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書店パトロールⅻ ZINEにまつわる本

最近、あまり書店に行けていない。
つねに行きたい行きたいと思いつつも、時間もないし、お金もない。お金があればいくらでも買うさ!でも、ないんだよね。

しかし、今日は2,000円だけ使おうと思い、二千円札を握りしめ、私は書店をぶらぶらしていた。
ちなみに、私は書店に入るたびに、その書店に点数をつけるという、嫌な人間である。最高が星5で、最低が星1、まぁAmazonレビューみたいなものだが、基本的には品揃えで決めているので、他の人が見たら全然評価が変わることもあるだろう。
なので、個人的には文学系が充実していると嬉しくて点数を多くつけてしまう質だ。
さて、いつものように文学コーナーに足を運ぶと、まずは目についたのは『賢治と「星」を見る』。

宮沢賢治、日本文学における天才の二人のうちの一人であるが、やはり藝術家は童話を書かなければならないのである。
何か、小説を至上のものとする勢力がおり、神棚に祀り上げているが、私に言わせれば、小説は最高!でも童話はもっと最高!と声高に言わせていただきたい。
私もよく空を見上げる。あいにく、東洋の羅馬ローマである京都の夜空は星がたまにしか見えない。お月さんはよく微笑んでいるが。なので、星座を見て風雅に語り合いたい思いがあるのだが、なかなか達成はできそうにない。そう、『どうする家康』の徳川家康と石田三成のように夜空を見ながら……。つか三成も登場から4話くらいでプルプル激怒で仲違いしてたから、あんまり思い入れもなく進むのはなんだかなー。

そして、お次に手に取ったのは、『三浦綾子の生涯』。これは、どうやら今月発売された新刊のようである。

私は、三浦綾子さんの作品を読んだことがない。その人生も断片的に少し識っているだけなので、こういう、濃い評伝から入り、その人となりを識ってから作品を読む、というのも、なかなかに楽しい文学探求ができそうだと、そのような取っ掛かりで行くかとテーマを決めて値段を確認し、そっと棚に差し戻す。
なにせ、2,000円札なので。評伝は大抵は3,000円以上する。まぁ、それくらい大変な制作に加えて、3000部とか4000部くらいしか出ないのだろうし、まぁ、そんなもんだよねと、貧乏を恨む。

うーむ、と腕を組みながら、と、ふいにZINEという文字が目に留まり、それを棚から抜く。
「ふたりのアフタースクール」という対談本である。

パラパラと捲ると、まぁ、対談形式の本で、イベントでの対談などを文字起こししているのだと思うが、あ、これ欲しいな。と思い、値段を見る。どうやら昨年発売された本のようで、なんと1,980円である。買う本、君に決めた!とばかりにそれを持ち、書店員に渡すと、彼は爽やかな笑顔で、「カバーはどうされますか?」と尋ねて来たので、無論お願いする。

これは、noteに書いている人や、文学フリマなどに出店されている人にはすごくお勧めの本である。
まぁ、ZINE、というのは、ファンジンから派生した言葉らしく、まぁ、同好の士によるオシャレなカルチャー誌のようなもので、テーマも、規制もない、ただ作りたいものを作る、そのようなものである。
たぶん。

まぁ、そのZINEを作ること、書店に直に営業に行き、置いてもらうこと、いくらで売るのか、どういうものを作るのか、どういった手法で広めるのか、などなどを対談形式で語り合う、そのような本である。
書店に自ら営業に行く、という話関連がいい。なにせ、大手出版の本ではないわけで、数十冊とか100冊、あるいは数冊売る、そのようなミニマムな世界、だけれども、そのせいか息遣い、というか、創作と経済の交わりなどが語られていて、物創りをする人には刺さる(この表現は私は死ぬほど嫌いなのだ)のではあるまいか。
イベントの文字起こしなので(ZOOMイベント)、参加者からのクエスチョンにも答えている。

私は、この本を読んでいて、あの、三馬鹿、いや、ズッコケ三人組という、半年に1冊刊行されていた小学生向けの児童小説を思い出していた。
そう、あの、ズッコケ三人組シリーズ史上最高傑作と名高い(と私が勝手に言っている)、『うわさのズッコケ株式会社』である。
これは、ハチベエ、モーちゃん、ハカセの三人のクラスが株式会社を設立して、お金を集めて、ラーメン屋を起こす話なのだが、べらぼうに面白い作品である。なんというか、10円、20円、そんな利益、そんな売上、粗利がいくらで、原価が〜材料費〜宣伝〜など、仕事をカリカチュアして書いている今作はどんな冒険よりも子供にとってのアドベンチャーであり、読む手の止まらない傑作である。
そして、ZINEを掛け率いくらで書店に置いてもらうかのやりとりなど、思わずそのテイストを思い出し、私はラーメンが食べたくなった。

私は人のZINEや同人誌は好きではあるが、基本的にはイベントは恥ずかしいので参加はしたくない派であるし、そもそも徒党も組みたくない派である。自分の本は作ったら20名くらいにお渡しして読んでいただければ十分、と、いうよりも、noteやSNS媒体で既にそれ以上の方に、大なり小なり読んでいただけているので、それ以上は必要ないのである。

書籍化、というと、まぁ、書店に自分の本が並ぶ喜びはあるだろうけれども、それはお墨付きの喜びであって、届く範囲が広がることの喜びであって、まぁ、大きいか、小さいか、の違いである。
昔は印刷しなければどうしようもなかったわけで、本、というものは手段としての特性が大きかった。本は既に馬車であり、新幹線でどこへでも行ける。本というものは、その手段を目的と化してしまった。SNSが手段として全員に開かれつつも、未だに紙の本信仰は消えない。
まぁ、これは素人の話で、プロはそれが商売だからその限りではもちろんないと思う。

書籍化せずとも、私の中で面白いnoteの記事は山程あるし、密かに、書籍化しているものよりも何倍も楽しみにしている書き手もいるのだ。

ただ、ZINEへの情熱に対しては非常に面白く読ませて頂いたし、良い買い物だったし、作り手の人にはおすすめの1冊。


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