見出し画像

ー玖話ー 真実

麗奈「金縛りにあってる時”‬知らないお婆ちゃん‪”‬見なかった?」











...は?






俺は衝撃を受けた。
この人は一体何者なんだ…






俺「はい...見ました...」






麗奈さんの‪”‬知らないお婆ちゃん‪”‬という言葉。
曾祖母だと思っていたお婆さんは別人だったという事か…?
確かに、俺は曾祖母の写真を見たことがあるが
俺が見たお婆さんとは全く見た目が一致しなかった...



だが幼い頃の俺は、無理やり曾祖母だと思い込むようにしていた節がある。

曾祖母が守ってくれたのだと思いたかった。
‪‪”‬お婆さんを見てから金縛りにならなくなった‪”‬
というのも理由の一つではある。






麗奈「そのお婆ちゃんは神城さんが住んでいたアパートで孤独死した人だね。」






俺が住んでいたアパートで孤独死...?
そんな話聞いた事がない。





俺「まじですか...?その人悪霊ですか?
自分、今でもはっきりと覚えてるんですよね。その人の顔や服装の事。」




麗奈「当時は悪霊では無いけどなりかけてる最中だったね。」

麗奈「孤独死だから幸せな家庭を憎んでいた感じ。」

麗奈「だから金縛りに合わせるの。」






そのお婆さんが幼い頃の俺に金縛りにあわせてたって事なのか…?
金縛りは医学的にも証明されている為
大人になった俺は今までの事は全て気のせいだと思って生きてきた…







麗奈「神城さん、兄弟とかいる?親は?」


俺「兄弟はいないです。父親は離婚して今は別の所に住んでいますね。」


麗奈「そのアパートに住んでた時は?」


俺「最初は一緒に住んでましたね。三人で。」


麗奈「神城さん、可愛がってもらってたでしょ?」






俺は両親にセミ捕りやザリガニ捕り
キャッチボールや凧揚げによく連れて行ってもらっていた事を思い出した。






俺「可愛がってもらってました...」




麗奈「それが一つ目の妬み。」

麗奈「二つ目は自分が孤独死だったのに、そこに幸せな家族が入ってきたこと。」

麗奈「三つ目はその幸せな家族の中で喧嘩を多くさせて破壊する事。」

麗奈「四つ目はお母さんに取り憑いた時期があって
お母さんの体調を崩して神城さんを自分と同じように、最終的に孤独死させる事。」

麗奈「これが全ての狙いだよ」











嘘だろ...?
そんな事を急に言われて受け入れられる訳がない。
母親と父親は馬が合わなくて離婚した。
そちらの方がまだ俺も気分が楽でいい。
じゃあその孤独死したお婆さんに俺の家族は振り回されてたって事か?
そんな事なんてあるはずがない...




…だが俺はこの時、俺が幼い頃から母親から聞かされてきた
「あんたの父親はね、一緒に暮らし始めてから本性を現し始めたんだよ」
という言葉を思い出した。






俺「…もしかしてそのお婆さんの霊って、周りの人間にも影響与えたりしますか?」

俺「母親が、あんたの父親は一緒に暮らし始めてから本性を現しはじめたんだよ。って自分が幼い頃から聞かされてきてたんですけど...」



麗奈「本性を現したんじゃなくて、取り憑かれてたんだよ。」

麗奈「いつも言わないような事とか急に言われたりしたでしょ?」

麗奈「簡単に言ったらまず大黒柱から潰した方が次々潰しやすいでしょ?」






普段言わないような事…
確かに俺の中にはその記憶があった。
普段は優しく面倒見がいい父親が、電話でいきなり怒鳴ってきた記憶。





…..俺は頭の中が混乱していた。
麗奈さんは冗談で、当てずっぽで言って、たまたま当たっただけだろう。そう思いたかった…


だが俺はこの時、頭の中で冷静にこれまでの根拠を洗い出してみる事にした。






根拠①俺が過去に金縛りにあっていた事実。

根拠② 一緒に暮らし始めてから父親が本性を現した、という母親の証言。

根拠③ 母親の原因不明の病。生死の境を一週間彷徨った事。
・更に今現在も心臓の病気や脳梗塞、全身のだるさ等。
その原因不明の病から派生される病気に常に蝕まれている事。
・母親の体が悪い事を麗奈さんに当てられた事。


そして…
根拠④ ‪”‬金縛りにあってた時期‪”‬にお婆さんを見た事を麗奈さんに一発で当てられたこと。






これらが俺にとって強力な根拠となった。
そしてこれらの根拠に麗奈さんの理論を重ねた時
辻褄が合ってしまう...




