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アマチュアの楽しさ

ジャケ買いで『会社帰りのパ・ド・ドゥ』を購入して読む。

水色とクリーム色のツートンカラーの表紙がとてもキレイだったので思わず手に取る。

私はダンス漫画が好きで、特に男性が主役のダンス漫画は気になる。
有名所は今年アニメが放送もされた『ダンス・ダンス・ダンスール』や、『ボールルームへようこそ』、などがあるが、今作はバレエである。

バレエと言っても若者の青春ではない、おっさんの青春である。
35歳の冴えないおっさんがバレエを始める話である。
この設定は興味深く思う人が多いと思われる。バレエ、というのは女性が大多数を占める業界であり、男性、とくにおっさんにはあまりに敷居が高いものだ。
そのため、そのようにバレエに興味がある人に対して、ある種のゲートに成り得る漫画かと期待して読んだ。

絵は大変キレイで読みやすく、わかりやすいおっさんのボーイ・ミーツ・ガールになっている。今作のヒロインは27〜28?くらいなので、大人のボーイ・ミーツ・ガールである。
男というものは、おっさんになろうとも、爺さんになろうとも、運命の女性との出会いを待っているものだ。そして、それは新しい世界、新しい自分を見つけ出すための扉となっている。
今作の主人公の小日向瞳もまた、そのようなおっさんである。
社会人バレエ、というのはプロとは違う世界である。天才や神童、ライバルとの闘い、仲間たちとの切磋琢磨、そのような青春は、既に終わってしまっている。
大人になると天井が見えてくる、とは『シャーマンキング』の麻倉幹久の名言だが、今作のヒロインの桜木ほのかもまた、天井が見えてしまった女性である。

然し、会社帰りにパ・ド・ドゥを踊ることは、まだ出来るのではないか?
これはそのような漫画である。彼らにどのような舞台が用意されているかはわからないが、芸術を楽しむ、芸術を作ることは、プロの専売特許ではない。プロはそれで食べているだけの話であり、芸術は、誰にでも開いているものであり、それは、大人になってその輝きを羨望を持って見ている人、諦めている人、それでも自分で楽しんでいる人にこそ、降りてくるものではないだろうか?

ただ、今作の主人公の瞳は内面が高校生のまま成長していないため、成熟した男性とはとても思えず、それが瑕疵になっているように思える。
もう少し、野暮な、男性性が彼から立ち上っていれば、男性読者の共感を得られやすいだろうが、そういう意味では、ある種少年漫画のメンタルであり、会社帰り、という『シャル・ウィ・ダンス』的な悲哀と煌めきが産まれにくいのではないかと思われる。
然し、これもまたドラマ化しやすい題材なので、映像化しそうだなぁと思った次第。

まだ単行本1冊目なので、手に取りやすいと思われるので、バレエ漫画好きに是非。




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