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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「翡翠の竜」

「翡翠の竜」

深緑の鱗で覆われ、瞳からは神秘とともに威厳を湛えた竜。それがこの「翡翠の竜」だ。かつての王国の栄華を今に伝えるこの彫刻は、破滅した王国から失われ、世界の片隅で秘かにその存在を続けていた。

その竜を所蔵するのは、富と名声にまみれた男、クリスティアン・デュマ。彼は知識と資本を武器に古美術の世界で名を馳せる商人である。しかし、その裏では無法な手段も辞さない強欲な男だった。

アルテオ・リュネの目指すものは、この「翡翠の竜」だ。彼の鋭い目がこの彫刻を見つめ、その内に秘められた歴史と価値を感じ取る。アルテオは闘志に燃えながら、デュマ宛てに盗みの予告状を送りつける。

「デュマ氏へ。翡翠の竜を私が譲り受ける。それはあなたに属してはいない」

この予告を受け、デュマは警警と共に館の警備を一層強化した。入念な監視網、無数の警報装置、そして国際警察から派遣されたエドガー・ラヴェル。彼らはアルテオを止めるための壁となった。

エドガーは警護の任務に就きながら、警備の弱点を探し、デュマに警告を発した。「警備は万全であるとは言えない。アルテオは予想を超える行動を取るだろう。あなたの警備は、彼にとってはただの遊び道具に過ぎない」



その夜、アルテオは手にした「ハーモニック・ウィスパラー」を使い、館の警備網を静かに切り裂いていった。彼は手にしたこの音波ツールで、突破できないはずの壁を超え、そして、「翡翠の竜」の前に立つ。

竜はその美しい姿でアルテオを見つめているかのようだった。アルテオはその竜の瞳に映った自分自身を見つめた。彼は穏やかに深呼吸をし、心に刻んだ信念を確認した。

「君はここにいるべきではない。私が君を本来の場所に連れて行こう」

そう言って、彼は翡翠の竜を手に取った。そして、警護員が近づく前に、影と一緒に館から姿を消した。

それを目の当たりにしたエドガーは、深い溜息とともに感心した表情を浮かべた。「またしてもアルテオに出し抜かれたか。彼の手口はついに一歩進んだようだ」

彼はアルテオの逃走を導く手掛かりを残すために現場を検討した。そして、一つの決意を胸に秘め、国際警察に報告を送った。

一方、アルテオは持ち去った「翡翠の竜」を手に、静かにその本来の場所へと向かった。それはかつての王国の一族が管理する秘密の美術館だった。

そして、彼は竜をその本来の場所に戻した。「君がここに帰ることで、失われた歴史が再び蘇る。だからこそ、私は盗み続ける」

その言葉とともに、アルテオは再び闇に消えた。