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『ブルーピリオド』は面白いなぁ。でも、もういいかなぁとも思える。

『ブルーピリオド』の最新14巻が発売されたので読む。


今巻は、主人公の八虎の話ではなく、ほぼ同級生の村井八雲の話である。
八雲、だけあって、島根県の男である。小泉八雲、ラフカディオ・ハーンである。
で、八雲は初登場時から、八虎の同期生の中でもある種天才的な、傲岸不遜なキャラとして登場しており、彼は大変貧乏であり、その生い立ちから美術への道を志した物語が綴られる。
まぁ、なので、やはり物語は停滞している。藝大に入ってから、物語は停滞し続けている。と、いうのも、今作は少年漫画的にいえば藝大受験を成功させた時点である種のピークを迎えており、その後の世田介との魂の交換を持って、恋愛マンガとしても、ライバル漫画としても再度のピークを迎えており、ここから八虎自身の藝術への手触りが残されるのみだと思われるが、それ以外には他のキャラクターでお茶を濁す、という展開にならざるを得ない。長期化した際に必ず起こる弊害であり、このダウナーな感じを楽しめるのはファンや好事家だけで、一般層は霧散していく、というのが大抵の流れである。
美術、藝術は人の数だけあるのだから、様々な人物に迫るのも大事だが、藝術にまつわる話ではなく、どうやって絵で生計を立てるのかのルポルタージュでもなく、ギャラリーの仕組みなどでもない、ただの一美術家の心象スケッチに陥りつつある。
まぁ、それが美術の根底であり根源であるのだが、それは八虎が担うべきであり、他にも世田介くんなどもいたわけで、もう八雲の話は正直どうでもいいのである。
それでも読ませるのは作者の力量が非常に高いからだろうが、自己模倣に陥っている気もする。
そして、天才的な1人である八雲は今作ではそれを凌駕する真の天才の前で、凡人のように凄みをかき消されて、まぁ、なんというか一気に『はじめの一歩』の千堂のように格が落ちて、まぁリカルド・マルチネスに処刑される運命が揺るぎないのと同様、底が見えて残念だ。
相変わらず面白いのだが、然し、停滞は否めないし、この停滞は一つの演出であり、閉塞感こそ美術界隈の持つものの表出なのかもしれないが、然し、最早ゴールのないモラトリアム期に入っている。まぁ、大学生活はモラトリアム時代なので、何度も言うようだが、それは作者の狙いであって、弩による恐ろしいほどの一撃の為の、溜めの溜めの巻なのかもしれないが。


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