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【第7話】網膜剥離闘病記 ~網膜剥離になりやすい人の特徴。手術は滅茶苦茶痛い!?~


このままずっと続くような気がした手術も終盤を迎える。

長く続いた手術もようやく終わりを告げる。

 眼球の筋肉引っ張り地獄がやっと終り、そこからはあまり痛みを伴う工程はなくなり、山場は越えたのだろうと感じたが、寝ているだけの僕もその時点で体力をだいぶ使い果たしていて、精神的には手術時間的にも作業工程的にももうどうにでもしてくれと思っていた。
 手術室内の雰囲気が落ち着いてきて、医師たちの会話や作業内容からも終盤を迎えているのがわかった。おそらく手術の序盤で切開した結膜を縫い合わせているのだろうが、麻酔が切れてきたのか眼球にチクチクと痛みを感じる。眼球の筋肉を引っ張る痛みを経験した直後ということもあり、もうこの段階では眼球を縫う際の痛みなどヘッチャラになっていたのでS先生にも何も言わなかったが、後に僕は眼球(正確には結膜)を縫ったのかと改めて振り返るとさすがに吐き気がした。
 感覚的に手術の時間が長くて、もう永遠に終わらないんじゃないかと思っていたが、S先生が「手術終わりましたよ。とても“きれい”に処置できました」と言って手術が終了した。何をもって“きれい”なのかは全く分からなかったが、とりあえず終わってほっとした。目にガーゼをあて、その上にアルミの眼帯をして乗って来た車椅子に再度乗せられて手術室を出た。手術前にも入った前室で病棟勤務の看護師が迎えに来るのを待つ間に、傍にいた看護師さんに「今何時ですか?」と聞くと、「19時ですよ」と教えてくれた。
 1時間半の予定が3時間手術室に入っていた。手術中に何らかのミスがあったとか、病状が予想以上に悪かった等の悪い想像をしてしまうが、手術直後やその後の診察の際も怖くて聞くことができなかった。

手術の後は病室で痛みとの闘いが始まる。

 来た時と同じように車椅子で病室へ戻り、背もたれを起こした状態のベッドに座ってふと髪の毛を触ると濡れていて、濡れた手を見ると血がベッタリとついていた。正確には血の混じった生理食塩水だったのだと思うが、右側頭部の髪の毛がビショビショになってしまっていたので、まだそこにいた看護師さんにそれを伝えると、今日はお風呂に入れないので蒸しタオルを持ってきてくれて、それで髪を拭いていると看護師さんに「麻酔が切れると痛むかもしれませんので、その時は痛み止めを出しますので遠慮なくナースコールを押してください」と言われ、わかりましたと返事をしてそのあとは疲れて寝てしまった。
 どのくらい寝ていただろうか、強烈な目の痛みで目が覚めた。ズキンズキンと痛む頭痛を右目に一極集中させ、更に痛みレベルのツマミをMAXまでひねったような痛みだ。時計を見たら22時過ぎで、病室も消灯されてつけっぱなしの僕のベッドの手元灯だけが灯っていた。眼帯をしていない左目だけでもその手元灯が眩しく感じ、右目の激痛と相まって左目を開けているのも苦痛に感じた。僕の心拍数と同じbpmで右目の痛みが続く。看護師さんの言葉を思い出し、枕元のナースコールボタンを押すとすぐに看護師さんが鎮痛剤のカロナールもって来てくれて、それを飲んで薬が効くまで痛みと戦った。
 鎮痛剤が効いてきて、「激痛の小」と表現すればいいのか、まだ激痛の括りではあるけれど少しレベルの下がった痛みとなった。ふと携帯電話を見ると、手術が終わったことを友人に知らせるメッセージを送る途中の状態で止まっていたが、続きを書く気力がなかったため、まだ書きかけのその文章に「とにかく痛い」と書き加えて送信ボタンを押し画面を閉じた。スマホの画面のバックライトを見るのもつらい状態だった。そういえば昼間に院内のコンビニで夕食用に買ったサンドイッチとおにぎりがあることを思い出したが、食欲など全くなかった。そして目の痛みのせいなのか、鼻水が止まらない。健常なはずの左目を開けているのもつらいので目を閉じるとそのまま気絶するように寝てしまい、朝を迎えた。

第8話へつづく

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