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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #22 【20日目】カストロへリス〜フロミスタ、県境も言語の壁も越えていく
こんにちは、ナガイです。今日はカストロへリスからフロミスタ(Frómista)へ向かいます。
前回の記事はこちら。
天気予報(カストロへリス) 晴れ 最高気温24℃ 最低気温4℃
6時半起床。全快ではないが喉の痛みが少し引いている気がする。何より肉体的・精神的にダメージが大きい倦怠感が大分治まっている。
今日から3日間は最高気温が20度を超える予報だ。早めに出発したいところだが、ここで忘れ物などをしては元も子もないので焦らず準備する。昨日取り込み忘れていた洗濯物も回収。朝の気温は一桁台のため服装選びが難しいが、暑くなるのを見越して半袖Tシャツに薄手のジャケットを着ることにする。
7時出発。外は明るくなり始めた頃だ。かなり寒い。
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教会の外壁に大きな黄色の矢印が描かれていて一瞬何事かと驚いたが、よく見るとプロジェクターで投影されているものだった。
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今日は朝食を食べる前に少し歩くことにする。やはり澄んだ朝の空気を味わいながら歩くのは気持ちがいい。
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歩いていると前に山が見えてくる。どうやらこれを越えなければならないようだ。上の方には豆粒のように小さな巡礼者の姿がちらほら見える。
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山道を登って振り返ると、カストロへリスの丘の向こうから太陽が登ってくる。なんてきれいなのだろう。今まで見てきた中でも有数の美しい朝日だ。
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山道を登り切ると上には草原が広がっていた。道に映る自分の影が長い。
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そして今度は下り坂に。眼下には遠くの方が霞んで見えるほど平らな土地が広がっている。坂を下ってからしばらくは比較的なだらかな道を進む。
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9時頃に巡礼者のための休憩所になっている建物にたどり着く。
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どうやらここの主らしいおじいさんに建物の裏手にあるトイレの場所を教えてもらい、用を済ませた。ついでに少し座って休憩し、朝食に常備していたナッツとドライフルーツを食べる。日が出てきたので帽子とサングラスを着用してから再び出発。
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すぐに橋が見えてくる。どうやらここがブルゴス県とパレンシア県の境のようだ。
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橋を渡り切ってパレンシア県に入ると、なんとなく雰囲気が変わった気がする。ここからはしばらく涼しい木陰の中を歩く。
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9時半過ぎにイテロ・デ・ラ・ベガ(Itero de la Vega)の村を通過。
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教会の鐘が鳴る音が聞こえる。音の方向へ行ってみると教会があった。なんだか親しみやすさを感じる外観だ。
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鐘は村にいる間ずっと鳴り続けていて、ちょうど村を抜けたところで鳴り止んだ。たまたまだろうが、まるで自分のために鳴ってくれていたようだった。
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10時頃からグングンと気温が上がっていくのを感じる。
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11時半前にボアディージャ・デル・カミーノ(Boadilla del Camino)の村へ到着。
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暑くなる前にフロミスタへ向かいたい気持ちもあったが、病み上がりでヘトヘトになってしまったためバルで休憩することにした。バックパックを下ろして床に置こうとしたところ、横に差していた1.5Lの水のペットボトルのキャップが無くなっていることに気づく。恐らく圧力がかかって吹っ飛んでしまったのだろう。残りも少なく気をつけていればこぼれる恐れもなさそうなので、フロミスタで新しい水を入手するまで気をつけて持ち運ぼう。
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ハムとチーズのオムレツのボカディージョとコーラを注文。作り置きではなく注文を受けてから作っているようでオムレツが熱々だ。6ユーロ。
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12時過ぎにバルを出発。外はかなり日差しが強いので日焼け止めを塗ってから歩き始める。
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ここにきて見かけるようになった、この葉っぱが黄色やオレンジ色がかった木はなんだろう。見ていると心が落ち着く淡い色合いが好みだ。
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しばらくカスティージャ運河沿いの道を歩く。川面を見ているだけで涼やかな気分になるが、実際は全身にじんわりと汗をかいているのが分かる。
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向こう側から遊覧船がやってくる。ガイドらしき音声が流れる船内には二組ほどの乗客がいる。重い荷物を背負って歩いている今の自分にはとても贅沢なレジャーのように見える。
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13時過ぎに今日の目的地フロミスタの町へ到着。町の入口には水門がある。
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フロミスタにはアルベルゲがいくつかあり、レストランやスーパーなどもあるので宿泊するのには適した町のようだ。
