はざまの詩たち【その弐】
○天気の神さま
人の頭の中には
天気の神さまがいる
下界に突き落とされたときに
みんな頭を打ってしまうので
忘れている
雨に濡れ絶望を覚えたとおもえば
晴れて虹が見え希望を覚える
曇り空にはなにを
雷鳴にはなにを感じよう
○同窓会の帰りに
のっぺりとした表情が並ぶ車内
同窓会にて
お酒を酌み交わす
ほんの数時間前の過去が消去される
代わりに昔の輝かしい日々が
キラキラと音を立て、甦ってくるのだから
不思議なものだ
すっかりと出来上がった頃には
最終電車に乗り込む
満員電車の先に見える未来は
どんな色をしているのだろう
○神さまの視線
いままでどれだけ善行を積んだだろう
そう言えばこの間
夜中に信号をひとつ無視した
神さまはちゃんと見ているかな
慌ててさっき道を譲った
たまたまだけど
見てくれているかな
○こころの老い
仰向けでいるのにも疲れ
横をむく
腰にほんのすこし痛みが走る
あの日お互いを
傷つけあって泣いた
重力をより感じるようになり
頭におもりがずしりと乗っている
若さとは
心から老いていくのだと感じる
○烏
夕方歩いていた
パラパラと雨の降る中
イヤホンをつけ
心だけ躍らせる
ふとカラスの鳴き声
音楽かと思ったが違う
声は近づいてくる
バサバサバサバサ
耳元に何匹ものカラスが
祈りを捧げるように
ひざまずき
群れが過ぎるのを待つ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?