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ひとつになっていく清々しさ/ドラマ『リバーサルオーケストラ』第3話・第4話

ああ、やっぱりオーケストラってかっこいい。

タクトに導かれ、一人一人の音が大きな流れになる。ボルテージがどんどん上がって、高揚感に包まれる。テレビの前に座って、すっかり演奏会の観客気分だ。


(以下、ドラマの内容・次回あらすじを若干含みます)

期待していなかった、というマイナスからの視聴のせいか、水曜日の夜が楽しみになってきた。放送回ごとに、玉響や団員の問題をひとつずつ解決していく。主人公はあくまでも初音だけれど、奏でる音がひとつになっていくのと同じで、団員それぞれの問題をみんなでクリアして音楽と向き合っていく姿は、誰もが主人公に見える。

同じ枠で昨年放送されたのは、『ファーストペンギン!』だった。浜の漁師たちとシングルマザーが、漁業をビジネスとして立て直す、実話を基にした物語。毎週面白かったのだが、敵対する相手の嫌がらせが今回のドラマの比ではなく、そこが自分にはちょっとつらかった。

その点、『リバーサルオーケストラ』における「調子のいいことばかり言う常葉市長 vs 演奏会場にて豚汁で客引きをする(←嫌がらせ一例)本宮市議の戦い」は、若干昭和の匂いが漂うのは仕方ないとして、笑って観てしまう。要するに、私ただの生瀬さんファンなだけなんだけども。しかし、毎回市長が持ってくる無理難題に頭を抱えながら、朝陽と共にどうにかしてきた事務局長の小野田も、さすがに高階フィルとのコンペには怖気づく。コンペ対決が、最終回1週前辺りのクライマックスになるのだろうか。

玉響の一体感をもう一度浴びたくて、ドラマを観終わった後はTVerの特別編集版を鑑賞。自分は、こうやってみんながひとつになっていく様を見るのが好みなのだろうなあ。あと、第3話から加わった藤谷役・渋川清彦さんのティンパがかっこよすぎない?と思って調べたら、もともとドラムをやっているのだと知り、納得した。

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第3話で玉響が演奏した「威風堂々」にはちょっとした思い出があり、楽器をやっていた学生時代がよみがえる。また第4話、出張オケを企画する団員たちを見て、サークル活動費を稼ぐためによく演奏へ出かけていたことを思い出した。定期演奏会用のホールと楽屋を1日おさえるのに、当時は20万円ぐらいかかったと記憶している。今はもっと高いかもしれない。演奏会パンフレット制作のために、練習が唯一休みの水曜日に広告営業へも行き、且つバイトもするというむちゃくちゃな学生生活だった。

それまで楽器をやったことがなかったので、悪戦苦闘の思い出の方が多い。ダメダメ部員だった。「6連符と7連符なんか弾き分けられるかよ!」と思っていたし。それでも、みんなで音を合わせるのは楽しかった。ドラマ公式サイトの今夜のあらすじを読むと、ビゼーの「カルメン組曲」が出てきた。この中のアラゴネーズに思い入れがあるんだけど、さすがに弾かないか。

実は今年の正月、卒業以来年賀状のやりとりだけだったサークルの先輩から、「連絡がほしい」とメールアドレスの書かれた年賀状が届いた。後日、約30年ぶりに再会。30年も年賀状だけでやり取りしていたのか(笑)。その間、色々なことがありすぎた。月日の流れはジェットコースター並みである。

いつものほほんとしているのに、本番ではビシッと決める。先輩はそんな人だった。パートトップだった彼女は、卒業前の最後の定期演奏会で、ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」の「Ⅰ 夜明け」でソロを弾いた。私たちの楽器で奏でるにはポジションの難しい音があって、そこが練習中なかなか決まらなかった。でも本番では、重厚な音と繊細な音を使い分けて、きれいに入った。あの演奏が忘れられない。

当時の楽譜を引っ張り出してきた!
「はきはき」って何だろう?(笑)

「ウィリアム・テル序曲」には、「Ⅰ 夜明け」「Ⅱ 嵐」「Ⅲ 静寂(牧歌)」「Ⅳ スイス軍の行進」がある。よく、少年の家などの起床時間に使われているのが「静寂」、一般的なウィリアム・テル序曲のイメージは「スイス軍の行進」ではないかと思う。

一体感のある演奏を見つけたので、貼っておこう。ブラボーーッ!
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先輩との再会とドラマ放送期が重なったのは、何かの縁だろうか。しかもその翌日、なぜか所用でこれまた30年ぶりぐらいに母校を訪れる事になった。おそろしい偶然が重なるものだ。最近こんなことが多くて、一体何の前触れなのか。

さて、ドラマは中盤へ。過去のトラウマを完全克服とはまだ言えない初音が、どのように立ち直るのか気になる。……と、立ち直る前提で書いてしまった。

流れが王道的なドラマだけれど、久しぶりに音楽に触れ、週末の『今夜すきやきだよ』と同様に今期の癒しドラマ枠に入っている。


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