見出し画像

ディズニーランドと小説

ディズニーランドが好きです。
ディズオタと呼ばれる人の足元に及びませんが、開園してから何度行ったかわかりません。オープンした年に商店街の福引でチケットが当たり(今はなきビッグ10です)、友達とふたりでお弁当を持ってインパしたのが最初です。

ディズニーランドへ行くといつも感心するのは、作り込まれた世界観です。アトラクションはもちろん、世界観を維持するために、パーク内の全ての場所で細かい装飾がなされています。
ただ綺麗やかっこいいのではなく、バックグランドストーリーに根差した部分を見つけると嬉しくなります。有名なところでは、ビックサンダーマウンテンの周りには、ゴールドラッシュ時代の風景が再現されているなどですね。
キャストもその世界観の維持に貢献しています。これも有名な話ですが、おばやけ屋敷であるホーンテッドマンションのキャストは、決して笑いません。

ディズニーシーでもプロメテウス火山の近くには柱状節理が再現されていたりと地学に準拠した作りになっています。
アトラクションに乗らずにパーク内を散歩しているだけでも、充分楽しめます。

ディズニーランドが徹底している世界観の維持は、小説でも重要だと思っています。ディズニーランドも小説もフィクションの世界です。
乱暴に言ってしまえば、どちらも箱庭の中で繰り広げられるごっこ遊びです。ごっこ遊びが楽しいのは、その世界に没入できるからです。
空想世界から現実が見えてしまったら、夢から覚めてしまいます。

ファンタジーではない小説でも現実の世界とは異なります。現実の世界では、密室殺人は滅多に起こりませんし、大人になった幼馴染と偶然再会することもほとんどありません。
小説によって、リアリティラインが定められ、作家が作ったその世界の中で登場人物が動き、それを見て読者は物語を愉しみますので、作家はその世界の維持に全力を注がないといけません。

とは言っても、小説はディズニーランドよりも世界維持が容易です。風景が目に見えませんので、世界観にそぐわないものは書かなければよいのです。
ディズニーシーでは、世界観が壊れさないように、対岸にある葛西の観覧車が見えないように建物を配置したといわれています。
ブルドーザーは不要ですが、それでも小説で世界観を完璧に維持するためには、セリフや物語の展開など気をつける点は多々あります。
本格的ミステリーを展開していた世界で、突然超能者が出てきて事件を解決したら読者は戸惑います。

世界観が壊れていないかどうかは、作家ひとりではなく、他の人に読んでもらって指摘を受けた方が良いと思います。
どうしても、ひとりの視点だと見えている部分、知っている知識に限界がありますし、世界を構築した作家本人は書かれていない部分まで頭の中で想像しているので、自分が作った世界が完璧だと思いがちです。

ディズニーランドへ行って、どのように世界観が維持されているのか調べてみるのも面白いですし、小説内の世界観を維持をするヒントを得られるかもしれません。

著者初の単行本形式の小説「夏のピルグリム」がポプラ社より発売中です。「ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作です。よろしかったら書店で手に取ってみてください。善い物語です!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?