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UXリサーチとデザインのつながり

こんにちは、freeeでデータアナリティクスを担当しているBunです。
この記事は、「freeeデータに関わる人たち Advent Calendar 2020」の18日目のエントリーです。

前職ではデザイン会社でディレクターやUXデザイナーとして仕事をしており、今年8月からfreeeのデータアナリストとして仕事をしています。

今回の記事ではUXリサーチに興味がある人向けに、UXリサーチの概要やどのようにデザインに反映されるのかについて書いていきたいと思います。
内容に関してお気軽にメッセもらえると大変うれしいですmm

UXリサーチとは

まず始めに元となるUXデザインのプロセスについて説明していきます。

UXデザインは、①Empathy、②Define、③Ideate、④Prototype、⑤Testの5つのプロセスに分かれています。

とてもシンプルに説明すると、①ユーザーを理解することで②解決すべき課題を定義し、③どのようにデザインや施策で表現するのかアイディアを出しまくって、④形にした簡易的なプロトタイプを⑤ユーザーにテストしてもらう、というものです。

また、このプロセスは一方通行で進むわけではなく、各フローを行ったり来たりしたり時には飛ばして進むこともあります。

UXリサーチャーの役割は主にEmpathyとDefineの部分でOwner shipを取っていくような印象を自分は持っていますが、説明が長くなるので今回はEmpathyのみ説明していきます。

ソース一覧
What is UX Research?
Complete Beginner’s Guide to UX Research
そもそもUXリサーチとは何なのか
【保存版】無料で学べるUXデザインの教材まとめ
”デザインってビジネスにつながるの?”って人にこそ読んでほしい話

Empathyとは

Empathy(共感)とは英英辞典では下記のように説明されています。また、意味がわかりやすいように比較対象として混同しやすいSympathy(同情)の説明と合わせて載せました。

Empathy
the ability to share someone else's feelings or experiences by imagining what it would be like to be in that person's situation

Sympathy
(an expression of) understanding and care for someone else's suffering

ポイントはEmpathyの説明の最後に記載してあるユーザーのシチュエーションの中では一体どういう状況なのだろうかとイメージするという部分であり、これがEmpathyとSympathyの違いです。

ユーザーの周辺環境でどのようなことが起こっているのか具体的なシチュエーションを理解せずに「こういうことにユーザーは困っている」と思うだけではSympathyであり、本当は何に苦悩しているのか誤ってしまいます。

例えば、日常生活の中で自分は親切だと思って行動したのに相手から「大きなお世話だ」と思われてしまうのはSympathyであることが原因です。

ソース一覧
Practical Empathy: For Collaboration and Creativity in Your Work
EmpathyとSympathyの違いがわかる説明動画
How P&G Brought Febreze Back to Life
Sympathy vs. Empathy in UX

なぜEmpathyでなくてはいけないのか

こちらに関しては「ほしかったのはドリルではなく穴である」という有名な例を用いて先に説明します。

上記は”棚を作るという目的に対して穴が必要だったためドリルを購入した”という話ですが、
もし購入者に小学生の子供がいるのであれば一緒に日曜大工ができるよう安全に扱えるようなデザインにしたり、
そもそも購入者がマンションに住んでいて穴を空けることができないのであればドリルではなく強力な粘着テープを代わりに売ればよいということになります。

つまりユーザーが置かれている”状況”によって解決すべきユーザーの課題の定義が変化するからであり、後工程であるデザインやマーケティングなどの施策のクオリティに影響するからです。

ソース一覧
サイレント・ニーズ ― ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る
ジョブ理論
The Jobs-to-be-Done Handbook: Practical techniques for improving your application of Jobs-to-be-Done
The Jobs to Be Done Playbook: Align Your Markets, Organizations, and Strategy Around Customer Needs
WHEN COFFEE & KALE COMPETE
Design Problem Statements – What They Are and How to Frame Them
HOW TO WRITE THE BEST PROBLEM STATEMENT FOR YOUR STARTUP
User Need Statements: The ‘Define’ Stage in Design Thinking
JTBD.info
御社のペルソナは喋ってますか?


Empathyするための手法

リサーチ方法は様々あるのですが今回は主要な2つを紹介します。

①ユーザーインタビュー
特定のテーマ(ユーザーの行動や習慣など)について理解することを目的に、1人のユーザーにそのテーマについての質問をする調査方法です。
基本的には、ユーザーインタビューの対象者1名に対して質問者と書紀が1名ずついることが好ましいです。

ジョブ理論に沿ってインタビューを行う場合、短編ドキュメンタリー映画として頭の中でイメージできることがよいとされ、下記5つの要素を捉えることでEmpathyに必要な情報を得ることができると考えています。
①ユーザーが成し遂げようとしている進歩は何か
②苦心している状況は何か
③進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か
④不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動を取っていないか
⑤その人によってよりよい解決策をもたらす品質の定義は何か。また、その解決策のためにトレードオフしても良いと思うものは何か

