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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語

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今は亡き王国の博物館には、世界の名だたる宝物が集められていた。王国の崩壊と共にそれらは四散し、忘れ去られている。しかし、裏社会では今もその宝が売買され価値が歪められている。正義の…
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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「真実の不二ノ黒影圖」

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「真実の不二ノ黒影圖」

「真実の不二ノ黒影圖」

リー・ミンジュンが豪奢に飾られたオークション会場のステージに立ち、高笑いを響かせた。「皆様、ご覧ください。ここに『不二ノ黒影圖』の模倣作がございます。」彼の目には得意げな光が宿っていた。

しかし、その模倣画は実は模倣ではなく、本物の「不二ノ黒影圖」であることを、彼だけが知っていた。リーはミクロン単位で細かい細工を施し、模倣作として見せかけていた。しかしその模倣作には、本

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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「不二ノ黒影圖」

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「不二ノ黒影圖」

「不二ノ黒影圖」

壮大な富士山が織り成す影が、紙面に刻まれた一枚の浮世絵。「富嶽三十六景」の幻の47枚目として、世界がその存在を認識している作品である。所有者は名前が東アジアの様々な影響を受けている一人の男、リー・ミンジュン。彼の父は中国出身、母は韓国人で、彼自身はベトナムで生まれ育った。その異文化の狭間で育つ中、リー・ミンジュンは自らの力を増大させ、未だ闇が覆い隠す、非正規のルートを使って「不

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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「煌めきのアクアマリン」

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「煌めきのアクアマリン」

「煌めきのアクアマリン」

語られるべきは現代西欧のどこか、洗練された街並みと古代の趣を併せ持つ場所、モナコ。そこで流通している美術品の中には、一世紀前の王国が没落した際に散逸したものも少なくない。その中でも、「煌めきのアクアマリン」と称されるアイテムは、かつては王家の宝でありながら、今は闇市場を経由して、手段を選ばない豪商レオン・ドゥボワの手に落ちていた。

レオン・ドゥボワ、名前さえも冷たく、

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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「真紅の天球儀」

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「真紅の天球儀」

「真紅の天球儀」

アルテオ・リュネの心中に、新たな対象が浮かび上がってきた。それは「真紅の天球儀」。彼の情報源から得た知識によれば、かつての王国の星々を研究するために作られた珠玉のアイテムである。

現在その天球儀は、リュカ・マルティネッティという名の裏社会の重鎮の手に渡っていた。彼はこの天球儀を自身の権力を示すためのアクセサリーとして、あたかも部屋の中心に君臨するように展示していた。彼はその紅

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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「翡翠の竜」

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「翡翠の竜」

「翡翠の竜」

深緑の鱗で覆われ、瞳からは神秘とともに威厳を湛えた竜。それがこの「翡翠の竜」だ。かつての王国の栄華を今に伝えるこの彫刻は、破滅した王国から失われ、世界の片隅で秘かにその存在を続けていた。

その竜を所蔵するのは、富と名声にまみれた男、クリスティアン・デュマ。彼は知識と資本を武器に古美術の世界で名を馳せる商人である。しかし、その裏では無法な手段も辞さない強欲な男だった。

アルテオ・

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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「宙に浮かぶサファイア」

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「宙に浮かぶサファイア」

「宙に浮かぶサファイア」

彼の名はエルンスト・フォン・ヘッセン。豪奢な財産の中で、その鮮やかな青色が他とは違う存在感を放つアイテムに特別な愛着を抱いていた。その名も「宙に浮かぶサファイア」。伝説によれば、王族が手に入れたときには既にサファイアは浮遊していたという。透明な台座に載せられているように見えるが、実際には何も支えていない。

エルンストはサファイアの所有者でありながら、それを正当に手に入

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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語『幻のダイヤモンド』

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語『幻のダイヤモンド』

『幻のダイヤモンド』

月明かりが街を照らす中、怪盗アルテオは次のターゲットを見つけていた。彼は正義のために盗みを働くことで悪を成敗し、その華麗な手口と独特の倫理観で人々を魅了していた。しかし、アルテオの活動には常に影が付きまとう。それはエドガー・ラヴェルという名の優れた探偵である。

アルテオとエドガーは、猫とネズミのような関係でありながら、時には共闘することもある。彼らの関係は一筋縄ではいかな

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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語『月光の絵画』

アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語『月光の絵画』

夜の街に、月明かりが満ちていた。静かな路地裏で、アルテオ・リュネは次の獲物を狙っていた。彼はかつての王国の文化遺産を取り戻すため、夜ごと盗みを働く怪盗である。その目的は、没落した王国の博物館を再興させること。しかし、彼の行動は犯罪であり、彼を追う者もいた。

エドガー・ラヴェルは、アルテオの正体を突き止めようとする探偵だった。彼はアルテオの目的を理解し、時にはその行動に共感すら抱いていたが、探偵と

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