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最強のラテン音楽を求めて|キューバのソネーロ編|Liner-note

姐さん、今回はキューバ(Cuba スペイン語発音ではクーバ)です。キューバ音楽です。
キューバ音楽を語り始めると連載モノになってしまうので(というよりちゃんとした他のサイトをみたほうがいい)、軽くいなす感じで好きなアーティストをピックアップしよう。

Son ソン――サルサのルーツと言われたりもする――がキューバ音楽の中核にある。ソンからソン・モントゥーノやマンボ、チャチャチャ、グァラチャなどが派生したなんて言説があるが、実態は入れ子式なんだと思う。1850年代のサンティアゴ・デ・クーバで生まれた。

キューバ的にはソンを歌う人がSonero ソネーロで、膨大な(広義の)ソネーロのストックを有する。古くはTrío Matamoros トリオ・マタモロス、Septeto Habanero セプテート・アバネーロから、最近のPupy Y Los Que Son Son プピ・イ・ロスケソンソン、El Niño Y La Verdad エルニーニョ・イ・ラベルダまで。ライ・クーダー制作で話題と金になったBuena Vista Social Clubの御老体方も古きソンの重鎮だ。

ボクの守備範囲は80〜90年代で、その時代に活躍していたバンドはこれまた多数ある。ファン・フォルメル率いるLos Van Van ロス・バンバン、村上龍お気に入りのNG La Banda エネヘ・ラ・バンダ、ダンサンブルなTimbaを広めたCharanga Habanera チャランガ・アバネーラなど。サルサと思って聞くと、かなり癖があるから戸惑うぜ。

そんななかボクが取り上げるのはAdalberto AlvarezとValentínだ。

Adalberto Alvarez Y Su Son アダルベルト・アルバレス・イ・スソン

アダルベルトは1978年に伝説のバンドSon 14でデビュー。この時代のほうがソン色が強めで、聞きやすくなるのはハバナに移って結成した見出しのバンドから。ソンの伝統をしっかり継承しつつ、楽曲のアンサンブルを広げ、アレンジを多様化していく。2021年逝去。

まず”El Divorcio エル・デボルシオ”(離婚の意味)。1990年『Dominando La Partida』所収。力強いトランペットで火蓋を切るダンスナンバー。Written by Arsenio Rodríguezとなっている。ボカリスタはOrquesta Revé オルケスタ・レベで活躍し、イ・スソンに移籍したバレンティンだ。


“A Bailar El Toca Toca アバイラール・エルトカトカ”は、1995年の同名アルバムから。ミディアムテンポのパリピ向け。昔、キューバを旅行したとき、友だち(元JICA研修生)の友だちの家にお呼ばれしてハウスパーティを体験した。記憶が定かではないけどたぶんこの曲がかかっていて、コミカルな感じで盛り上がってたなあ。でもクバーノにも踊りが苦手な人がいることがわかって安心したよ。


同アルバムからは”Fin de Semana Es La Cita フィンデセマナ・エス・ラシタ”(セカンド・バージョン)も蔵出ししておこう。歌うのはトカトカに引き続き、Coco Freemanという人(よく知らない)。オリジナル・バージョンはバレンティンが歌っていた。追加されたサビのコーラスからは、マレコン通りの土曜の夜の高揚感がじんわりと伝わってくる。


Valentín Y Su Grupo バレンティン・イ・スグルーポ

個人的にHéctor Valentín エクトル・バレンティンはキューバ最高のリードボーカルだと思う。だけど、エリオ・レベのような強烈な個性に気圧されてきたからか、イ・スソン時代の活躍が伝わっていないからか、情報がないんだよね。

日本でいえば、風貌といい声の太さといい歌の巧さといい、円熟の演歌歌手のようではある。高い音域で、声量があってピッチが乱れないから安心して聞いていられる。

彼も他のラテン音楽のカンタンテのように決めのフレーズを持っている。それは”Machucalo マチューカロ”だ(聞き取りに自信はないが…)。

ではアルバム『Gente de Barrio』から"Que Va a Pasar"を聞いてもらおう。しかしキューバ人はバンド名の付け方が雑だね。楽団の編成をくっつけた無味乾燥な名前が多くて、しかも下のクレジットのように揺らぎがある。社会主義国特有のお役所仕事なのかもしれないが、無理くり「おおらかでいいな」と思うことにしよう。


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