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おみやげみっつ

おみやげみっつ たこみっつ あしたのぶんも たこみっつ

という歌を聞けば、細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』を思い出すだろう。
いい映画である。細田守監督の作品の中では一番いい映画ではないか?
然し、私にとってはあの歌は、郷愁の歌であり、ある種、芸術的な想念の歌である。

あの独特なメロディーは、私の頭の中に座っていた。時折、耳元に降りてきては囁くのだが、そのたびに私はえも言われぬ幼心を思い出す。
昔から、好きなCMがあったのである。それは、お菓子のCMで、子どもたちが遊んでいる。然し、そのうちの1人が帰らなくてはならなくなり、そうすると、突然彼は白い閃光に包まれて、宇宙船に乗って茜空へと帰っていく…。

何を言っているのかわからないかと思うが、そのようなCMがあったのである。少年が、「さいなら〜。ほな、さいなら〜。」と言っていた。
私は、このCMのことを思い出すたびに、先ほども述べたように、ある種の郷愁が喚び起こされる。そして、このCMはけっこうな間探していたのだが、
少し前にYou Tubeで発見した。便利、というか凄い時代である。

聖護院のひじりのCMだった。

おそらく、1990年前後かと思われるのだが…。確か、『ドラえもん』とかそこら編のVHSテープに入っていた。それで何回も観たのだ。そういえば、全然話は変るのだが、同じビデオかそれに近しいビデオに、『ラディア戦記』というファミコンゲームのCMが入っていた。
これはアニメとゲーム画面を交互に見せていくスタイルのCMだが、私はゲームのCMでは、この珍CMをこよなく愛している。
私はこのゲームをプレイしていないので、完全に妄想でしかないのだが、最後に出てくる騎士は恐らくはダースベイダー的なキャラなのだろう。その声優が、あの『レザボア・ドッグス』でハーヴェイ・カイテルのMr.ホワイトを吹き替えている堀勝之祐さんではないか。その堀さんが声を当てているこの贋ベイダー、おや、改めて見ると結構若いのな…と、まぁ、このCMは最高である。
特に、名セリフ、「破滅ぅ?それはどうかな〜?」は何度聞いても飽きない。

脱線が過ぎたが、この聖護院のひじりのCMは、思い出よりも美しかったので驚いた。
恐らくはセットであろうが、子どもたちが遊ぶシーンの撮影の風格はどうだ。堂々たる映像である。さらに、少年が光に包み込まれるところ……、ここなんかは、時代的にはSFXやVFX全盛、日本の特撮技術を上手く使った美しいシーンだ。
要は、SF(すこし・ふしぎ)である。これはある種、ドラえもん的な、少年の幼心を描いた美しいCMである。それが、日本的な同様のメロディーが通低音として画面に流れると、私は心から哀しいほどの懐かしさを覚える。

それは、これを観ていた幼い頃の自分を思い出すと同時に、私が観たことはないがいつかは経験していたかもしれない(それは、私ではない、他の誰かの記憶かもしれない)永遠の時間が、ここに内包されているからに他ならない。
このCMをここまで絶賛するのは、私しかいないかもしれないが、これはある種の映像文学であるとすら私には思えてならない。
このような作品、永久に、観た人の郷愁を呼び起こす作品……それをこそ私は愛しているし、私がいつか拵えたいと思う、夢幻の作品の理想形である。
それを、このCMを観て改めて思い起こした次第。


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