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30分で済む「病院分析」のポイント

 前回までは「フレームワーク」を使った「自己分析」について書きました。今回は、30分程度で行える「病院分析」について紹介します。

 自己分析を終えたら、次に「病院分析」を行います。自分の希望に合った病院を見つけるために重要なステップですが、自己応募以外の先生は「病院分析」をエージェントに任せきりです。しかし、エージェントから提供される求人票や情報だけで、その病院の実態や働き方は十分に判りません。
 そこで、WEBで30分程度で済む「病院分析」のポイントを紹介します。ミスマッチ防止のために、面談前に疑問点をみつけておきましょう。

30分で済む「病院ホームページ」の情報収集

 多くの求人票は「募集背景」に「体制強化」とだけ書かれています。これは増員だけでなく、交代でも欠員でも使われる曖昧な言葉です。そこで提案された病院のホームページを確認します。以下の項目をチェックすれば、30分くらいで、どんな情報が必要かが判ります。

■ トップページの「ニュース」や「更新情報」の日付
■ 募集科目の医師紹介ページ
■ 関連・提携先施設
■ 沿革
■ 施設名や院長名でのWEB検索

■ トップページの「ニュース」や「更新情報」の日付をみる

 最初に、トップページにある「ニュース」や「更新情報」の日付を確認します。もし1年以上更新されていなければ、このホームページは野立て看板同然で、あまり信頼できません。
 最新情報がある場合は、新任の医師の紹介や設備・サービスの変更点、開催されたイベントやセミナーなどが掲載されています。これらの情報から、病院の方針や特色、活動内容などが把握できます。

■ 募集科目の医師紹介ページをみる

 次に、募集科目に関する医師紹介ページを見ます。募集科目によっては、常勤医師の人数や氏名、卒業年度、出身大学、専門資格・領域などが掲載されています。これらの情報から、募集の理由や常勤医師との関係などを推測できます。

常勤医が1人いる場合

 たとえば消化器内科の募集で、常勤医が1人いるなら「常勤2人体制」を目的とした増員募集です。そんなのは当然ですが、重要なのは「自分が、この常勤医とうまく仕事できるか」という情報です。専門資格や得意な領域、外来コマ数や検査コマ数があれば、担当されている患者数や検査数が見積もれます。もし病院ホームページから常勤医の詳細な情報が得られないなら、エージェントに以下の情報を調べてもらいます。

・募集部門のWILLは何か(2人常勤体制で具体的に何をしたいのか)
・仕事の分担はどうなるか(症例などの取りあいはないか)
・部門内の人間関係はどうか(退職があったならその理由は何か)
・常勤医について(年齢、取得資格、得意領域など)
・常勤医の「人柄」が判る情報(口癖、性格、評判など)
・常勤医に面談で直接会って話ができるか

追加情報の項目

 こういった追加情報が必要になります。また見学面談では、この常勤医に確実に会えるよう手配してもらいましょう。

 さらに、エージェントには「より詳細なヒアリング」を依頼します。普通に聞いても、病院は「穏やかな先生です」としか返答しませんが、その常勤医と「うまくやれるかどうか」は先生にとって一番大事な情報です。
 常勤医の「人となり」を知るためには「日常的な口癖」や「コメディカルとの関係」を聞きだすことがポイントです。また、その医師の普段の「感情表現」と「話し方」についてヒアリングしてもらいます。
 感情表現は「豊か」か「控えめ」か、話し方は「断定的」か「問いかける」か、この2軸がわかれば「ソーシャルスタイル」を判断できます。(ソーシャルスタイルについては次回に説明します)

常勤医が不在の場合

 消化器内科医がいない場合は新規募集ですが、病院ホームページに内視鏡設備の情報があれば、内視鏡担当医が辞めた欠員募集です。最近に退職したり退職予定があるなら、どんな仕事をしていて、病院はそれをどう評価していたかをヒアリングします。これで医師に何を求めているかがわかります

 欠員期間が長い場合は、その理由を調べてもらいます。過去には、大学との関係が悪くなって医師の引き上げにあった、消化器内科と外科で軋轢があって退職した、症例数が激減したので辞められた例がありました。医師が定着しやすい環境かどうかを確認しておく必要があります。

