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30年越しの思い出を書く手紙

昨日は実家に顔を出していた
両親とおしゃべりしながら、ご飯を食べていたら、弟からLINEが。
「結婚式で読む両親からの手紙を書いてほしい」という依頼。
それを見た瞬間、両親ともに「なに書けばいいん?なんも覚えてない。なにもない」と匙を投げた状態。
いや、一応息子を育てたのだから、何かしらエピソードはあるだろうと隣にいて思ったが、父も母もなかなか0から1を作り上げるのは難しいらしい。
息子の滅多にない頼みごとをぐらい叶えてやれよと思い、さすがに弟が可哀そうになってきたので、私が弟のエピソード出しをすることにした。

とにかく弟は父を信頼していなかった。
幼稚園の頃、よく父は弟をからかって遊んでいた。
からかうというよりは面白がって弟の「これってなーに?」という問いに嘘の事実を教えていた。
弟はそれがものすごく嫌で、父が「これはこうなんやでー!!」と知識を披露したときなど、私と母に「それって本当なん?」と絶対に確認していた。
幼稚園ぐらいのときって「お父さーん!!」とかわいい盛りではないか。
そのときから弟が父を見る目は冷たかった。
なんていうか本当にゴミを見るような目で父を見ていたことを私は覚えている。
なので私が「お父さんは弟に全く信頼されてなかったなぁ…」と言ったら父が「そうなん!?」と驚いていた。
父も思い返してみて、自宅からスーパーまでの10分ぐらいの道のりを二人で移動していたとき、弟が「お父さん、この道は合っているの?」と何回も確認してきたらしい。
なんでこんな間違える要素のない道でそんなに確認してくるのか不思議だったらしいが、言われてみれば信頼されてないからこそ、確認をされていたことに今回やっと気づいたみたいだ。
なんていうか父が約30年越しに親子関係のゆがみを自覚できたみたい。
当時は父も、どう子どもと接すればいいのか分からなかったのだろう。
だが弟の立場から「この大人、信頼できねぇ…」と思わせてしまったことは父の責任な気がする。
一応真っ当には育ったので、子育ての結果としては良かったと思うが、子どもの頃の「親を信頼できない」という絶望感は怖かったと思う。

私から見た父と弟の関係性というのはそんな感じ。
弟は子どもの頃から周りと比べても抜きんでて頭が良かったので、父が弟を叱ると正論と理屈で反論されていた。
ある時期から父も全く怒らなくなった。
父も父でプライドがあっただろう。
それを見て私は頭の良い子どもをもつと親も大変だなぁと思った。

母と弟は仲は悪くなく、良好な関係を築けていたと思う。
私も弟とはよくケンカをしたが、仲は良かった。
私のシルバニアファミリーの遊びとかによく付き合ってくれた。
姉と弟の上下関係はしっかりしていたので、基本的に弟は私には逆らわなかった。
父には正論で反抗していたが、私にはそういうことは全くなかった。
私の理不尽な怒りも受け入れていた。
今思えば申し訳ないことをしたと思う。

そんな感じで弟に関するエピソードを何個か喋ってみた。
ゲームの攻略本をボロボロになるぐらい読み込み、内容を暗記し、攻略本を読むより、弟に聞いたほうが早かった話。
私が友達から借りたゲームをやりたがり、最終的には弟のほうがやりこんでいて上手くなっていた話。
スーパーボールすくいにただならぬ情熱をそそぎ、お祭りでやらせると20分ぐらいスーパーボールをすくってた話。
父もそのエピソードを聞きながら「そんなこともあったなぁ」とメモしていたので、そこから膨らまして手紙は書けるだろう。

私も両親からの手紙が欲しいなぁと思ってしまった。
だが、もし私が結婚して「手紙を書いて」と頼んでも「覚えてない」と言われるだけな気がする。
エピソード出しする人が必要だ。
ちょっと弟が羨ましいなぁと思いながら、弟に関するエピソードを話す私であった。

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