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行った気になるまち② 雄大な山並みの裾野

ご無沙汰してしまったシリーズの第2弾。記事は最後まで無料で読めます。投げ銭してもいいかな~と思う方はよろしくお願いします。

では皆さん、行った気になってください!

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のどかな景色と広い空

ゴールデンウィークを過ぎたあたりから、らくだ色の山肌が徐々に緑に覆われてくる。今年は異様に早い梅雨入り。爽やかな初夏を実感できずにいたが、しばらく晴れの日が続き、こたつ布団を風呂場でじゃぶじゃぶ洗う。ところが浴槽から引き上げる際、あまりの重さに肋骨を痛めてしまった。この日は他にもいろいろあって「なんだかなあ」と鬱々。まずい。完全にマイナス思考になっている。

だめだめ、と翌日逃げるようにやってきたのは、のどかな田園地帯。田植えが終わり、水のはられた田んぼに空が映る。この景色を見るのは約2年ぶりだ。ちょっと見ぬ間に、あそこもここもと新しい家が建つ。それでも、この土地が醸し出す穏やかな雰囲気は変わらない。

数年前に見つけたイングリッシュガーデン

最初の目的地はここ。

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何度か訪れたことがあるガーデン。この時期に来るのは初めてだ。客は私ひとり。ゆっくり散策できていいけれど、整備費と手間はかなりかかっているように見受けられ、少々申し訳ない。料金箱に入場料をチャリリンと入れて散策開始だ。

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1500坪の敷地はブロックに分かれ、季節の花木やハーブなどが植えられている。これを脳裏にだけ納めるなんて高尚なことは到底できず、写真を撮らずにはいられない。美しく可憐な花々、生き生きとした植物たちが山の風に揺れる。今はアジサイやスカシユリ、シモツケなどがきれい。木立には、ブルーベリーや赤くなったジューンベリー(たぶん)の実も見られた。

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散策を続けていると、奥の方にピンクのバラを発見。シンプルな花の付き方、もしかしてツクシイバラ?

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ツクシイバラは県の絶滅危惧種に指定されている野イバラ。県南のあさぎり町や錦町の球磨川河川敷で、例年なら5月中旬~6月頃に開花が見られる。このガーデンで出合うとは思っていなかった。2週間ほど前であれば、満開だっただろう。

山の懐に広がる南郷谷

夏へと移りゆくイングリッシュガーデンを堪能し、さてさて、そろそろ次の目的地に行こう。その前に、ちょっと道の駅に寄ってみる。あいにくこの時間帯は曇り空だったので、以前夏に撮影した写真を載せておく。

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道の駅からは、杵島岳、烏帽子岳、中岳、高岳、根子岳の阿蘇五岳を一望。これを山並みの反対側から見ると、有名な涅槃像(ねはんぞう)になる。

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訪れた村の名は熊本県南阿蘇村(みなみあそむら)。

16年前、旧久木野村、長陽村、白水村が合併してできた村である。南阿蘇村とお隣の高森町が、「南阿蘇」と総称で呼ばれる地域になる。あ、南があれば北があるとお思いの皆さん、それはナンセンス。地理上で北になるのは阿蘇市だが、地元の人は「北阿蘇」とは呼ばない。阿蘇市は阿蘇なのだ。

南阿蘇村は、世界最大級の阿蘇カルデラの南麓(南郷谷)に位置する。有名なのは、白川水源をはじめとする湧水群。水源は人々の暮らしを潤すだけでなく、長らく南阿蘇観光の中心的役割も果たしてきた。11ある水源の中で、私が好きなのは素朴な竹崎水源かな。

昔「ニュースステーション」で中継されて知られるようになった「一心行の大桜」があるのもこの村。山麓の田園にぽつんと在るのがよかったのだが、観光客が激増して周辺を整備せざるを得なくなり、昔の素朴さはなくなった。それでも、樹齢四百余年の老木が懸命に花を咲かせる様には心を打たれる。天候次第では数日で散ってしまう年も。以前運よく満開に出くわしたときは、お見事としか言いようがなかった。

立ち寄りスポットはあちこちに

最近は、トレッキングやサイクリングが人気だ。ちなみに道の駅ではモンベルが営業中。阿蘇五岳と南外輪山に囲まれ、水の豊かな集落には青々とした田んぼに疎水が流れ、民家が点々と建つ。熊本市内からは車で約1時間の距離。そのせいかカフェやギャラリー、パン屋などが点在する。

変わったところでは薪ストーブの専門店もある。おそらく、この辺りの新築の家に煙突が多いのはこのお店があるからだと思う。みんな薪ストーブを取り付けているのだ。

村の景色や雰囲気に魅せられて、移住したり別荘を持ったりする人は昔からいた。でも感覚的に、ここ10年はそれに拍車がかかっている気がする。もちろん風土や気質が合うかは重要。それでも、絵本のような風景に憧れる気持ちは大きいのではないだろうか。

