乳癌術後の寡分割照射(3週間)によるリンパ浮腫リスクは通常照射(5週間)に非劣性を示す【ESMO 2024】
早期乳癌の術後放射線療法として、中等度寡分割照射(40Gy/15分割、3週間)は通常照射(50Gy/25分割、5週間)に対し、腕のリンパ浮腫リスクに関して非劣性を示すことが、非盲検多施設無作為化フェーズ3試験のHypoG-01試験の5年の結果で明らかになった。9月13日から17日にスペイン・バルセロナで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で、フランスInstitut Gustave RoussyのSofia Rivera氏らが発表した。
術後の放射線療法として、リンパ節転移のない乳癌患者における乳房や胸壁への寡分割照射は有効性が報告されている。局所領域リンパ節への照射が必要な患者では、50Gy/25分割で5週間行う照射法が標準的に行われているが、寡分割照射の有効性は明らかでなかった。
HypoG-01試験(NCT03127995)では、中等度寡分割照射の通常照射に対する非劣性が検討された。対象は18歳以上の女性、T1-3、N0-3、M0乳癌で手術を受け、局所領域リンパ節への放射線療法の適応がある患者。患者を寡分割照射する群と通常照射をする群に1:1に無作為に割り付けた。寡分割照射群では40Gy/15分割(2.67Gy/回)を3週間行い、通常照射群は50Gy/25分割(2.0Gy/回)を5週間行う。2群とも医師の判断で腫瘍床にブースト照射を追加した。
主要評価項目は腕リンパ浮腫の累積発生割合。リンパ浮腫は、患側肘頭から近位15cmおよび/または遠位10cmでの腕周囲長が、ベースラインおよび対側の腕周囲長と比べて10%以上増加した場合と定義した。副次評価項目は全生存期間(OS)、局所領域無再発生存期間(LRFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、乳癌特異的生存期間(BCSS)、肩関節可動域の障害。肩関節可動域の障害は外転、屈曲が25度以上制限された場合と定義された。
2016年9月から2020年3月までに1265人が無作為化された。同意撤回した5人を除き、寡分割照射群は631人、通常照射群629人(ITT)。プロトコールどおりの治療を受けた患者(Per Protocol:PP)は寡分割照射群614人、標準群607人。ベースラインで腕周囲長を測定した患者1113人(寡分割照射群562人、標準照射群551人)において主要評価項目が解析された。
PP集団での2群の患者背景はバランスがとれていた。年齢中央値は58歳(範囲23-91歳)、腫瘍サイズの平均は26mm、手術は乳房全切除術が45%、乳房部分切除が55%、腋窩郭清が82%に患者に行われた。HER2陽性の患者が2割、ホルモン受容体陽性が7割、トリプルネガティブが1割で、全身療法は術前化学療法が2割に、術後化学療法は6割、術後内分泌療法は8割に行われていた。
観察期間中央値4.8年で、1113人のうちリンパ浮腫の発生は275人。PP集団における同側の腕リンパ浮腫リスクは、寡分割照射群の通常照射群に対するハザード比が1.02(90% 信頼区間:0.83-1.26)、非劣性p<0.001で、非劣性が示された。5年累積発生割合は寡分割照射群33.3%、通常照射群32.8%だった。
乳癌特異的生存期間のハザード比は0.53(95%信頼区間:0.30-0.94)、OSハザード比は0.59(95%信頼区間:0.37-0.93)だった。またLRFSハザード比は0.62(95%信頼区間:0.32-1.00)、DDFSハザード比は0.54(95%信頼区間:0.31-0.96)となった。このため寡分割照射は生存に悪い影響はないとした。
肩の関節可動域(ROM)についても寡分割照射で悪い影響は認めなかった。ハザード比は0.90(95%信頼区間:0.81-1.00)、ROM障害の発生割合は5年時点で寡分割照射群19.5%、通常照射群20.7%だった。
グレード3以上の有害事象は寡分割照射群12.7%、通常照射群12.6%。重篤な有害事象(SAE)は32人(2.6%)で報告され、寡分割照射群16人、通常照射群15人。このうち放射線療法に関連したSAEは3人だった。グレード5はなかった。心疾患や疲労、線維症、痛み、皮膚障害の頻度は2群で大きな違いはなかった。
以上の結果から、腕のリンパ浮腫リスクに関して、中等度寡分割照射は通常照射に対して非劣性が示され、局所領域リンパ節への照射は3週間が新しいスタンダードになりうるとした。
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