見出し画像

2023奄美大島の旅#2|煮魚定食のおいしさを激賞したくなった話|Travelogue

誰が決めたか知らないが(オレです)、「暮らすように旅する」というこの旅行の建前上、あまり贅沢はできないのであって、食事も朝は菓子パンというように基本的に質素にすませるようにしていた。その意味では奄美の定食屋は非常に良心的で、なにもかもがステルス値上げや便乗値上げにみえてしまう昨今にあって、一服の清涼剤のような存在だ。魚フライ定食、豚唐揚げ定食、チャーハン大盛りと700〜850円ほどで質・量ともに満足できる。「あなたはあなたのままで変わらずにいてください、そのままで♫」と歌いたくなるほどだ。

ただ、この自縄自縛なライフスタイルから逸脱する日もときにはあり、そんな日に出会ったのが写真の煮魚定食だ(値段的にはそれほど逸脱してないです😥)。これが番屋という海産物料理を提供する店の裏看板メニューだと見抜いたオレだったが、その予想は決して間違いではなかったと思う。

注文時は「アカムツかレンコダイですよ」(なんか格が違うような気がするが・・・)と言っていた魚の姿は、フエダイ系のようにもみえ、醤油だしと油が染み込んで黒光りしている。パッと見は決してよくないが、身が多くてギュッとしまっていて、甘じょっぱさでご飯がすすむ。やっぱパサつきがちな南国の魚はこれくらい濃い味にしたほうがおいしいね。次回タマンが釣れたら、圧力鍋を使って甘露煮くらいの濃い味で煮付けようと思いました。

ほかに印象的だったのは打田原マシュやどぅりのうどん。マシュというのは自然海塩のことで、店の隣で製塩している(体験もできるそうでっせ)。ソテツの実の粉が入ったナリうどん500円は、どん兵衛のようなフニャフニャ感のある柔麺で、鶏だしスープのやさしい味わいと絶妙にマッチしている。店の外のベンチで目の前の海をみながら食べると、塩味がより効いた気になるからアラ不思議。

椎茸だしもね

* * *

今回は軽自動車ムーブで車中泊しようと思っていたのだが、利用者の事故で急遽日産キューブに変更。車中泊できるかなと不安だったけど、縦の長さは問題なく、フラット時の座席のでこぼこもダンボールやらエアマットやらで解消し、2泊目以降は身体も馴染んで問題なく就寝できた。結局4泊とも違う場所で寝泊まりするのだが、車中泊のお伴は銭湯なわけでして、こちらも3ヵ所を体験するのであった(車中泊後のホテルの大浴場も加えると4ヵ所だ)。とはいえ500円ほどとどこも変わらぬ値段設定の銭湯の中身にたいした違いがあるはずもなく、この話題は広げようがない。

あえて言うなら、銭湯が地域の公共施設風な造りだったり体育館に併設されていたりと、沖縄とは違ってお風呂文化が根づいているようで、それは薩摩の直接的な支配下にあった奄美大島の特徴なのかなと思った。学校や公民館に日本相撲の土俵があるのも同様で、同じ南西諸島の中とはいえ、文化的な小さな違和感が風景に紛れ込んでいることに気づかされた。

名瀬の市街地の大きな教会

その違和感のもうひとつの例がキリスト教会(主にカトリック)の多さだった。ウィキペディアにはこう書いてある。

1891年に最初のカトリックの洗礼が行われた。フェリエ神父は初代教会のように数千人の人に洗礼を授けた夢を見たと語っていたという。1923年に信徒数は4057人を数えた。1922年にカナダのフランシスコ会モーリス・ベルタン神父が奄美を来訪したとき、住民らの願いがあり、1924年にミッションスクールの大島高等女学校が開校した。1925年、町が提供した600坪の敷地に鉄筋コンクリート2階建ての校舎が完成した。<中略>日本の敗戦後の1946年、カトリック信者、ホーリネス、米軍が共にクリスマスを祝う。1991年時点での奄美大島のカトリック教会数は29、信者数は4300人である。

wikipedia「奄美カトリック迫害」より

現在は大島内に31ヵ所の教会があり、そのうちの28教会が旅の拠点だった北部にあるそうだから、オレの抱いた教会が多いという印象はさもありなんである。こんなにあるなら巡礼の旅ができるねと思っていたら、やはり「伝泊」などいくつかのサイトで奄美教会巡り的なコンテンツが紹介されていた。リタイア後はスペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩きたいと考えていた有神論者のオレに、「そんな遠くに行かなくてもここにもあるよ」と耳打ちしているようだ。

さらに微細な違和感も紹介しておこう。既視感と表裏の違和感ともいえる。花ブロックのような巨大な目隠しを、奄美市役所と奄美市市民交流センターの外壁に見た。「紬スクリーン」と名づけられているようで、その名のとおり大島紬の織柄がデザインされている。日除けや目隠しの機能のほかに、台風時の飛来物による窓ガラスなどの損壊防止も目的とされているらしい(プロジェクション・マッピングのスクリーンにも利用可)。

なかなかの主張をする紬スクリーン

市役所では南面がデザイン基調にもなっている横長のスクリーンで、東西は縦長のものが3体あり、北側にも1体設置されている。設計は㈱内藤建築事務所で、2022日本サインデザイン銅賞に選ばれている(公益社団法人日本サインデザイン協会主催)。

遠目からは「花ブロックでしょ」と思ったのだが、近づくとどうも様子が違う。金属製で薄く、那覇文化芸術劇場なはーとの花ブロックと比べるとわかるように、壁面をより広くカバーすることができる。建物との接合部分も含めて、塩害にどこまで耐性があるのかは気になるところだが、おそらくコスパは高いだろうから、伝統的な図像や絵柄を持つ暑い地域などでの応用は進んでいくのではないかと予想する次第である。

なはーとの花ブロックは曲線で魅せる


この記事が参加している募集

ご当地グルメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?