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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #23 【21日目】フロミスタ〜巡礼前半最後の町カリオン・デ・ロス・コンデスへ

こんにちは、ナガイです。今日はフロミスタからカリオン・デ・ロス・コンデス (Carrión de los Condes)へ向かいます。
前回の記事はこちら。

天気予報(カリオン・デ・ロス・コンデス) 曇り時々晴れ 最高気温24℃ 最低気温5℃

6時半起床。体調は8割方まで回復した感じだ。同じ部屋の人たちは昨日自分より先にフロミスタに着いていた人たちが中心なだけあり、みんな出発するのが早い。早々に出ていくデービッド達を見送りながら支度を整える。7時出発。

東の空はすでにオレンジ色に染まり始めている。

町を抜けて高速道路の上を通る橋を歩いていると、下を走るトラックが橋の上に巡礼者がいることに気付いたのか、何台か短いクラクションを鳴らしてエールを送ってくれた。

それにしても今日は朝焼けが一段ときれいだ。すれ違う他の巡礼者とも「すごくきれいだね」と感動を分かち合った。

7時半過ぎにポブラシオン・デ・カンポス(Población de Campos)の村を通過。どの風景を切り取っても絵になる村だ。

村の出口にかかっている橋で写真を撮っていると、どこかで休憩していたらしいデービッドと昨日のディナーで同席したカナダのピーターが後ろからやってきた。「やあ、デービッド、ピーター!」と挨拶を交わす。昨日の他人が今日の友達になるのがカミーノだ。

村を抜けて歩いていると、後ろから速いスピードで近づいてくる足音が聞こえる。追い抜かれざまに「ブエンカミーノ」と言って横を見ると、明らかに巡礼者ではないジーンズ姿のおじさんで、間違えて地元の人に対して巡礼者への挨拶をしてしまった。おじさんもよくあることなのか平然とした様子で「やあ」と応じてくれたが、ちょっぴり恥ずかしかった。

8時半にレベンガ・デ・カンポス(Revenga de Campos)の村を通過。この村の教会は上品さがあり、つい見とれてしまう美しい外観だ。

巡礼をしていると自分のことがよく分かる。最低限のルールや大体の標準的なスケジュールなどはあるが、基本的にどう巡礼するかは各巡礼者が自由に決めていい。同じ街に3日間留まる人もいれば、バスやタクシー、荷物のトランスポートサービスを遠慮なく利用する人もいる。自分はマイルールとしてそれらは使わないことにしようと決めているが、それも自分で勝手に決めていることであり、それらのサービスを利用する人たちが悪いという訳ではない。その人たちがそれでいいと思うのであれば、それが彼らにとっての立派な巡礼だ。そうしてある程度自由に進め方を決められるからこそ、各自にとって難しすぎず、易しすぎない巡礼をすることが可能になる。そうした柔軟さがあるのもスペイン巡礼の魅力だと思う。

9時にビジャルメンテロ・デ・カンポス(Villarmentero de Campos)の村を通過。

村の出口に休憩できる場所があったので朝食を取ることにする。恐らく昨日は朝食の休憩後にペットボトルのキャップをしっかり締めなかったので外れてしまったのだろう。念入りにキャップを締め、帽子とサングラスを身につけて再び出発する。

あとスペイン巡礼では自分の限界や弱点を知ることができる。ただし、それは決してマイナスなことではなく、それらを克服しようとするのか、あるいはそのまま受け入れるのか、自分の弱さを認めた上で、次にそれをどうするかを考えるためのきっかけになるのが、この巡礼だと思う。

10時にビジャルカサル・デ・シルガ(Villalcázar de Sirga)の村へ到着。村の広場にはテーブルに座る巡礼者の銅像があった。

この村はスーパーやレストランなどもあるようで、宿泊場所としてもよさそうだ。今日の目的地はすぐそこなのでバルで再び休憩する。チキンとフライドポテト、コーラのセットを注文。7ユーロ。バルの主人がスペイン語で「作るのに10分かかるよ」と言ってきて、それだけのことなのだが何を言われているか分からなかったので焦っていると、すぐ近くにいた巡礼者の男性が通訳の手助けをしてくれた。

運ばれてきた料理を食べていると、昨日のディナーの席にいたドイツのオスカルとカナダのジュリアナが入ってきた。改めて昨日のお礼を言い、ディナーの時にオスカルがワインの瓶でふざけて遊んでいる姿を写したお気に入りの写真があったので見せると、二人とも笑って喜んでくれた。言葉では十分コミュニケーションできないかもしれないけれど、二人は本当にいい人達なのだろうと分かる。

