小説は王道ストーリーでも良いと思う
いわゆる「王道ストーリー」というものが好きです。小説でも、王道のストーリーを基にして書いている気がします。
「ふたりの余命」は余命短いふたりの恋愛、「夏のピルグリム」は少女が一夏の冒険を通じて成長する物語です。どちらも、古くからある物語の型です。
冒険を通じて成長する「夏のピルグリム」のような物語を「ヒーローズジャーニー」と呼び、神話の頃より繰り返し描かれています。有名なところでは、「桃太郎」や「ロード・オブ・ザ・リング」などですね。
どうして王道ストーリーを基にするかというと、わかりやすいからです。神話の時代から今まで語られ続けているということは、人間の深淵に染み込んでいるものだと思います。
物語を複雑にすればするほど、容易に飲み込めない人が増える気がします。もちろん、複雑なストーリーをいかに理解しやすくするかは作家の腕の見せ所だと思いますが、古くからある型を用いることで、誰でも気軽に空想の世界に溶け込むことができます。
「あれ? これどんな話なの? どこへ向かっている?」と物語のフォーマットを探り探り読み進めるよりも、「ああ、こういう話ね」と物語が進むゴールを理解して、安心して読んで欲しい気持ちが強いです。
密室ミステリーなら、密閉された組織に人が閉じ込められ殺人が起き、主人公が犯人を推理するみたいな。
王道ストーリーだと、ありきたりの物語になりそうですが、王道の上にテーマや仕掛けを設けることで新鮮味を出すことができます。物語を複雑にするよりも、テーマや仕掛けに凝ることに注力するようにしています。
広くてまっすぐな道は単純でも、カラフルな自動車やバス、バイクなど様々な乗り物が走ると、複雑で興味深い風景が出来上がるように。
「夏のピルグリム」も王道の青春冒険小説の形をしていますが、推しや妹、作中のお話など様々な仕掛けを施し、その裏にはあるテーマを忍ばせています。
そうすることで、読者がわかりやすく物語の世界に入れ、今まで見たことがない景色を見ることができると考えて書きました。
いかがでしょうかね?
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