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アルベルゲは13時半オープンとのことで、先に並んでいた2人に続いて待つ。
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オープンして中に入ると、ホストの男性に今日は予約で一杯だと告げられる。仕方なく二つ目のアルベルゲに行くと今日は休みとの張り紙がある。この二つのどちらかには泊まれるだろうと思っていたので、その場で近くにある他のアルベルゲを探して行ったところ、そこも予約で一杯とのことだった。アルベルゲが一つ閉まっていることもあり、残りのアルベルゲに予約が集中したのかもしれない。今後は状況に応じて事前に予約することも考えよう。結局今日も公営のアルベルゲに行くことにした。アルベルゲの隣のバルのテラスには何人か顔見知りが座っており、みんなアルベルゲの受付開始を待っているようだった。
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14時にアルベルゲがオープン。みんなでぞろぞろと中へ入っていく。順番が近づいてきたのでパスポートやクレデンシャルを準備しようと前に屈んだところ、脇に挟んでいたペットボトルから勢いよく水がこぼれて床にぶちまけてしまった。キャップが無くなっているのをすっかり忘れていた。幸い周りの人たちに水はかからず、持っていたクレデンシャルが少し濡れてしまった程度で済んだが、ひたすら謝っているとアルベルゲの職員の女性がモップを持ってきてササッと拭いてくれた。女性は「こんなの何でもないわよ」とでも言うように嫌な顔一つせずに掃除してくれて、「ありがとう」とお礼を言うと笑顔で「どういたしまして」と答えてくれた。後ろに並んでいた男性もニコニコ笑っていてホッとした。気を取り直して受付を済ませる。宿泊代は13ユーロ。
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シャワーを済ませ、庭で洗濯をしている間にウエストロンドンから来た60代後半のデービッドと話をした。彼とはこれまでも何度か接点があり、一度自分が道を間違えた時に教えてくれたり、サンソルのアルベルゲでも同じ部屋で泊まったりしたことを覚えている。彼の英語は自分にはやや聞き取りづらいため、なんとなく会話をするのを避けていたのだが、それとは関係なく彼には好印象を持っていた。自分にもよく声を掛けてくれるので、今回は頑張って話してみることにしたのだが、話してみるとやはり彼の英語は聞き取りづらく、ほとんど理解できなかった。その場は仕方なく適当な相槌を打って乗り切った。
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Wi-Fiのパスワードを確認しに一階の受付ロビーに行くと、ちょうどペレグリンがアルベルゲに到着して受付をしようとしているところだった。彼に先ほどここで水をぶちまけてしまったことを話すと笑ってくれた。ここでは失敗談がいい話のネタになる。
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部屋に戻ると両腕にタトゥーの入った韓国人の少女が「タダイマ」と日本語で話しかけてきた。彼女の名前はパダ。パダは韓国語で海を意味するそうだ。彼女は母親と二人でカミーノに来ており、同じアルベルゲに泊まるのは3回目だ。日本語を少し勉強しているそうで、会うたびに新しい日本語を試してくる。「今『ただいま』は君じゃなくて僕が言うセリフだよ」と少しずつ正しい日本語を教えてあげる。彼女は飲み込みが早く、韓国語版の東野圭吾や奥田英朗の本を読んだことがあるそうで、日本に興味があるからこそ吸収も早いのだろう。
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お昼に行くには中途半端な時間になってしまったので、何日か食べる機会を逸して持ち歩いていたポテトチップスと、アルベルゲの自動販売機で買ったペットボトルのコーラを昼食代わりにする。2ユーロ。
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庭で食べているとデービッドがやってきて近くに座る。これはどう考えても会話をするシチュエーションだろう。そこで思い切って、「実はあなたの英語が僕には分かりづらいんだ。だから時々変な返事や答えをしてしまうかもしれないけど、その時はごめんなさい」と正直に伝えた。すると彼は自分が何とか理解できるレベルの英語で話してくれて、彼が今までどういった国を訪れたことがあるかや、日本については北海道や鎌倉のことを知っているといったことを教えてくれた。その会話がとても楽しかったので、これからはきちんと分からない時は分からないと言うことにしようと思った。どうせ会話するなら、やっぱり理解できた方が楽しいから。
部屋に戻り、ベッドの上でゆっくり過ごしてから18時半過ぎに町へ出る。公営のアルベルゲの目の前にはスペイン・ロマネスク建築の代表作と言われているサン・マルティン教会がある。
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少し歩いたところにはサン・ペドロ教会があり、個人的にはこちらの方がダイナミックで見応えがあるので好みだ。特に正面入口の造りが特徴的で目を引く。
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スーパーでのど飴、ミックスナッツ&ドライフルーツ、水を購入。3.19ユーロ。
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19時過ぎに目を付けていたレストランへ行く。
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店内は多くの巡礼者で賑わっており満席だったが、奥の方にデービッドの姿が見えた。ちょうど7人掛けのテーブルに6人で座っていたので、思い切って同席させてもらえないか聞いてみた。するとデービッド以外の5人は初対面にも関わらず歓迎してくれて、7人で夕食を食べることになった。ハンバーガーとコーラを注文。10ユーロ。
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自分以外は全員ネイティブスピーカーで、さすがに無理を言って同席させてもらった状況で自分に合わせてくれと言うことはできなかったため、正直会話にはほとんどついていけなかった。それでも輪に入れてもらえるのは嬉しかったし、この歳になって悔しいと思える経験をできるのもありがたいと思った。
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夕食後、全員に同席させてくれたことのお礼を伝え、アルベルゲへ戻る。23時就寝。
歩いた距離
今日24.6km 合計352.9km 残り427.5km
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