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【在住者コラム】 ブエノスアイレスに移住して驚いた日本との違い

パラグアイの首都アスンシオンに約4年間住み、南米のことはある程度わかったつもりでいた。それでもアルゼンチンのブエノスアイレスは自分にとってまるで別世界だった。

今回は、すでに南米生活を経験したにもかかわらず、アルゼンチンに移住して感じたカルチャーショックを厳選して5つ紹介したいと思う。ちなみに本来はハイパーインフレがそれに含まれるのだが、前回の記事で既に取り上げているので、今回はインフレ以外のアルゼンチンの特異性を取り上げることにする。


(1) ベソ文化

ベソとはスペイン語でキスの意味。ヨーロッパなどで見られるチークキスのことである。アルゼンチンでは家族や友人、同僚など男女問わず自分から見て相手の左頬に一回キス、直接ではなく頬っぺたを合わせて「チュ」と音を立てる。慣れてしまえば習慣として何も感じなくなるが、最初は男同士のベソは若干の戸惑いが相手に伝わっていたかもしれない。髭の濃い男性とベソする女性は気の毒だと思うくらい。

アルゼンチン人は感情表現に豊かで気軽にハグする機会も多く、フィジカルコンタクトは日本の比ではない。そんな「近すぎる」文化だからこそ、マナーとして香水文化が発達するのかもしれない。

ちなみにパラグアイは男性同士はベソをしないが、女性同士は左右両方の頬にベソをする。国によって違いがあるが、やはりアルゼンチンはイタリア移民の影響が根強いのだろう。

(2) アルゼンチン人の覇気の強さ

スペイン語が独特であることはさることながら、旅行でブエノスアイレスを訪れた時のアルゼンチン人の声の大きさと圧には驚かされた。どこかイタリア語のような抑揚のあるイントネーションで、会話はかぶせるようにして主張し合う。バスや地下鉄、そして道端でも大声で電話したり会話したりしてもお構いなし。

覇気の強さの最たる例はテレビでのサッカー番組のディベート。それぞれの意見や主張が強いため、まるで口論を見せられているかのようになる。まるで仕切ってる感グランプリ状態だ。

このように日本とはまるで正反対なコミュニケーションの取り方に当初は面食らってしまったが、最近は自分が話しているときに相手がかぶせてきたら、負けじと自分の言いたいことを最後まで言うようになってきた今日この頃(笑)。

(3) 公共交通機関の安さと、アップル製品の高さ

ブエノスアイレスに引っ越した2022年、バスや地下鉄に当時20ペソ(当時のブルーレートで約12円)程度で乗り、安すぎて逆に心配になった。それはつまり貧困地区の住民も乗れることを意味し、路線によっては治安の悪い雰囲気が漂うことも。

激安な公共交通機関とは対照的に、新品のiPhone 13が当時58万ペソ(当時のブルーレートで約30万円)で売られていたのにはびっくり仰天した。実はアルゼンチンは海外製品に高額な関税を課す国だったのだ!通称パイス税(Impuesto PAIS)と呼ばれる「社会的包摂の促進と資金調達のための外貨購入に係る税」は、2019年のアルベルト・フェルナンデス大統領政権にできた法律のようだ。

そのためアルゼンチン人でiPhoneを持っている人は少なく(そもそもアップルストアが無い)、持っている人はお金持ちかはまたはチリやウルグアイなど隣国に行った際に購入して個人用に持ち込んでいるというわけ。国外に行くたびにiPhoneを買ってきて資産のように扱う人たちもいるほど。中古でも高額で取引できることを知っているからだ。

(4) 喫煙率とタトゥー率の高さ

道端での喫煙や歩きタバコは、最後のポイ捨ても込みでもはや見慣れた光景。タバコの煙がだめな筆者にとってはストレスの溜まる環境だ。また仕事中の喫煙や、レストランの外のテラス席での喫煙も許容される傾向がある。

そして日本ではお目にかからないタトゥーを入れている人の割合にはさらに驚かされた。まさにサッカーのアルゼンチン代表の選手たちのよう。男性だけでなく若い女性たちの間でもタトゥーはファッションの一部になっている。若気の至りで後から後悔しないのだろかと思うこともしばしば。

(5) 遅い夕食

もちろん人にもよるが、一般的にアルゼンチンの夕食は遅く、夜10時や11時に夕食を摂る。レストランは夜8時から開店することもざらなので、旅行で来られる際は時間帯に注意していただきたい。たいてい開店と同時に入ってもガラガラで、10時くらいからようやく混み始めることもしばしば。夜中の12時をまわってもレストランが家族連れで満席だったりするのには驚かされる。

これは「Merienda」(メリエンダ)といういわばティータイムの遅さも影響しているのだと思う。例えば一日中営業しているレストランの前を6時ごろに通ると、ケーキやコーヒーを楽しむ人たちを見かける。日本は「3時のおやつ」というが、メリエンダは通常5時または6時頃なのだ。そんな時間帯に甘いものを食べたらそれは夜が遅くなるに決まっている(笑)。

まとめ

今回は5つのみ取り上げたが、他にもまたまだたくさんあるのが現実。ヨーロッパのような街並みや美味しい食事など表面的な部分だけでなく、人々の暮らしや文化などを知っていくことは移住の醍醐味だ。日本から一番遠い国のひとつアルゼンチンは、距離だけでなく考え方や文化も日本からはかけ離れている。

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