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観光拠点に便利な道の駅

情報を得ようとやって来た「道の駅あそ望の郷くぎの」。物産館やレストラン、公園、観光案内所などが備わる、観光拠点のひとつである。

物産館に入ると「これ、ほら、あかぎゅうのバーガー、買う? あかぎゅうよ、美味しそうじゃない? あかぎゅう」とお客さんの声がする。

「お母さん、それは“あかうし”です、あかぎゅうじゃなくて、“あかうし”です」と、心の中で訂正しておいた。あか牛人気は相変わらずみたい。

道の駅が位置する旧久木野エリアは、「そば道場」があることでも知られている。私も遠い学生時代、友人数人とそばを打ちに来た。その場でざるそばにして食べたものの、自分たちで切った麺が太かったり細かったりで、全員が「かけそばにすればよかった~」と後悔した思い出が……(笑)。周囲にはそば畑もあり、9月中旬頃には白い花を咲かせる。

カフェやレストランはさまざまあるのだが、懐かしくなって久々に「そば道場」の食事処で十割そばを食すことに。少しわさびをのせて、汁につけてひとくち。そばの風味を生かす甘めのやさしい汁だった。

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ギャラリーは不定休や週末のみの営業が多いので、こればっかりは自分から連絡を取って行くか、縁を信じてぶらりと行くかになる。

下の写真の猫たちは、わが家のテレビ前に鎮座してもう17、8年経つ。家具や組み木絵、木のおもちゃなどを制作する木工房「菜の花」のもの。まだ村にギャラリーやアトリエが少なかった頃から、ご夫婦で構える工房だ。

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落ちない石が落ちた

南阿蘇村には、「免の石」という岩と岩の間に挟まれた奇岩があり、「落ちそうで落ちない石」として一躍ブームとなった。実際にはガイド付きのトレッキングでないと辿り着けない場所にあるため、遠望する「鳥の小塚公園(免の石望見所)」が後に整備された。

ところが5年前の地震で挟まっていた岩が崩落。幸い巻き込まれた人はいなかったが、まさかあの石が落ちるとは。しかし石が落ちてできた空間から、今度は猫が浮かび上がって見えるようになった。下の写真では分からないが、実際トレッキングした人が撮影した写真を見ると確かに猫がいる。詳細は「免の石」で検索すれば出てくるので、気になる人は猫具合を確認してほしい。

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この鳥の小塚公園、免の石方向とは逆を向くと眼下に南郷谷が広がる。一見の価値あり。駐車場が少ない(駐車場と呼んで良いかわからないが、路肩っぽいスペースに数台停められる)のが少々難だけど、平日なら訪れる人は多くないと思う。

ケニーロードからの絶景も見るべし

絶景ポイントといえば、ライダーたちの愛するグリーンロード南阿蘇を忘れてはいけない。

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益城町と南阿蘇村をつなぐ南阿蘇外輪山を走る道路で、その一部はゆかりのあるケニー・ロバーツにちなんで「ケニーロード」と呼ばれている。途中の展望所には東屋がひとつだけ。ここでお弁当を広げる人たちをよく見かける。この日もご夫婦が遅めのお昼ごはんを食べていた。この辺りは野鳥のさえずりもよく聞こえる。

梅雨が明ければ、眩しい緑に包まれる夏。モクモクとできた雲が南郷谷に陰影をつける。これがまた美しい。

阿蘇の壮大な山々に田園や家並みが溶け込んだ景色は、人の営みや温もりを感じさせる。

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最後は、この春開通した新阿蘇大橋のたもとの展望所「ヨ・ミュール」に立ち寄って、帰路に着いた。ヨミュールって、熊本弁で「よく見える」という意味なんだって。「なんだって」って(笑)。いやー、おそらく「よ~見ゆる」からきているのではないかしら。みんなここでジェラートを食べていた。私も、次回立ち寄ったときに食べてみよう。

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鬱々とした気持ちが少しだけ晴れた。このご時世なので一人ドライブだったけれど、また友達や家族とおしゃべりしながら旅ができる日を心待ちにしている。

まだまだ見どころはたくさんあって書ききれない。ひとまず今回はこの辺で。

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最後に、まちの地図を描きました。書ききれなかった個人的おすすめスポットも、地図に記してみました。貼ると画質は均一に落ちるみたいなので……文字見えるかな? (追記21.7.26:というわけで、地図は縦も入れてみました)

さあ、このnoteで妄想の旅へ。本当に行く機会があったら、思い出してくださいね。不定期ですが、今後とも当シリーズをよろしくお願いします。


行った気になる②南阿蘇

*縦バージョン ↓

行った気になる②南阿蘇タテ

(文・写真・地図 ©️ぶんぶんどー)

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