二人に別れを告げて再び歩き始める。今日は終始平坦な道のりだったが、一昨日30km歩いた時から少し出始めていた右足の膝の違和感が大きくなってきた。

12時前に今日の目的地カリオン・デ・ロス・コンデス (Carrión de los Condes)へ到着。

アルベルゲへ行くと、すでにチェックインが始まっているようだったので中に入る。

受付には先に到着していたインドのシヴがいた。彼も昨日のディナーの席にいた一人だ。受付の女性が早口のスペイン語で次々と説明するため、ほとんど言っている内容が理解できなかったが、シヴはスペイン語がある程度話せるようで、後で彼女が何を言っていたかを教えてくれた。彼は日本にも北海道への交換留学生として来たことがあるそうで、きっと優秀な青年なのだろう。チェックインの時に受付の女性からメダイユをもらったので、これは大事に日本へ持って帰ろう。

シャワーを済ませて部屋で洗濯の準備をしていると、今しがた到着したらしいペレグリンが部屋に入ってきた。彼に「いよいよ半分まで来たね」と言われて初めて、そうか、ここが前半の最後の町なのか、と気がつく。彼に「うん、残り半分の準備はできているよ」と答えた。

洗濯をして部屋に戻ろうとすると、ちょうど日本人巡礼者のMさんが中から出てきた。同じアルベルゲの別の部屋に泊まっているようだ。Mさんはすでに先へ行ってしまっていたと思っていたので思いがけない再会だった。

Mさんがランチに誘ってくれたので一緒に近くのバルへ行く。パイとカフェコンレチェを注文。3.10ユーロ。Mさんに「今日あまり歩いていない割に辛くなかったですか?」と問われ、まさに自分が感じていたことをズバリ言い当てられたので驚く。どうやら今歩いているメセタの大地は“精神の道”と呼ばれるそうだ。その前までの道を“肉体の道”といい、ピレネーやペルドン峠といった難所があり肉体的に試されるものの、風光明媚な場所が多く楽しみながら歩けるため精神的にはそれほど辛くない。一方で、今歩いているメセタの大地は平坦で肉体的には歩きやすいはずだが、風景の変化が乏しいこともあり精神的に辛く感じやすいのだそうだ。確かにここ数日は体調不良もあったが、変わり映えのない景色の中を延々と歩くことも辛く感じる要因となっていたことに気がつく。

バルを出てMさんとスーパーへ行き、夕食用にトルティージャ、パン、ヨーグルト、オレンジと、個人的にオレンジジュースを購入。会計を割り勘して4ユーロ。確かにこれなら外食するよりずっと安い。せっかくなので巡礼中の食事への出費は惜しまないつもりだが、一度くらいはスーパーで買って食事をする経験もしておきたかったのでちょうどいい機会だ。

今後のプランニングをしていると、明日は最初に次の村まで17km歩かないといけないことが分かる。これは十分に備えをしておいた方がよさそうだ。Mさんから夕食は18時半からにしようと連絡があったので、その前に再び買い物へ行くことにした。せっかくなので別のスーパーへ行ってみる。水とミックスナッツ&ドライフルーツ、夕食用に追加でプチトマトを購入。4.90ユーロ。

アルベルゲに戻り、キッチンでMさんと夕食の準備をする。といってもトルティージャを電子レンジで温めたり、パンを切ったりトマトを水で洗ったりするくらいだ。外にいくつかテーブルが置いてあるので、そのうちの一つに準備した食事を並べてディナーを始める。トルティージャは下手なバルで食べるものよりおいしく、ちゃんとお腹いっぱいになった。これで一食5ユーロ程度ならコスパはいいと思える。

会話の中でMさんに「まだ半分というべきか、もう半分というべきか」という問いを投げかけたところ、「後でもう半分だったって思いますよ」と言われた。Mさんが再びカミーノを歩いているのは、「まだ見ていないものがあるんじゃないか」と思うからだそうだ。実は明日は20〜30kmの距離にほどよい大きさの町がなく、いっそのこと39.5km先のサアグン(Sahagún)行きにチャレンジしてもいいかもしれないと考えていたのだが、Mさんは明日朝ゆっくり出発して17km先のカルサディージャ・デ・ラ・クエサ(Calzadilla de la Cueza)で一泊し、明後日にサアグンへ行く予定だそうだ。Mさんの進み方が一番妥当な気はするが、あとは明日の起床時間と体調を見て決めることにしよう。

食事を終え、後片付けをして部屋に戻る。21時就寝。

歩いた距離
今日19.3km 合計372.2km 残り408.2km

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