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YAYACO YONEYAMA|秘密の花園

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「どんな香りが好きですか?」
と尋ねられてうまく答えられない香水遊歩者へ——
香りを纏うのと同じくらい
香調表現に陶酔することが好きな香水文学者へ——
纏う香水と鑑賞する香水が共存する香水愛好者へ——

 はじめまして。
 この度アイリーン・アドラー率いるカルチャー・ソロリティ「菫色連盟」東京支部でのお留守番を請け負いました《香水談話室》主宰のヨネヤマヤヤコです。
 幼少期書物で出会ったポプリにはじまり、南国で体験した香辛料や香油、思春期に自ら選ぶようになった香水—— 嗅覚をとおして体感すること、それにまつわる文献を辿り想像することをこよなく愛しているものです。

 ブランドの想定したストーリーや調香師自身が考案したコンセプトの上に成り立つ複雑で緻密な文学作品。
 その物語は素晴らしいデザインの香水瓶におさめられ、目にも麗しく、一呼吸で鑑賞でき、一日中纏うこともできます。数時間あるいは数年共に過ごしてみて新しい一面に出会えることもあります。日常と非日常を使い分ける呪文にもなれる、そんな芸術品は他にありません。香水は感覚器を研ぎ澄ませ、記憶を呼び覚まし、それぞれの物語を香り立たせます。

 香水は纏える物語です。

ヨネヤマ様作品_秘密の花園C

 『秘密の花園』という有名な英国文学がありますね。はじめて手に取った子供の頃は主人公の少女が不愛想で可愛げがなくて読むのをやめてしまいました。なんでこんな娘が主人公なんだろう? 父親の仕事の都合で南国で生活するという共通項があったのにメアリーのことを好きになれなかったのです。

 以前とある占星術家にホロスコープを紐解いてもらう機会に恵まれました。
 出生時の星回りを診て浮かんだイメージを詩文で表現していただけるのです。そのときはすっかりおしゃべりに夢中になってしまい後日メールで送っていただきました。

 「秘密の花園に住む鳥」

 頭の中の霞が晴れるような喜びが広がったのを覚えています。

 わたしの秘密の花園の香水がほしい。
 この記憶をとどめるための香水がほしい。そう思ったのです。

 秘密の花園の香りとは伊勢丹新宿店で出会いました。無骨な四角いボトルにモノクロームの庭園のイラストが描かれたラベルが貼ってありました。

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ディプティック|ジャルダン・クロ(*廃番)
「閉ざされた庭」石壁に囲われた庭をイメージした瑞々しくも官能的な香り
トップ|ウォーターメロン・ホワイトライラック
ミドル|ヒヤシンス・ムスク
ラスト|シダー・ オークモス・トルバルサム

 ひんやりとした空気に漂う青い香り。果肉の断面から立ち上るみずみずしい瓜とほころびだした青紫色のヒヤシンスが強く香ります。踏みしめた地面から立ち上る大地と苔生した石壁のにおい。当時はただ直感で選んだ香りでしたがヒヤシンスもライラックも好きな花なのでなかなかいい嗅覚が働いていたのかもしれません。

 『秘密の花園』を大人になって読んでみるとこれはひとりの少女の物語というだけでなく一人の人間が傷ついた心身を立て直し自分を取りもどしてゆく物語だと気づくのです。さなぎから蝶へと変容の物語。
 物語の中の鳥は主人公を朽ち果てた秘密の花園へ誘い、失われた鍵の場所を教えたり、自分も巣作りをしたり思いの外大活躍をしていました。

 小説に倣ってヒヤシンスを育ててみれば球根から芽吹いてくるかわいらしい緑の三角形にたまらない愛おしさを感じるようになりました。
 水栽培ポットのなかで伸びていくヒヤシンスの根を見つめながら春を待つ。わたしの一番好きな季節です。ご贔屓のアンティークディーラーの方が偶然水栽培がお好きだったこともあり素敵なポットもいくつか蒐集することができました。

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 纏うための香水とは別の記憶に刻むための香水。印象的な出来事があるとそれに似合う香水を探してしまう。様々な記憶を刻んだ香水のクローゼットはわたしの博物館であり花々や果実や樹木の香りで満たされた花園でもあります。

 この花園はシークレットガーデンであるにもかかわらず
   たくさんの人が「内緒で」出入りしています。

 そんな風に表現してくださったわたしの花園を、菫色連盟《香水談話室》で実現できたら素敵だなと思いました。

  この小部屋では香水談話室のあとの残り香のようなお話をしていきたいと思います。

ヨネヤマヤヤコ|イラストレーター →Blog
香りの世界を偏愛するイラストレーター。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。
Twitter|@yoneyacco

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作家名|ヨネヤマヤヤコ
作品名|秘密の花園
作品サイズ|28cm×20cm(シートのみ)
インクジェットプリント
制作年|2019年
菫色連盟サロン《香水談話室》にて発表

好奇心いっぱいの少女マリーです。
秘密の花園の扉を開いてしっとりとした春のにおいを感じているところ。

ヨネヤマ様作品_秘密の花園

Text|Mistress Noohl
 「香水談話室」の記念すべき第一回目サロン《菫色香水》にて発表された、馨しいイラスト作品。今まさに、秘密の花園への扉を開ける少女マリーの後ろ姿が印象的な一作です。扉からもれくるのは、どのような春のにおいでしょう。
 初めて出会う時のように、新鮮な心地で香りを体験したい、香りと共にある記憶を、いつまでも大切にしたい——ヨネヤマ様からのメッセージが伝わってきます。
 シート作品は、額選びも楽しみのひとつ。額屋さんのネットショップも充実していますので、ご自身のお好みで、マットや額を選んでみて下さいね。


MS_バナー_通販対象作品

作家名|ヨネヤマヤヤコ
作品名|THE WOMAN
作品サイズ|32cm×24cm(シートのみ)
インクジェットプリント
2019年
霧とリボン企画展《菫色連盟の事件ファイル》出品作

菫色香水《THE WOMAN》のイメージキャラクターです。
甘美な憂愁を誘うちょっと頽廃的なムードです。

ヨネヤマ様作品_TheWoman

ヨネヤマ様作品_TheWoman2

Text|Mistress Noohl
 2019年に開催された霧とリボン企画展《菫色連盟の事件ファイル》にて発表された、20年代風デカダンスをうっすらとたたえるスタイリングも素敵なイラスト作品。
 《菫色連盟の事件ファイル》展は、各作家が架空の事件を創作するところから始まりました。作品はその事件にまつわる証拠物件であり、ギャラリー空間も菫色連盟のアジトという設定、そこへお客様が潜入捜査にいらっしゃる趣向の展覧会で、会期中は捜査員(お客様)で賑わいました。

★展覧会開催時に制作した事件ファイル★

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 本イラスト作品は、ヨネヤマ様が創作した「菫色香水事件」の証拠物件、ロンドンの老舗百貨店Gamagesで発売された香水《THE WOMAN》の広告。封印された菫色香水とは、どのような香りなのでしょう——

「ビロードの光沢を持つ雪花石膏のような香りだ」
「その滑らかな雪花石膏には血痕が花開いているんだ」

 人々を幻惑した香水を想像してみたくなる、香りを偏愛するヨネヤマ様ならではの一作を、どうぞお楽しみ下さい。

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