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No.31所感=^_^= 人間観察「バスの中」

episode1

練習試合に行くと思われる中学生の集団。
職業柄、つい観察してしまう。

彼らが乗り込んだ時、バスは比較的すいていた。
空席があるときは、座った方が絶対邪魔にならない。
彼らは、そのセオリーどおり、座れる子は座っていた。

そこへ、子供を一人抱っこしてもう一人幼稚園児と思われる男の子を連れたお母さんが乗ってきた。
中学生の一人がさっと席を譲った。

中学生、偉い!

そのお母さんは、お礼を言って、子供を抱っこしているお母さんが座った。

お母さん、正解!

幼稚園児は、自分でバスの奥の方に進み、安定した角によりかかるようにして手すりにつかまった。
素早い行動から、いつもそのようにするよう、躾けられているんだと思った。

お母さん、偉い!

そして、バスは走り出した。

信号でバスが止まった時、引率のコーチと思われる方が、
「今だ!」
と小声で言った。
そうしたら、もう一人の中学生が席を立ち、後方で立っていた幼稚園児に座るよう促した。

その中学生は、親子が乗ってきた時、自分も席を譲ろうとしたが、自分の前で先に譲った中学生が立ちはだかり、うまく伝えることができなかったのだ。
その一瞬の躊躇のうちに、幼稚園児は自分を通り越して後ろに行ってしまい、バスは動き出し、完全にタイミングを逸した。

残念な気持ちを、頭を抱えるようなジェスチャーとアイコンタクトで、コーチと会話をしているその中学生の一部始終を、私は、一番後ろの席から見ていた。

それがあっての、コーチの「今だ!」だった。

その幼稚園児は、自分が立っているのは当然と思っているようで、困惑したように立ったままでいた。
信号が変われば、バスは動き出してしまう。
お母さんは、中学生が折角勇気を出して譲ってくれた行為を無にしてはいけないと、
「座らせてもらいなさい。」
と子供に言い、
「ありがとうございます。」
と、中学生にお礼を言った。

お母さん、完璧!

乗り物の中で、席を、誰に、どのタイミングで譲るかは、結構難しく、また、勇気のいることだ。

私は、年をとって堂々と座っていられるようになったことと、おばさんになって肝が据わり、譲るにせよ何にせよ、人に声をかけることに抵抗がなくなったのは本当にありがたいと思っている。



episode2

バスを待っている時、私の後ろにお父さんと幼稚園児くらいの男の子が並んだ。
その子は自転車に乗っていて、一度バス停を通り過ぎたのだが、バスに乗りたいと言って戻ってきた。
「よし、じゃあ、バスで帰るか。」
と、お父さん。

え、自転車どうするの?と思ったら、小さい自転車はお父さんが楽々肩にかけられるサイズだった。
なるほどね。

バスが来て、私に続いてその父子も乗り込んだ。
バスは、結構混んでいて、もちろん座れる席はなかった。
私はすぐに降りるので、出口付近に立った。

そうしたら、その幼稚園児が、
「ぼくの席は?座りたい!」と言い出した。
お父さんは、
「混んでるんだから、席はないよ。元気なんだから、立ってな。」
と言った。

そうだ、お父さん!

そうしたら、その子は、さらに駄々をこね、目の前に座っている人に、
「どいて!」と言う。
お父さん、
「すみません。元気なんだから、立ってるの。」

そのとおりだ、お父さん!

そうしたら、あろうことか、その後ろに座っていた、年配のご婦人(少なく見積もっても私より10歳以上年上と思われる方)が、
「どうぞ。」と席を譲ったのだ。

えー…

お父さんは、慌てて、
「大丈夫です。この子、元気なんで。」
と言ったが、ご婦人は、
「たまにはいいでしょ。」とか言って、席を立ってしまった。
お父さんは、
「いいです、いいです。元気なんで!」と言ったが、自転車を担ぎ、荷物も抱えているお父さんは、それ以上押さえることができず、その子はさっと座ってしまった。

バスの中に流れる、気まずい空気。

お父さんは、目的の停留所まで、この空気の中を耐えなければならないわけだ。
しかも、その子は、「どいて」と言えば、席を譲ってもらえると、学習してしまった。

子供は、自分の世界を生きていて、自分ファーストであるのは当然だ。
だから、その子が座りたいと駄々をこねたとしても、それはそれでいい。

社会の中でもまれて、自分の要求っていうのはそうそう通らないものだということを学習し、人とうまくやっていく方法を身につけ、自分をうまく生かしていく術を身につけていくわけだ。

周りの大人は、自己満足のために子供の成長の機会を奪うことは避けなければならないな、と思いながら、私は、バスを降りたのでした。

がんばれ、お父さん!

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