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転職準備で「WILL」を言語化する#2

 前回の記事<転職準備で「WILL」を言語化する#1>に引き続き、今回はネガティブな要素である「WON'T」から出発し、自己分析のフレームワークである「WILL」を具体的に言葉にしていく「ネガポジ反転」の方法について説明します。

対処法② ネガポジ反転による「WILL」の紡ぎ方

 「WILL」は出なくても、現状の不満「WON'T」はたくさん出ます。「WILL」を言葉にするために、以下のステップを実行します。

【ステップⅠ】 現状の不平、不満をリストアップする

 まず、現在の不満や不平をリストアップします。これには仕事、職場の人間関係以外の分野も含まれます。以下の8つの分野で書き出してみます。

  1. 仕事

  2. 職場の人間関係

  3. 給与(ファイナンス)

  4. 健康

  5. 家族

  6. 趣味

  7. 学び(研究)

  8. 地域・社会貢献・その他

 分野ごとに不平不満を思いつくままに書き出しましょう。このステップでは表面的でネガティブな表現で構いません。たとえば職場の人間関係なら「看護師が何も考えずにオンコールしてくるのに腹が立つ」や「安い給料なのに働き方改革で外勤禁止なら困窮する」といった感じです。

 不平不満をリストアップできたら、内容を見返します。
現時点で自分が満足している要素は、ここには表れないので注意してください。リストアップされたネガティブ表現は「不平不満」でしかありませんが「こうして欲しい」「こんなふうに働きたい」という気持ちの裏返しです。
 次の【ステップⅡ】では、なぜ嫌なのか「WHY」を掘り下げて「真因」を探ります。

【ステップⅡ】 なぜ嫌なのか「WHY」を繰り返して真因を探る

 ネガティブな要素一つに対して、その右側に「なぜかというと○○だからだ」と書きます。同じようにその右側に「なぜかというと○○だからだ」と書きます。この作業を納得するまで繰り返します。
たとえば「看護師が何も考えずにオンコールしてくるのが腹が立つ」
➡なぜかというと「経験の浅い看護師が多いから?」
➡なぜかというと「いや、医師に責任を押し付ける看護部ルールが変」
➡なぜかというと「変なルールを改めない組織体制に問題がある」
というように「WHY」を掘り下げます。

 こうして掘り下げていって「個人の問題点」から、実は真因は「運営の問題点」ではないかと思ったら、それを不平、不満、不安、不信のワードで表現します。この場合は「この病院の看護部運営に不信を覚える」となります。実際はいろんな要素が複雑に絡み合いますが、要素一つに対して作業を行います。
各項目で納得できれば、このステップは終了です。

 リストをざっと眺めると、一番右端の深層に書かれた不平、不満、不安、不信に共通するものが見えてきます。この例では「病院のガバナンスへの不信」が目立っています。

【ステップⅢ】ネガティブな要素を反転して「なりたい自分」を表現する

 【ステップⅢ】では、真因を参考にしながら、書き出したネガティブな要素を「ネガポジ反転」させていきます。
 表現の仕方は「未来で○○している自分」という形にします。
例では「看護師が何も考えずにオンコールしてくるのが腹が立つ」を反転させるので「しっかりしたコメディカルと協力して医師の仕事を全うする自分」になります。各項目ごとに「なりたい自分」を書き出せたら、それぞれに優先順位をつけておきます。

【ステップⅣ】優先順位に沿って「市場価値」を具体化

 ステップⅣでは優先順位に沿って自分の「市場価値」を具体化します。
まず「なりたい自分」の項目を優先順位の高い順に並べ変えます。優先順位の高いものはそのままに、優先順位の低いものについて「納得できる範囲」で条件緩和を検討してください。
 ようやく「WILL」を書き出したのに水を差すようですが、すべての希望に合致した求人などありませんし、そんな求人を目の前に出す「魔法使い」のようなエージェントもいません。
 たとえば消化器内視鏡にこだわりがあっても、内視鏡検査が優先順位の上位でないなら、思い切って上下部内視鏡検査とポリペクトミーができれば良しとします。高度な内視鏡スキルが強みでも、それを必要とする職場がなければ転職できません。でもBAEやEUSを諦めれば候補先の分母は増えます。

【ステップⅤ】「WILL」実現のためのリソースを別紙に書く

 「WILL」を書きだしたら、別紙に「ヒト・モノ・コト・カネ」「必要な経験や資格、環境」など、実現に必要なリソースを書き出します。これで自分の「現在地」から「目的地」までの距離とベクトル、超えるべきハードルが把握できます。3年後、5年後に実現させるための「課題」が見えてきます。

 付け加えると「WILL」で目指したいことが、5年後に時代遅れになってないか、未来の需要や展望についてアンテナを張る余裕があれば万全です。

まとめ

 【ステップⅠ】に書かれた不平不満は「転職の動機」です。転職のきっかけになりますが「転職理由」ではありません。
 「転職の動機」を使えないエージェントに話すと、伝言ゲームで「看護師とうまくやれない医師」という悪い印象を先方に持たれる恐れがあります。しかし、真因まで掘り下げれば、深層の「将来を見通せる職場で医師として仕事をしたい」という「転職理由」が正しく伝えられるはずです。

転職準備段階でこの作業を行わず、条件面だけでエントリーすると「ラクして給与を欲しがる医師」と一括りにされます。「なりたい自分=WILL」を言葉で表現しておくことが大事です。

 面談で必ず聞かれる質問に「なぜ当院を選んだのか」という「志望理由」があります。ネガティブな「WON'T」から、なりたい自分「WILL」を言葉にするネガポジ反転なら「転職理由」と「志望理由」に一貫性が生まれ、説得力も増します。

 注意したいのは、現職場で「空気のように当たり前」のことが、転職先ではそうではない場合があります。いまの職場で満たされている条件は、ここには表れてこないので、もう一度確認をしておきましょう。

次回では、転職の最初の分岐点になる「スペシャリスト志向」か「ゼネラリスト志向」かについて考察します。


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