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明日に繋がらない今日を生きる主人公/ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』

主に「キャストが好み」という理由で観はじめたのだが、初回から感情を揺さぶられまくっている。

(以下、ドラマの内容を含みます)

主演の杉咲花さんが演じるのは、1年半前の事故によって記憶障害の重い後遺症を持ち、翌日になると記憶が真っ新になってしまう脳外科医・川内ミヤビ。事故に遭う前までは、将来を嘱望されていた。だが今許されている行為は、看護師の補助だけ。

「自分はまだ医者なのか?」

常に自分に問いかけ、葛藤するミヤビ。それでも翌朝目覚めたら、これまでのことを綴ったノートを全て最初から読み返して暗記し、「今日できることをやろう」と懸命に自分を奮い立たせるのだった。

ここですでにもう泣きそうになっているのだが、「できないこと」に葛藤する彼女は誰にも弱音を吐かず、なんとか自分の存在を肯定して立っているのに、私が泣くわけにはいかないと勝手に歯を食いしばって観た(苦笑)。

毎日がゼロからのスタート。そんなミヤビの前に現われたのは、若葉竜也さんが演じるアメリカの大学病院から赴任してきた三瓶友治。冷静沈着でマイペース、風変わりな彼の登場によって(登場の仕方が『HERO』の久利生公平だった)、ミヤビの止まっていた脳外科医としての時間が動き出す。三瓶は彼女の優秀さに気づいている。というか、知っていた説濃厚。「昨日の記憶は失っても、技術は上達する」と言い、ミヤビを再び脳外科医として半ば強引に働かせようとする。

泣かないと我慢して観ていたが、中盤、ミヤビと三瓶がふたりで話す屋上のシーンでは無理だった。ミヤビが、「患者の人生に関わるのがこわい」と胸の内を語るこのシーン。

「私の昨日は今日に繋がらないし、今日も明日に繋がりません」

だが、三瓶はこう言い放つ。
「あなたは、障がいのある人は人生を諦めてただ生きていればいいと思っているんですか? 患者を救うことより自分の絶望が怖いなら、まあ仕方ないですね」

彼はミヤビの本心を見抜いていた。

本当は、患者の人生に関わると迷惑をかけるという不安ではなく、できない自分に絶望したくないから。気持ちを見透かされていたミヤビは感情をあらわにして、ひとり泣き腫らす。このときの花ちゃんの泣き演技に、台詞はひとつもない。でも、患者を使って言い訳をした自分のことが嫌で仕方ない、できることなら自分だって患者を救いたい、でもその自信がないといった複雑な感情が入り混じっている見事な泣き。人は弱いから、つい何かを盾に自分の本心から逃れようとする。

完全にここで心を持っていかれた。
私は花ちゃんについて行くぞ。

さて、ミヤビの周囲を見てみると、野呂佳代ちゃんや千葉雄大さん、生田絵梨花さん、吉瀬美智子さん、井浦新さん、そして天音! 天音くんが演じる脳外科医の綾野楓は、ミヤビが事故に遭う前までライバルだったのだろうか。政略結婚までして権力を得ようとするこの男、後からいろいろ絡んできそう。

今のところ癒しポイントが高いのは、院長を演じる安井順平さん。お笑い出身なのを忘れるほど、あちこちのドラマでお見かけする。押しに弱くてお人よしな院長が、いつか大活躍する日が来る、きっと来る(と願ってる)。ミヤビには事故に遭う半年前からの記憶が一切なくなっているが、三瓶と接点があるのは間違いなさそう。謎めいた彼と、どんな関わりがあるのか。はやく知りたい。

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