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乳がん専門医です。たくさんの乳がん患者さんを治療してきました。乳がん患者さんに役立つ記…

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乳がん専門医です。たくさんの乳がん患者さんを治療してきました。乳がん患者さんに役立つ記事を書いていきます。

最近の記事

トリプルネガティブ乳癌だけでなく、ルミナールタイプでも周術期免疫治療(ペムブロリズマブ)の開発が進む

ホルモン受容体(HR)陰性、HER2陰性のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)の治療は、切除可能例では手術と術後放射線療法、リスクが高いときは手術と術後化学療法±放射線療法、また最近では術前化学療法を行い、手術ののち残存病変に対して術後療法としてカペシタビン、BRCA病的バリアントがある場合はPARP阻害薬オラパリブの投与が行われる。2022年9月からは、ペムブロリズマブの周術期治療が始まっている。周術期免疫治療(ペムブロリズマブ)についてまとめました。  ペムブロリズマブの

    • 乳癌術後の寡分割照射(3週間)によるリンパ浮腫リスクは通常照射(5週間)に非劣性を示す【ESMO 2024】

      早期乳癌の術後放射線療法として、中等度寡分割照射(40Gy/15分割、3週間)は通常照射(50Gy/25分割、5週間)に対し、腕のリンパ浮腫リスクに関して非劣性を示すことが、非盲検多施設無作為化フェーズ3試験のHypoG-01試験の5年の結果で明らかになった。9月13日から17日にスペイン・バルセロナで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で、フランスInstitut Gustave RoussyのSofia Rivera氏らが発表した。   術後の放射線療法

      • 梅宮アンナさん乳癌術前化学療法中ニューモシスチス肺炎で緊急入院

        ステージ3Aの乳がん闘病中であること明かしたタレントの梅宮アンナさん(52)が2日までにインスタグラムを更新。肺炎で入院していると明かしました。 「まさかの入院でした 肺炎にかかっていたとは」「24から30日まで、生きた心地がしなかったです。。高熱、食欲不振、不安ほとんど食べたいと思うモノもなくって、、心がポキって折れる音がした感じだった」「気管支鏡検査をして、組織を取り 正式な病名が昨日わかり」と告白し「当分入院になるでしょう」記述した。さらに「検査結果は肺炎でも、種類が

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        • HER2陽性の既治療の転移を有する乳癌の脳転移へのエンハーツの有効性が明確に【ESMO 2024】

          HER2陽性の既治療の転移を有する乳癌の安定/活動性の脳転移を有する患者に対して、エンハーツは良好で持続的な中枢系の抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。脳転移を有する患者を多く含んだ多施設オープンラベルフェーズ3b/4試験であるDESTINYBreast-12試験の主結果から示された。9月13日から17日にスペイン・バルセロナで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で米Dana-Farber Cancer InstituteのNancy Lin氏が発表した。

        トリプルネガティブ乳癌だけでなく、ルミナールタイプでも周術期免疫治療(ペムブロリズマブ)の開発が進む

        • 乳癌術後の寡分割照射(3週間)によるリンパ浮腫リスクは通常照射(5週間)に非劣性を示す【ESMO 2024】

        • 梅宮アンナさん乳癌術前化学療法中ニューモシスチス肺炎で緊急入院

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        • HER2陽性の既治療の転移を有する乳癌の脳転移へのエンハーツの有効性が明確に【ESMO 2024】

          HER2陽性乳がんとHER2低発現乳がんで異なるエンハーツの位置づけ 【進行再発乳癌】

          エンハーツは基本的にはHER2陽性乳癌の薬です。それはハーセプチンに抗がん剤がくっついている構造からみても明らかです。HER2低発現乳癌でも効果があったということは少しでもHER2発現を認める細胞があれば、それをターゲットにこの薬剤が到達して、周りの細胞も攻撃するバイスタンダード効果を発揮する可能性があることを示唆していると思います。  しかし、何度も言っているようにホルモン陽性乳癌はホルモン治療が最も効果的です。手を変え品を変えホルモン治療継続が効果的です。どうしても効果が