 現在も内視鏡業務を行っているなら、非常勤医や消化器外科が担当しているので、エージェントに「内視鏡検査の役割分担」を確認させます。現場との相談なしの採用だと、入職後にトラブルが起こる可能性があります。

消化器チームの場合は、序列を確認する

 複数の常勤医がいる消化器チームで募集する場合は、チームの各医師の免許取得年や年齢、専門資格・領域を確認します。自分がどのポジションになり、何を期待されるかを予測します。もし欠員募集なら、辞めた人の仕事を引き継ぐことが期待されています。増員ならば、後輩への指導や独立して症例数の増加や適応範囲の拡大など、自分に求められる役割や貢献方法をリサーチしておきましょう。

ホームページに医師紹介ページがない場合

 中小病院では、医師紹介ページがないことがよくあります。一方で医師紹介ページに、常勤と非常勤を区別せずに並べている場合は、医師数を多く見せたいか、どこかの大学医局と関係している病院の可能性があります。

 医師紹介ページがない理由はさまざまです。
ホームページを作ったものの、メンテナンス予算がなく更新されていない。一部医師の掲載同意が得られず院長しか掲載できないケースや、医師の入れ替わりが多く、掲載しない方針にしている病院が考えられます。
 個人情報の関係で、医師の情報公開をしない病院もあります。情報公開前提の公立病院でも、本人の同意なしで写真掲載はしません。しかし、医師の名前が外来体制表でしか判らない病院だと定着率に問題があるかもしれません。

■ 関連・提携先を確認する

 大きな病院であればクオリティー・インディケーターが掲載され、客観的な指標確認ができます。それ以外は、病院ホームページから関連・提携先施設を確認します。
 患者がどこから紹介され、どこにいくかが判れば、担当する患者状態や、扱う症例をイメージできます。もし消化器の専門外来を約束されていても、該当する患者が来院しないなら意味がありません。
 関連施設のホームページをチェックすれば、転職候補の病院が、この地域でどういうポジションで、どんな対応を求められているかが想像できるので、そこで働く自分がイメージできます。

■ 沿革を確認する

 創立から何年目か、どこの系列か、途中で経営が変わっていないかをみて、病院の歴史を確認します。創立が古ければ、独自のマイナールールや、レガシーシステムが残っている可能性があります。これらは働き方や業務効率に影響することがあります。
 同族経営や親戚筋の役員が多い場合は、ワンマン経営だったり、意思決定に時間がかかる可能性があります。これらは人間関係やキャリアアップに影響します。
 一方で設立が新しい場合は、スピード感や柔軟性が期待できます。しかし、ハードワークや不安定さも覚悟しなければなりません。また、理事長や院長が若い場合は、積極的な経営や革新的な取り組みが期待できます。しかし、経験不足や方針変更も覚悟しておかなければなりません。

■ 施設名や院長名で検索する

 最後に、施設名や院長名でWEB検索をします。ホームページ以外にも、ブログや広報誌、ミニコミ紙面などのPDFページがヒットすることがあります。これらの情報から「病院が何を大切にし、どこに向かうつもり」かがわかります。たとえば、院長挨拶の記事が見つかれば、院長の人柄や考え方、ビジョンなどが分かります。これらは働く上でも重要な要素です。
 コメディカルの紹介ページや写真があれば、年齢構成や職場の雰囲気を感じとれるかもしれません。

まとめ

 病院分析は、自分との相性やマッチングを判断するために重要なステップです。ホームページ情報を30分ほど確認するだけでも「病院分析の材料」がみつかります。求人は「提案されっ放し」にせずに、自分で吟味することが大切です。
自分で情報収集を行って、浮かんだ疑問はエージェントに追加取材してもらいます。条件が一致しているようでも、アレンジなしでの入職が難しかったり、いくら推されても、応募してはいけない求人だと気づくかもしれません。
 面談前に「病院分析」を済ませて、見学面談で「答え合わせ」をするように心がけましょう。 


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