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短編小説その11「晴々」

 彼女は、活動家だった。

 部活はもちろんの事、クラスの役割や、委員会の仕事も積極的にこなしていた。
 とにかく、生き急ぐように動いていた。

 桜の花びらが、一枚舞い落ちた。

 それがきっかけに、回想から現実の世界に引き戻された。
 桜の絨毯が敷き詰められた学校へと続く坂道を、新一年生達が列をなして歩いていく。
 春。新しい季節に、皆心を躍らせているようだった。見ているほうが嬉しくなるような、そんな表情を浮かべている。
 一歩踏み出す。ぱき、と落ちていた枝を踏み折った音が聞こえた。その音が、妙にもの悲しく胸に響いた。
 それを越えて、僕は歩き出した。

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