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アルテオとエドガー: 正義の泥棒と追跡者の物語「真紅の天球儀」

「真紅の天球儀」

アルテオ・リュネの心中に、新たな対象が浮かび上がってきた。それは「真紅の天球儀」。彼の情報源から得た知識によれば、かつての王国の星々を研究するために作られた珠玉のアイテムである。



現在その天球儀は、リュカ・マルティネッティという名の裏社会の重鎮の手に渡っていた。彼はこの天球儀を自身の権力を示すためのアクセサリーとして、あたかも部屋の中心に君臨するように展示していた。彼はその紅い色合いと鮮やかな装飾に見せびらかす満足感を見いだしていた。

アルテオはその情報を元に自らの行動計画を策定した。彼の目的はただ一つ、真紅の天球儀をリュカの手から取り戻し、その本来あるべき場所へと戻すことであった。

そして、彼はリュカに対し、予告状を送りつけた。「真紅の天球儀」は、近々彼の手から奪われるだろう、と。

リュカは予告を受けてすぐに対策を始めた。警備を一層強化し、個人的な警備員を増やすことに。しかし、彼が対策を施す一方、エドガー・ラヴェルもまた動き出していた。

エドガーは警察に届け出られた予告状の情報を基に、リュカの邸宅へと赴いた。警察の中でも彼はアルテオの手口に最も詳しく、この予告を無視するわけにはいかなかった。しかし、彼の忠告はリュカには全く届かなかった。「警備が足りない。アルテオを防ぐためにはもっと厳重な対策が必要だ」。しかし、リュカは自らの警備員に完全な信頼を置いていた。

そして、ついにその夜が訪れた。

アルテオは今宵のために特別なツール、クローキング・ブーツを持っていた。彼はそのブーツを身につけ、リュカの邸宅へと忍び込んだ。ブーツの効果により、彼の足音は完全に消え、足跡も残らない。彼は影から影へと滑るように移動し、厳重な警備網を無効化していった。

真紅の天球儀が展示されている部屋に辿り着いた彼は、少し息をついた。その眼前には、星々の知識が詰まった鮮やかな真紅の天球儀が輝いていた。彼はその美しさに一瞬心を奪われつつ、次の行動へと移った。

時を同じくして、エドガーはリュカの邸宅の外で緊張に包まれていた。彼の直感は、すぐに何かが起きるだろうと囁いていた。

ついにその瞬間が訪れた。アルテオは一瞬の隙を突き、真紅の天球儀を手に入れた。彼の手にしっかりと握られた天球儀は、かつて王国の人々が見上げていた星々の光を放っていた。

すぐに警報が鳴り響いた。彼は響き渡る警報音と共に、素早く部屋から飛び出した。ブーツが放つ静寂の魔法により、彼の足跡は一切残らず、彼がどの道を逃走したのか誰も知ることはできなかった。

エドガーはアルテオが去った後、現場へ急いだ。彼の予想通り、真紅の天球儀はすでになかった。しかしながら、彼の目は光り、手にした新たな情報を元に、次回の対策を練り始めていた。

数日後、真紅の天球儀は消えていた。消えた場所は、かつての王国の流れを汲む一族が守り続けている美術館だった。そこは本来、天球儀が存在するべき場所だった。美術館の管理人は、戻ってきた天球儀を見つめ、静かに感謝の念を込めた。

そして、アルテオ・リュネの次の対象はすでに彼の心の中に浮かび上がっていた。