ガッキー(石垣)に捧ぐ|Studies
結衣、人間は石があれば積みたくなる生き物だよ。きちんと積むか、がさつに積むか、それだけの違いさ〜
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沖縄の伝統的集落には、屋敷の周りに石垣(石積み、石囲い)が残っている場合があります。以前、沖縄の石垣について書いたものを、ただの酔狂で旧仮名文語体に変換させてみました(お願いChatGPT!)。柳田國男っぽいですか? 誰か柳田國男っぽいって言ってください。
石垣は城壁、屋敷囲ひとしては勿論、御嶽や墓、井泉の如き祭祀・宗教空間、農地の囲ひや海の漁垣、山の猪垣などに用ゐられて来たり。屋敷囲ひに用ゐられ始むる年代は定かならずと雖も、十六世紀半ばには貴族層の家屋に見られたりといふ。石垣を「マイグスク(前城)」と呼ぶ地域あり、また、三尺幅の石垣を「三尺グスク」と呼びたりす。一般に家格や経済力高きほど素材や石造技術も凝りたるものとなり、その規模も大いならん。
ヒンプンも屋敷囲ひの一部にして、住居正面に設けられ、外よりの視線を遮る実利的役割と魔物の侵入を防ぐ宗教的役割を与へられたり。斜面上に立地する集落などには、住宅背後に土留めの擁壁を設けたり、敷地内の段差を築く際にも石垣組まる。
石積み手法は、野面積み、布積み、あいかた積みの三つに分類せらる。それぞれの特色は、野面積みは仕上げを施さず目地の幅不定にして素朴なる印象を与へ、布積みは長方形の見附面を持つ石材を規則的に積み上げ、あいかた積みは亀甲乱積みとも呼ばれ組み合わせのために石を加工するなり。また、素材は県内広くに分布する琉球石灰岩(本部石灰岩、久米島石、トラバーチンなど)が一般的にして、他の石灰岩も用ゐらる。あいかた積みや布積みには採石・加工した石灰岩の利用多く、野面積みには畑の石やテーブルサンゴを用ゐる場合もあり。ざらざらした手触りが特色的なる粟石(砂質石灰岩)は加工容易にして、石垣にもよく利用せらる。
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石垣には次のような課題があります(ありました)。
住宅改築の際の搬出入口を造る必要がある、自家用車の進入路を設ける、ハブの住処となるなどの理由で撤去され、ブロック塀へ建て替えられるケースが多い
石垣の一部が崩れたまま未補修のものがある。補修している場合でも、旧来とは異なる材質が用いられることで、景観的に不調和をきたす例がある
擬石ブロックなど石垣に似せた素材を使った屋敷囲いは、遠景としては一定の評価ができるものの、近景では情緒に欠けるきらいがある
屋敷囲いと同一素材でないブロックや板などがヒンプンに用いられるなど、簡易化されて周辺空間との調和を乱すことがある
目隠しの機能強化のため、かつての石垣の上からブロックなどを継ぎ足しているケースがみられる
近隣と連携して石垣を保全し、線的あるいは面的なシークエンスを形成することは少なくなり、ブロック塀と接合されるなど連続性が途切れるような例が多く見出される
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石垣は集落の景観形成に役立ちます。石垣をめぐる景観形成の可能性や推進施策として以下の事柄が提案できます。
赤瓦民家、フクギ並木、砂地の集落道などは石垣の景観的魅力を高める要素であり、それらが一体的に残る場合は保全を図り、部分的に残る場合は足りない要素を復元する
祭祀・宗教空間や井泉のように歴史文化価値が高い場所で石垣の劣化がみられる場合、原状への復元整備を講じる
石垣が良好でかつ公共空地に接する場合、チンマーサー(積み回し)などを複合的に整備して、ランドマーク的な空間を創出する
花木は石垣に色彩感を加え、同時に外部の視線をさえぎるため、組み合わせの相性を踏まえて積極的に植える
新たに石垣を整備する場合、石材の素材感を大事にし、打ち欠きや洗い出しなどの仕上げを工夫する
良好な石垣に文化財的な位置づけを与えるなど、所有者、住民の意識向上をうながす。過度に保護するだけでなく、歳月を経ることで醸し出される変化(エイジング)も含めた美的概念を構築する
琉球石灰岩の適正価格を保つ。また、取り壊される石垣の素材をストックしておき、希望者に譲渡するなどの措置が望まれる
ヒンプンに花木を添えると良好な前景となり、背景の赤瓦とのコントラストも映えるため、なるべく一体的に整備する
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