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シェア型書店は「書店」?

最近、シェア型書店という用語を聞くことが増えてきました。本の街神保町に、大先輩の作家今村翔吾さんのシェア型書店「ほんまる」がオープンして話題になりました。

シェア型書店は、店主が本棚を貸して、棚を借りた人が好きな本を並べて販売するという形態の書店です。シェア型書店のオーナーは、自ら本を仕入れることがメインの業務ではなく、本棚の賃貸料で収入を得ます。

シェア型書店は、「書店」なのでしょうか。書店の定義によると思いますが、「書物を売る店」が書店だというなら、シェア型書店は間違いなく書店と言えるでしょう。
シェア型書店は、いわゆる「場所貸し」で、自ら本を積極的には売りません(販売している場合もあります)。棚を借りたいわゆる店子が本を売っています。
例えると、シェア型書店は、書籍に特化した「ショッピングモール」ですかね。ショッピングモールはテナントに販売エリアを貸して収入を得ています。
ショッピングモール自体が店舗を出して販売することは基本的にはありません(グループ企業のテナントが入店することは多々あります)。
自ら物品を販売していないからって、ショッピングモールをお店じゃないという人は少ないと思います。
同様にシェア型書店はお店であり、書店に特化していれば書店といってよいのではないでしょうか。

書店には書籍を販売するだけではなく、本を通じて知識を広め、交流する目的があります。
苦戦している書店業界のために、政府が支援する話が進んでいます。書店という私企業のために税金を投入するのは、書店には文化の交流地点という意味合いがあるからです。
シェア型書店は、いわゆる売れ線の本だけじゃなく、棚主(というのかな)の趣味によって多種多様な本が並びます。特に地方において、さまざまな文化や情報を提供する店は貴重な存在です。
普段見かけない本を見つけることで新しい文化に出会い、またそのこと周りの人に広める繋がりが生まれます。
その地域の文化交流を担うという意味でも、シェア型書店は、間違いなく「書店」です。

シェア型書店が増えているのは、出版不況に苦しむ書店業界を盛り上げる目的があると思います。
全国で書店が急速に減っている時流に抗うために、シェア型書店を経営されている方もいます。

シェア型書店は、書店減少を食い止めることに貢献できるのでしょうか。
僕は、できると思います。出版不況の原因は多々ありますが、そのひとつに読書する人が減ったことが挙げられます。読書人口が減ったのは、人口減少や娯楽の多様化などの原因がありますが、本が今より売れて勢いを取り戻すためには、本を読む人を増やすことが不可欠です。
シェア型書店に注目を集まり、本を手に取り読書を趣味にしてくれる人が増えれば、既存の書店の売り上げも伸びるはずです。

利幅が小さい書店を個人が新規開店させるのはリスクが大きいですが、シェア型書店であれば初期費用を抑えられ、リスクを分散できます。
シェア型書店で新しい本に出会い、本を好きになる人が増えれば、出版業界の復活に寄与することでしょう。

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