ふたりの立つ場所/大河ドラマ『光る君へ』第17回・第18回
「ひぃーー! 平安時代、全然平和じゃないやんかーーー」と慄いた、あの日から5ヵ月が過ぎた。
(以下、ドラマの内容を含みます)
兼家がいなくなり、道隆もいなくなり、関白となったのは、道兼だった。だが、彼もまた病に倒れる。
「俺は浄土に行こうとしているのか。こんな悪魔が……」
汚れ仕事を一手に担っていた道兼。難なく父親の愛情を得る三郎(道長)には、ずっと嫉妬していたのだと思う。でも、荒んだ暮らしから引きずり出してくれたのは、他ならぬ三郎だ。
わずか7日間の関白だった。
次の関白は伊周か、道長か。
すぐにまた権力争いがはじまる。
「皇子を産め!」「皇子を産め!」「皇子を産め!」
病魔に蝕まれた道隆が定子に放ったことばを、今度は伊周が怒りのままに言い放つ。これが定子の運命を決めてしまったのかもしれない。
病となってからは正気ではなかった道隆も、最期は貴子に見守られて静かに旅立つ。余談だけど井浦さん、あちらのドラマも今これ書きながら気になってるの……。大迫教授は、白なの、黒なの?(なんせ三瓶沼に足を突っ込んでしまったので。Dr.三瓶、あれはアリなの?いやいや、あれをやっていいのは大門未知子だけ!)
関白になれず、イライラMAXの伊周。どうしてこうも三浦翔平くんは、クセのあるちょっと胡散臭い役が似合うのだろうか(笑)。クセ強な役を演じる彼は、生き生きとしている。『あのときキスしておけば』の高見沢をまた観たくなった。
プライドが高く、傲慢。それでいて気が小さい。伊周よ、君は定子の言う通り、人望が無さすぎるんだ。(全員同意ですよね?)
道長を推しまくる鬼気迫る詮子は、子どもたちの中で兼家に一番似ている気がする。
「母を捨てて、后を取るのですか!」
一番言っちゃいけないやつ。
間に挟まれた一条天皇の苦渋の決断によって、道長が事実上のトップにおどり出る。土御門の家では、どっしりと構えた倫子が勝ち組の会話。もう一人の女の存在を確信しても、まさか夫のやる気がすべてその女との約束を果たすためだとは思っていないだろう。
政治の頂に立った道長が、月夜を見上げてやって来たのはあの廃屋敷。またもふたりは再会する。けれどまひろの中では、あの逢瀬はすでに遠い昔のことで、恋とも愛とも違う感情が流れている。同じ使命感を持つ互いのことを俯瞰しているような、冷静な目。人生を定められずにいる自分が、今道長と話すことは何もない、ということだろうか。道長もまた、まひろに対する気持ちは恋とも愛とも違うように思える。今の彼にとって、まひろは人生の指針。再びふたりがふれ合うことは、もうないのか。
同じ月を違う場所から眺めるのはいつもと変わらないのに、どちらもずいぶん遠くに来てしまったような……。観ていてそんな距離を感じる。
ききょうから道長の不人気ぶりを聞いたまひろは、「自分の知っている三郎らしさ」を思い出し、つい笑ってしまう。この会話で、従者ズ以外にふたりの深い深い関係を知る者はいないのだと、改めて実感する。
「あの人、人気ないんだ」
昔の彼氏を思い出した風の、こんなユーミンの歌なかった? あ、なかった?
まひろの越前での暮らしが描かれる日が、少しずつ近づいている。世間的な人生グラフで言えば、今彼女がいるのは谷間。もがきながらも日々つつましく暮らす力強さは、ききょう(清少納言)の力強さとは異なる。私は2人の描写のコントラストが、毎回けっこう好きだ。
まひろとさわは、仲直りできてよかった。これは、まひろのターニングポイントのひとつ。「書く」という楽しさを理解したのだと思う。お騒がせなさわだが、まひろは彼女がいたことで道長との決別のつらさを分かち合えたし、道綱の母に会えたし、自分の書いたものを誰かに読んでもらう面白さを知った。そう考えると、さわという人物は紫式部誕生には不可欠な存在。いつか、まひろとさわがまた会えますように。
ところで、ますます羽振りのよくなった蔵さん@宣孝は、まひろのことを友人の娘ではなく、女性として見ているよね?
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