          HER2陽性乳がんとHER2低発現乳がんで異なるエンハーツの位置づけ 【進行再発乳癌】

          既治療のHR陽性HER2低発現または陰性の進行乳癌に対する抗TROP2抗体薬物複合体Dato-DXdは全生存期間の有意な延長を認めず

          第一三共と英AstraZeneca社は2024/9月23日、内分泌療法と少なくとも1件の全身療法歴のある切除不能または転移を有するホルモン受容体(HR)陽性HER2低発現または陰性(IHC 0、IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)の乳癌に対して、抗TROP2抗体薬物複合体Datopotamab Deruxtecan(Dato-DXd)は、医師が選択した化学療法に比べて有意な全生存期間(OS)の延長を認めなかったと発表した。国際共同フェーズ3試験であるTROPION-Br

          既治療のHR陽性HER2低発現または陰性の進行乳癌に対する抗TROP2抗体薬物複合体Dato-DXdは全生存期間の有意な延長を認めず

          早期の高リスクトリプルネガティブ乳癌で術前化学療法にペムブロリズマブを追加し術後にペムブロリズマブ単剤追加は死亡リスクを34%減少

          早期の高リスクトリプルネガティブ乳癌(TNBC)に対し、プラチナ製剤を含む術前化学療法にペムブロリズマブを追加し、術後にペムブロリズマブ単剤を投与することは、術前化学療法のみの場合よりも死亡のリスクを34%減少できることが明らかとなった。フェーズ3試験KEYNOTE-522試験の重要な副次評価項目である全生存期間(OS)の解析の結果示された。  2024/9月13日から17日にスペイン・バルセロナで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で、英Barts Can

          早期の高リスクトリプルネガティブ乳癌で術前化学療法にペムブロリズマブを追加し術後にペムブロリズマブ単剤追加は死亡リスクを34%減少

          オンコタイプDX(Oncotype DX)について セカンドオピニオン 

          オンコタイプDXについて先日以下のセカンドオピニオン依頼を受けました。 50歳女性。オンコタイプDXを受けるべきかどうかについて相談。浸潤性乳がんのステージⅠで温存手術を受け、(ki67 12%、ホルモンレセプター100%陽性、HER2陰性、腫瘍径1.0センチ、腋窩リンパ節転移無し、リンパ管浸潤無し)と言われました。治療方針としては放射線療法とホルモン療法が決まっておりますが、医師よりオンコタイプDX検査を受けるかどうかの確認がありました。私のような場合、受けた方が良いので

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          オンコタイプDX(Oncotype DX)について セカンドオピニオン 

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          乳がん治療における吐き気の機序と治療

          乳がん治療において使用する薬で吐き気が出ることはよくあります。悪心嘔吐と言います。薬物治療における悪心は急性期(~24時間)と遅発性(24時間~120時間)があります。最近は半減期の長い薬で遅発性にも対応しています。 悪心 嘔吐は嘔吐中枢に刺激が入って起こります。刺激経路は末梢性と中枢性に分かれます。末梢性は抗癌剤が消化管のクロム親和性細胞を刺激してセロトニンを放出し求心性迷走神経の5-+HT3受容体を活性化し脳に伝達します。 中枢性は延髄等にあるNK1受容体にサブスタンス

          乳がん治療における吐き気の機序と治療

          新規乳癌治療薬のターゼナについて

          新規乳癌治療薬のターゼナ(タラゾパリブ)が2024/1月承認されました。この薬剤はPARP(パープ)阻害剤と呼ばれる薬剤の一種です。同様の作用を持つリムパーザ(オラパリブ)という薬があります。BRCA遺伝子変異を有する転移乳癌の薬です。 BRCA遺伝子変異を有する転移乳癌について BRCA1とBRCA2遺伝子は二本鎖DNA切断の修復経路で主要な役割を果たす遺伝子で1、遺伝性乳癌の20%~25%、およびすべての乳癌の5%で遺伝子の変異が認められると報告されています。一般的に、