②エスノグラフィリサーチ
ユーザーの周辺環境に身を置いてどのように対象プロダクトを使っているのか観察をする調査方法です。これを行う理由は、プロダクトはユーザーの周辺環境の中にうまく溶け込むようにデザインされているからです。

例えば品川や新宿など混雑した駅では、より多くの人が改札をスムーズにすり抜けてホームへ降りることができるように改札はデザインされています。
そのために一つ一つの改札を細くしたり、扉の開け閉めで通行者が詰まらないよう問題が発生した場合のみ扉が閉まるようになっています。

これはアプリでも同じことが言えます。レシピアプリを運営しているクラシルは、レシピを見ているときはずっと画面がONの状態のままになっています。推測を含みますが、料理中に手が汚れているのに画面ロックをいちいち解除するのが面倒だという問題を発見したため、このような体験を提供していると考えられます。

※補足:ユーザビリティテスト
人は日常で意識的(システム1)もしくは無意識(システム2)のどちらかで行動しています。
例えばカップの取手を掴むときや自転車のペダルを漕ぐときはシステム2が働いており、製品のUIは無意識な状態でも誤った操作がされないようにデザインされています。こうすることで誤った操作を減少させることができるので、ユーザーは目的を達成するためのアクションを問題なく遂行することができます。

アプリのUIも同じようにユーザーが無意識に操作をしている場合、どのような操作をしたのか基本的には正確に覚えていないです。また、どのように操作したのかインタビューをしても求めている答えが返ってこないことや勘違いの情報を伝える場合が多いです。
そのためインタビュー形式ではなくどのように操作をしているのかその場で操作を観察をしたり、操作しているときにどのようなことを感じたか声に出してもらうことでUI上の問題が発見することができます。

ソース一覧
①ユーザーインタビュー

聞く力―心をひらく35のヒント
ビジネスマンのための行動観察入門
図解 相手の気持ちをきちんと聞く技術
ユーザーインタビューを始めよう
UXリサーチの道具箱
12 Tips for Early Customer Development Interviews (Revision 3)
How to Listen to Customers
ユーザーインタビューで学んだ大事なこと

エスノグラフィリサーチ
方法としてのフィールドノート―現地取材から物語作成まで
フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる
調査されるという迷惑
文化人類学の思考法
Contextual UX
簡単に共感しないデザインプロセスの秘訣 TAKRAM RADIO

③ユーザビリティテスト
超明快 Webユーザビリティ ―ユーザーに「考えさせない」デザインの法則
インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針
誰のためのデザイン?
新版 アフォーダンス

気をつけるべきこと

組織全体で共通理解を持つ
どのようなユーザーが使っているのかチーム全体で共通理解を持たせて一貫性のある体験を提供することがUXデザインの本質であり、UXリサーチはその核として存在しています。しかし、定性情報はハイコンテキストゆえに意思決定に関わる人たちが当事者にならなければ納得度が生まれにくくなってしまいます。組織のサイロ化が進んでいる場合はなおさらです。リサーチ段階からいかに経営陣や意思決定者などチーム全体を巻き込めるかが重要となってきます。

”状況”は常に変化する
現在ではスマートフォンはインフラになっており、様々なアプリやサービスで生活は支えられています。日々新しいアプリやサービスがリリースされており、それに合わせて生活スタイルが変化するスピードが上がっています。つまり、人を取り巻く”状況”は変化しやすくなっているため、ユーザーインタビューを適度にしていないといつの間にか自社サービスがユーザーに刺らなくなっている、なんてことも起こってしまいます。

ユーザーが望むものは最適解ではない
自動車の発明者であるヘンリー・フォードの「私が人々に何が欲しいか尋ねていたらもっと速い馬を売っていただろう」という有名な例があるように、ユーザーが望むものが最適解というわけではありません。それは数ある問題の1つであったり、もしかしたらただの事象に過ぎない場合があります。

最低限の作法をおさえる
インタビューは決して難しいものではなく、経験がないからといってやらないというのはもったいないです。しかし、インタビューにも最低限必要な作法が存在します。例えば、事前に調査設計をしたり誘導するような質問はしない、早い段階でインタビュー相手とラポールを形成するなど。書籍やネットの記事を参考に最低限の作法を抑えて、まずはやってみるのがおすすめです。

最後に

定性定量データの分析はmixed methods researchという名称で呼ばれており、海外のUXリサーチのJob Descriptionにも少しずつmixed method researchが求められるようになってきました。

Google:Quantitative User Experience Researcher
Amazon:UX Researcher
TikTok:User Experience Researcher

入社したばかりなのでまずはデータアナリストとしての基礎を固めていく予定です。そして今後はmixed methods researchという観点から、マクロ(経営視点)とミクロ(ユーザー視点)を行き来しながら意思決定をプロダクトの改善に繋げることに取り組んでいきたいと思います。


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