見出し画像

書店パトロール35 本阿弥校閲

書店に行く楽しみは新刊との出会いである。
とはいえ、こう、書店の顔であるメイン所の平積みは興味がない。
ああいうのはベストセラーと賞絡み、という、私には全く食指の動かないものの坩堝であり、まぁ、チラと見るだけだ。
精々文庫の新刊台を見るくらいだ。私は、そもそも本が嫌いなのだ。

で、巨大なスティーブン・キングの本にまずは興味津々。

その名も、『スティーブン・キング大全』。そのまんまである。

なんと5,500円もする。ホラーの帝王であるスティーブン・キングを余す所なく網羅した本のようで、まぁデカい。カラーで写真もいっぱいだ。
私がスティーブン・キングで1番好きなのは、『トム・ゴードンに恋した少女』。

さて、私は様々な本を手に取りながら、国書刊行会から発売されていた美しい函入りの本を手に取る。

マルセル・シュオッブの名作を12人の訳者が訳したというアンソロジー。
なんとも言えない豊穣のひとときを与えてくれること請け合いの御仁たち。
種村季弘に日夏耿之介、それから鈴木信太郎!
私はこの本をよっぽど買おうかと思い、暫く逡巡した。まぁ、時間にして1秒足らずだとは思うが、然し、時が圧縮されたのだ。

然し、値段を見て棚に差し戻す。4,620円。うーん、アルケオダイノス。

こういう、まだ冒険を始めたばかりのプレイヤー瞬殺の値段が多すぎるのだ……。私はそもそも貧乏であり、こんな高価なものは買えない。
そういえば、ついに『FF7リバース』が明後日発売される。今日は野村哲也のインタビューを読みながら、私は勝手に脳内でリバースを再生していた。
買おうかな、リバース。
そんな風に思いながら、ふとPS5の値段を調べると私はまたたく間に目が破壊されて、ムスカばりに室内を彷徨う。

この、2014年版ロボコップめいたデザインのPS5はやはり高嶺の花である。
これにリバースをつけると75,000円くらいになるため、とてもではないが今の私には手が出せない。

そんな私にも欲しい本が1冊。

これはもう1年くらい前に出た本だが、田中小実昌のエッセイである。
私はエッセイが好きである。文学は好きではない。文学が好きな人間にろくな人間はいない。まぁ、人間というものは例外なくロクデナシである。

エッセイ、特にこう、古書店とかでチマチマ均一本を買ったり、ミニシアターで映画を観たり、とかそういう日々の生活のエッセイ、というのは、読んでいて楽しい。私の代わりに、作者が楽しんでくれている。だから、私が読まずとも、観ずとも、飲まずとも、買わずとも、食べずとも、いいわけである。

然し、そんなちくま文庫に良さげな新刊が。

岡崎武志の古本大全である。古本にまつわる、古書店にまつわるエッセイが詰め込まれた本だ。これまたエッセイ!うーん。欲しいなぁ、でも1,100円は高いなぁ。なんといっても私は貧乏。ちょうど、文芸コーナーに良さげな本がもう1冊あったのだ。

昨年の12月に発売された、出版社の校閲、にまつわる漫画である。
私は出版社漫画が好きだ。思想的にはあまり乗れない『重版出来』も欠かさず購入して読んでいた。
然し、この漫画、校閲、といえば、まぁ、全然違うが、『舟を編む』を思い出す、と、帯は三浦しおん。
文章が好きな人は、言葉が好きで、言葉の意味が好きで、そこに知的好奇心を抱く。noteでわざわざ文章を書く人は、まぁ皆、普通にその傾向があるだろう。私なんかも言葉は好きだ。然し、noteでは大量の誤字脱字、テニヲハの間違いがある。なぜならば、面倒くさいからである!校正とか、大嫌いだ!
今作では、校閲とは何か、をわかりやすく楽しく描いている。作者は神様であるが、神様は時に盲目である。だから世界を作ることが出来るのだが、第三者、客観、というのは絶対的に必要なものであり、やはり言葉の芸術は、1人だけで作られることもあるが、それを届けるときには、数多あまた人の力が必要なのだ。
そう、そうなのである。なので、誤字脱字の多い、意味不明な文章ばかり垂れ流していることに自戒の意味も込めて、この本を購入することにした。私は、いいものにはお金を払う主義なのだ。他の本だっていいものだ。けれども、これを選んだわけで、まぁ、こういう縁が、リアル書店のいいところだな。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?