          新規乳癌治療薬のターゼナについて

          エンハーツをHER2低発現の患者さんに使うときの注意点

          HER2低発現 エンハーツ適応拡大のためのコンパニオン診断 エンハーツ適応拡大のコンパニオン診断は、再発乳癌で化学療法を施行後の患者さんでHER2低発現が確認された患者さんに対してエンハーツが2023年1月から適応拡大しました。この際にHer-2低発現とはHER2が1+、またはHER2が2+かつ遺伝子検査で陰性の患者さんです。このHER2の発現を見る検査はベンタナultraViewパスウェーHER2(4B5)と言う検査法しか認められていません。また、HER2低発現の患者さん

          エンハーツをHER2低発現の患者さんに使うときの注意点

          新規抗癌剤 抗TROP2 ADCのサシツズマブ ゴビテカン Triple negative乳がん新規抗癌剤 「ドラッグラグ」とは

          欧米で新規の薬剤が承認されていても、日本では未だ承認されていないことの現象は「ドラッグラグ」と呼ばれていて、社会的な問題になっています。 この問題の代表的な薬が”サシツズマブ ゴビテカンです。米国では2021年4月、ヨーロッパでは2021年11月に承認されています。 全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(HR-/HER2-)(トリプルネガティブ)乳癌治療薬です。 2024年1月30日、日本での製造販売承認申請されました。このことから、順調に厚

          新規抗癌剤 抗TROP2 ADCのサシツズマブ ゴビテカン Triple negative乳がん新規抗癌剤 「ドラッグラグ」とは

          乳がん治療におけるエンハーツ    抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の続き:::

          エンハーツについて続きを書きます。 進行HER2陽性乳癌治療ではDESTINY-Breast03試験結果を受けて、 T-DXdがHER2陽性乳癌2次治療の標準治療として確立しました。 副作用の発現が多いため十分気を付けて使用する必要があります。投与法の工夫も必要と思われます。また、 DESTINY-Breast04試験の結果   HR陽性HER2-lowという新しいカテゴリーが治療戦略の中に入ってきました。ただ、HR陽性転移乳癌の治療が大きく変わるわけではありません。CDK4

          乳がん治療におけるエンハーツ    抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の続き:::

          乳がんは何が契機で再発するのか?

          今回はたくさんの患者さんを見てきて乳がんは何が契機で再発するのかを考えてみましょう。特にホルモン陽性乳癌患者さんで考えます。HER2タイプは薬が良くなっています。Triple negativeは何をしても抑えきれない症例もあります。 ホルモン陽性乳癌は晩期再発 術後10年でも再発してくる人がいます。昔から言われていることですがホルモン陽性乳癌のDormancyの考え方があります。Dormancyとは癌細胞が潜んで眠っている状態を言います。術後10年癌細胞はどこで何をしているの

          乳がんは何が契機で再発するのか?

          乳がん治療におけるエンハーツ    抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)とは?

          最近乳がん治療に使われるエンハーツという薬があります。抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)という薬の商品名です。最初はHER2タイプの乳癌に使われる薬として開発されています。ハーセプチンに、リンカーを介してトポイソメラーゼⅠ阻害作用を有するカンプトテシン誘導体を結合させた抗体薬物複合体(ADC:Antibody Drug Conjugate)です。トラスツズマブによるHER2シグナル阻害や、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)

          乳がん治療におけるエンハーツ    抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)とは?

          AYA世代乳がん(15-39歳) 若年性乳がんの生存率

          国立がん研究センターは、2024年1月25日、がん診療連携拠点病院などを含む院内がん登録実施施設から収集した情報を用いて算出した、2011年に初回治療を受けた患者の10年生存率を発表した。小児がんとAYA(Adolescent and Young Adult、15~39歳)世代の10年生存率をがん種別に集計しており、国内で初めての結果となる。解析を行った国立がん研究センターがん対策研究所。  院内がん登録集計は、国が指定するがん診療連携拠点病院をはじめとする院内がん登録実施

          AYA世代乳がん(15-39歳) 若年性乳がんの生存率