瞳。この表情がめちゃめちゃ可笑しい。そして彼が仲良くなる給食のおばさんを演じるのは、いとうまい子さん。世話好きオーラ全開のおばさんを見事に体現している。

回を重ねるごとにヒートアップするライバル意識も、後半には変化。このドラマの素晴らしさは、2人の究極の給食愛を見て「誰にもわかってもらえなくていい。好きなものを思いきり愛でて楽しんで生きる」ことがどんなに幸福をもたらし、貴重であるかを再確認できるところだと思う。

私個人のおすすめは第4話と最終話(第10話)。第4話は「この題材がこうなるのか!」と、最後爆笑し通し。この回は給食のおばさんも大活躍である。最終話の中心は、ごはん給食。それまでの9話があるから“神回”と実感できる内容なので、とにかくseason1は全部観よう。最終話で甘利田が言い放つことばには痺れる。「は? このドラマ、グルメドラマよ。コメディよ。なのに、なぜ私はこんなに泣いているのだろうか 」と、自分ツッコミを入れたほど泣いた。

ところで、season1では常節中学校の校長先生役で酒向芳さんが登場する。酒向さんといえば、昨年の金曜ドラマ『最愛』でのホラー的な(失礼!)渡辺の父親役がインパクト大だった。こんな穏やかな役もやっておられたのか。地上波で放送中の金曜ドラマ『インビジブル』でも優しい上司役。ただ、いつ豹変するやもしれぬと、観ている私は戦々恐々としている。

『おいしい給食』は、2020年にseason1の完結編として『劇場版 おいしい給食 Final Battle』が公開され、2021年にはseason2も放送された。


そして、つい先日から新作の映画『劇場版 おいしい給食 卒業』が公開中だ。

映画の公開にあわせてなのか、現在season1がTVerで全話配信されている。ついこないだまでは、season2も配信されていた。GYAO!とアマプラではseason1と2020年の劇場版が視聴できる。

劇場版の最新作の予告を見たら、season1から神野を演じている佐藤くん自身、ますます背が伸びて成長していた。なんかもう純くん(『北の国から』)の成長を見てきた昭和生まれには、そういう点もたまらない……。

興味のある方はどうぞ!


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