俺「もしかして…そのお婆さんの霊、まだ母親に憑いてたりとかします?」


麗奈「それは本人を視て見ないと分からない。」


俺「母親に許可をとって、写真送るので視て頂けませんか?」


麗奈「いいよ。」




俺は母親に事情を説明して許可をもらい、麗奈さんに母親の写真を見せた。




麗奈「…大分悪霊に育ってるね。まだ憑いてるよ。」

麗奈「お母さんの右肩下がってるの分かる?」




写真を見てみると、確かに母親の右肩だけ
極端に下がっているのが分かった。






俺「はい。わかります…」







俺は幼い頃、母親と父親に可愛がってもらっていた事を思い出した。 











家族皆で凧揚げしにいった記憶。

父親に虫捕りに付き合ってもらっていた記憶。

キャッチボールに付き合ってもらっていた記憶。

いつも笑顔で俺と話してくれた記憶。










ふざけるな










俺は恐怖よりも怒りの感情の方が先に来た。



何なんだ老婆は…
自分の生前の憎しみを赤の他人にぶつけてんじゃねぇクソが!


悔しい気持ちが強くなる…






俺「悔しいです...」

俺「麗奈さん、その話聞いてると怖いよりも怒りの感情の方が沸いてきます。」

俺「理不尽すぎるでしょ」






悔しかった…
ここまで好き放題にされていて
三十年間、俺には何も出来なかった。
そして今でも俺には何も出来ない…






麗奈「……」

麗奈「自分の家庭崩壊させられてるんだから…そりゃあ悔しいよね。」






俺「…そういえば麗奈さん」

俺「俺の事を守ってくれている、神社の使いのなっちゃんはこのお婆さんの霊を母親から祓ってくれたりとかはしないんですかね?」



麗奈「なっちゃんはあくまで神城さんを守りにきてるだけだから、他の人には手を出さないみたいだね」



俺「そっか...」



俺「麗奈さんは、そのお婆さんの霊を祓う事って可能ですか...?」



麗奈「ごめん私、今は自分のエネルギーを使いすぎて祓える力無いから、来月(4月)中旬まで待ってくれる?」




俺「全然大丈夫です。」

俺「色々とありがとうございます…」




麗奈「祓いきれるかは分からないけど、私も精一杯の力だすね。」



俺「お婆さんの霊、そんなに力強いんですか?」




麗奈「何十年も憑いてるからね。強い所の騒ぎじゃないよ 笑」

麗奈「でも私が祓える域には達してるし、
不動明王様の力借りるから大丈夫だよ。」






良かった...
俺は安堵した。
この人には感謝しかない。

‪”‬不動明王様の力‪”‬?神様の力を使うってことか...?
なら絶対大丈夫だろう。

俺は麗奈さんの存在を心から頼もしく感じた。
そして感謝した。






麗奈「でも、もし失敗したら私死んじゃうかも。」






死ぬかもしれない...?
この人にだけは何もあって欲しくない。






俺「もし無理そうだったら、有名なプロの霊媒師にでも相談するので、無理ならいつでも言ってください!」




麗奈「わかったよ。でも多分大丈夫!」

麗奈「私にまかせとけ!」






俺はこの言葉を聞いた時に不安がスっと消えていくのが分かった。




俺「分かりました。」

俺「来月、よろしくお願いします。」




そして俺は、この日から麗奈さんのエネルギーが回復しきるであろう4月の中旬まで時間が経つのを待つことにした。



⇒(次話)ー拾話ー   拒否

目次に戻る⇒




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?