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遠野のホップ農家と同じ土俵に立って恩返しがしたい #010草刈朝陽

草刈朝陽
Kusakari Tomoya
ホップ農家
遠野ホップ青年部 部長

プロフィール
北海道出身。弘前大学で農業経済を学び、卒業後は農家を志す。青森県弘前市の岩木山麓しらとり農場、北海道洞爺湖町の北風農園で1年半研修。好きな作物を育てたいとの思いから、2018年より遠野市でホップの研修を開始。2020年にホップ農家として独立。遠野市在住歴2年。

2018年6月のある日。BEER EXPERIENCE株式会社(BE社)を立ち上げたばかりの吉田と浅井の前に、北海道から就農希望の若者がやってきました。

「就農したいと連絡をしたら、一度話を聞きにおいでよと言われたんです。でも、話を聞くたびに北海道と遠野を往復するのは大変なので、何も決まってないけど住むつもりで荷物をまとめて来ちゃって

そう話すのは草刈朝陽。「住むところも決まってないのか」と驚いた吉田や浅井たちが住居を手配し、結果的にBE社でアルバイトとしてホップ農家の仕事をさせてもらえることになりました。

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今ではホップ農家の先輩に教えを請いながら、ホップ農家として遠野で就農しています。とはいえ、すべての人が草刈のようにいくわけではありません。遠野で行動力ある若者を受け入れられる状況であったことと、草刈自身のこれまでの努力があったからこそ。そんな草刈ですが、大学までは特に農業に興味は持っていませんでした。

プロの農家として生きるには好きな作物を育てたい

大学はどこでもいい、特になりたいものもなかったと言う草刈は、青森県の弘前大学に進学。経済を学んでいたものの、授業に興味が持てず、ゼミも「単位がとりやすいから」という理由で農業経済のゼミを選択します。

「弘前はりんごの産地で、りんごの流通をフィールドワーク的に調査するゼミでした。経済学はまったく興味がなかったんですが、農家の方と話す機会もあって、そこから農業っておもしろいなと思うようになったんです

卒業後、農家の方々と「農家になりたい」という話をしていると、人づてで岩木山麓しらとり農場という有機栽培農家を紹介してもらえることに。まったく農業経験のなかった草刈は、1年間住み込みで農家としての勉強をすることになったのです。

北海道出身の草刈は、最終的に北海道で就農したいという気持ちもあり、その後は洞爺湖の北風農園へ。洞爺湖は標高が高く、高原野菜と言われるレタスやキャベツなどを栽培していました。そこで2カ月くらい経ち、そこで自分の気持ちに気づいたのです。

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農家は一生かけて取り組む仕事。そこではじめて、プロの農家として生きていくためには、自分が好きな作物を育てたほうがいいという考えが生まれました。

では、どんな作物だったらいいのか。自分が好きな作物を栽培するにあたって、農法は関係ない。あまり栽培されていない作物がいい。ビールが好きなこともあって、原料を調べてみると、ホップという植物があることを草刈は初めて知ります。

面白そうだと思った草刈は持ち前の行動力を発揮し、サッポロビールへ電話。上富良野町でホップ農家を営む稲葉氏を紹介してもらい、会いに行くことになりました。しかし、上富良野町ではホップ農家が4軒しかなく、初期投資もかなりの額が必要に。リスクの大きさに悩んでいた草刈に稲葉氏が一言、「ホップだったら、今は遠野がおもしろいぞ」。

その話を聞いた草刈は、すぐ行動に移したのです。

ホップ農家になりたいという行動力が結果につながる

遠野へやってきた草刈は、吉田からBE社で働くか、ホップ農家として独立するかという選択肢を提示されます。

「自分はとにかく食っていかないといけないので、とにかく働かせてください、とお願いしました。もしよければ、BE社で働き続けるか、ホップ農家として独立するかは、時間が経ったときに結論を出させてください、と」

そうやってアルバイトとしてホップ栽培を続けていた2018年11月。ホップ栽培をやめる農家から、畑でホップ栽培をやってほしいという依頼がありました。

「これもタイミングなのかな」と思った草刈は、独立を目指して別のホップ農家の研修生という形で、その畑を引き継ぐことに。草刈は農業次世代人材投資資金という制度を利用した研修生としての立場なので、すぐ農場主として独立できるわけではありませんでした。しかし、2020年3月に研修が終了。草刈は、ホップ農家として独立することができたのです。

遠野にはビールの里を目指せる土壌がある

研修生という立場とはいえ、遠野に来るまでにある程度の農業経験があり、現在ではホップ農家として一通りのことはできるようになっている草刈。そこで感じたのは、ホップ栽培だけで生きていくのは難しいという現実でした。

「解決策はいくつか考えられて、ホップ以外の作物を育てるか、栽培時期以外の収入を何かから得るか。そういう意味では、ビールの里という目標があるとホップ農家としても可能性を感じられるんです」

例えば、遠野醸造にお願いしてビールを一緒に造ったり、民宿や猟師と連携してみたり、そういう意味でのネタは、遠野にいくつもあると言います。

ただ、ホップ産地としての遠野を守ろうとするだけでなく、何かを変えていった結果、産地として残ることができる方法がいいのではないか。熟練した技術や知識を持っているホップ農家の方はリスペクトした上で、その先に何ができるかを考えることが、若い人の役割。草刈はそう考えています。

草刈は、遠野にホップ農協の下部組織としてかつて存在していた青年部も立ち上げました。若手ホップ農家の集まりで、青年部員11人のうち1人以外は全て遠野以外の出身者。月に1度の定例会でホップ栽培や遠野について意見を出し合っています。

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草刈がホップ農家として独立を選んだのは、遠野のホップ農家の人たちが大好きで、その人たちと同じ土俵に立ちたいと思ったから。そういう人たちに認められたい。そんな思いが草刈を動かしていました。

「遠野の人たちのすごいところは、何十年と培ってきた栽培技術を惜しげもなく教えてくれること。『お前のためなら何でも教える』と言ってくれるんです。そういう意味で、僕のような若い人と熟練の人が同じ方向へ進んでいける」

遠野には「ビールの里」を目指せる土壌というものが、ホップ農家の人たちの中にもともとあったのかもしれません。草刈をはじめ若い農家が育っていけるのも、そういった土壌があるからなのでしょう。



ホップの里からビールの里へ VISION BOOK


富江弘幸
https://twitter.com/hiroyukitomie

企画
株式会社BrewGood
https://www.facebook.com/BrewGoodTONO/
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