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おじさんズに輝きを/ドラマ『シッコウ!! ~犬と私と執行官~』

裁判所の職員・執行官を題材にしたドラマであることはわかっていたが、なぜタイトルに「犬」がつくのだろうかと疑問に思っていた。

それは初回を観て納得。伊藤沙莉さんが演じる主人公の吉野ひかりは、動物好きが高じて心機一転ペットサロンへ転職。同じ頃、偶然執行官・小原樹(織田裕二さん)と知り合い、強制執行する現場で飼われている犬の世話係を頼まれるようになる。というのも、小原は犬が大の苦手なのだ。

強制執行とは、裁判所の決定事項が実現されない場合に、それを強制的に執行する仕事。自宅や事務所へ行き、家の明け渡しや動産の差し押さえなどを容赦なく行う。そのため、債務者に泣きつかれたり開きなおられたり、恨まれたりすることが日常茶飯事。感謝されることなどほとんどない。そんな毎日でも、忍耐強く任務を果たそうと努力する小原を織田さんが好演中。

青島っぽいコートを着ながら、あちこちの強制執行先へ出向いている小原。色黒で汗いっぱいかいて、ちょっとため息ついてそうな小原。いつも困り顔な小原。このドラマで織田さんが演じるのは、見事に中年のおじさんである。とは言え、小原は執行官の中では裁判所書記官から転職後1年目の若手。同じ執行官室には、室長の日野(勝村政信さん)、渋川(渡辺いっけいさん)、間々田(菅原大吉さん)という3人のベテラン執行官と、ひとりフレッシュさを保つ事務員の栗橋(中島健人くん)がいる。

栗橋を除けば、完全なる「おじさんズ」。彼らに加えて、執行補助者に六角精児さん演じる鍵屋の砥沢、近所で小さな喫茶&Barを営み、強制執行時には立会人として帯同する須賀川(モロ師岡さん)も登場。おじさん人口がやたらと多いドラマなのである。木曜日は消防団だし、今期のテレ朝はおじさんズ、バンザイ。菅原大吉さんなんて、朝ドラの「分家ズ」として楽しませてもらったばかりだ。

まあとにかく、ベテランが揃い楽しみにしていた。ところが、意外に出番が少ない! おじさんズの見せ場がようやく登場したのは第5話。と言っても栗橋の部屋での飲み会シーンなのだが、彼らの活躍を楽しみにしていた私は「おおおお、やっと出てきた!」と歓喜。これ、これよ、私が観たかった渡辺いっけいさんは! 執行官の仕事について語るシーンは、この回の山場(と私は思っている)。もっとおじさんズを活躍させてほしい。ちなみに、みんなの溜まり場で須賀川の経営する店の名は「納税」。どこかから「ダサいぐらいなんだよ、我慢しろよ!」というアキの声が聞こえてきそうだ。

これまで、夜逃げされたり嫌がらせされたりりと、強制執行先でさまざまなできごとが勃発。出会った頃のひかりは、住む家がなくなる人たちが可哀そうだと債務者に同情的。執行官という仕事を知らない彼女は、いわば視聴者側の感覚に近いはず……なのだが、執行官を「人の部屋に勝手に入る泥棒」呼ばわり。「強制執行されるのは止む無し」という人がけっこう多いので、最初は彼女にあまり感情移入できないまま観ていた。私が冷たい人間なのかもしれない。ただ、第3話のひきこもり男性に同情的なのは同じだった。これは演じた高橋光臣さんが素晴らしいということもある。最初、高橋さんとは誰も気づかなかったのではないだろうか。

このあたりから、ひかりの執行官に対する見方が変わっていき、ちょっとほっとしている。彼女には、新たな心境が芽生えている様子。ドラマで知ったが、今年の4月まで日本に女性執行官は1人もいなかったそうだ。このことを踏まえれば、おじさんだらけの執行官室も頷ける。今は犬担当の執行官補助者として働くひかりも、やがて執行官を目指すのか? 主人公の揺れ動く感情を吐露するシーンあたりで、どうかおじさんズを組み込んでいただけないだろうか(結局、そこ 笑)。実は、ペットサロンのしぶとい社長を演じた板谷由夏さん再登場にも沸いたわが家。次回以降、どこかでまた出てきてほしい。板谷さんも好き。



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