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小説は芝居小屋である

小説を書くときになにをイメージしますか? 村上春樹さんはエッセーで、「焚き火を囲んでお話を聞かせる」イメージを持っていると語っていました。テレビもネットもない時代に、村の長老が子供や大人に村の歴史や伝説を語る風景、焚き火に照らされる興味津々な子供達の顔。ナラティブな世界です。

僕は芝居小屋をイメージしています。劇場でも映画館でもなく、もっと小さな芝居小屋ですね。江戸の街にあったような簡易な小屋に、お客さんが集まって、舞台でお芝居や出し物をお見せするイメージです。
小説の芝居小屋では、僕が書いた通りに役者が演じます。ときには観客から拍手があがり、ときには啜り泣く声が聞こえるような、芝居とお客の距離がとても近い小屋です。

僕は、2時間の映画のようなボリュームを目指して長編小説を書きます。それぐらいの長さの物語が一気に読めると思っているからです。
その長さのお話を芝居小屋で上演できるように小説を仕上げていきます。
推敲しているときは、お芝居の場面を想像して、動きとセリフが今の舞台の状況と矛盾がないか確かめます。舞台にないものが突然現れたり、人物の動きとしておかしくないかチェックします。おかしな点があれば、台本(小説)を書き換えます。役者のセリフを変えたり、書き割り(風景描写)を足したり。

最後のチェックのときは、自分が客席に座り、舞台を眺めているイメージで読みます。
そうやって小説を完成させます。
あとは、芝居小屋の外で、「どうぞー、寄って行ってくださーい」と呼び込みをして、読者を呼び入れるだけです。
小さな芝居小屋に座って、お芝居(小説)を自由に楽しんでもらえれば嬉しいですね。


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