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医師転職における「3つの転職戦略」

その転職は「逃げ」?「攻め」? それとも…

 あなたの転職は「逃げ」ですか、「攻め」ですか?
転職動機を二択で聞かれることがありますが、それは本当に適切な問いでしょうか?

 キャリアアップへの挑戦など「転職動機が前向き」だと「攻め」と呼ばれ称賛されます。逆に、職場環境や給与などに不満があるなど「転職動機が後ろ向き」だと「逃げ」と呼ばれ、否定的なニュアンスが漂います。
「逃げ」は、企業戦士の頃から「自分の思い通りにいかなければ転職」する逃亡行為で、許しがたい「悪」とみなされていました。

 最近でこそブラックな職場からの「逃げ」に、肯定的な意見は多くなりました。労働人口の減少や、厚労省の「ホワイトマーク」が作られた社会背景の影響でしょう。それでも、転職理由が「逃げ」だとエージェントから次のようなアドバイスを受けます。
「面接では評価されないので、回答を工夫しましょう」
 因みに「逃げ」の転職動機でも「なぜ嫌なのか」の問いを繰り返して「本質的な問題」に行き着けば、未来志向の動機が表れます。これは後ほどご案内します。

 今回は逃げの転職動機への悪印象は外したうえで「攻め」「逃げ」に「守り」を加えた転職の道筋として「3つの転職戦略」を検討してみます。

医師転職における「3つの転職戦略」~「逃げの戦略」

「攻めの戦略」「守りの戦略」「逃げの戦略」をそれぞれ定義しておきます。まず「逃げの戦略」の定義を「緊急脱出:エスケープ」とします。
 「できる限り尽力したが何も変わらない」「このままでは成長できない」「自分で解決できない不満やストレスが重なって心身の健康が蝕まれそうだ」そんな場面に採らざるを得ない緊急脱出なので「逃げの戦略:エスケープ」です。

 耐え難い状況からの「緊急脱出」は「悪」でも「恥」でもありません。強いていえば「無言の抗議」でしょう。仕事で心身の健康を損ねてしまっては本末転倒です。

 ただ転職戦略としての「緊急脱出:エスケープ」は、ハンディを二つ背負っています。一つは転職までの時間がない、または限定されること。
もう一つは、転職する先生の多くが「心理的なダメージ」を負っていること
です。この二つの条件下での転職は「リスキー」です。焦って進めると失敗するリスクが高くなります。

 先生が「心理的なダメージ」を負っていて、それを手当をしないまま転職すると、次の職場でも同じ問題が起こる可能性があります。どちらが悪いとかではなく、職場で生じたコンフリクトの「本質的な問題」を明らかにします。作業的にはそれを「言語化」できれば終了します。「本質的な問題」を言葉で認識できれば、少なくとも同じ失敗を回避できます。

 しかし「本質的な問題」を客観視するのはとても困難です。どうしても問題のディテールに視線が集まり、そのたびに「怒り」が噴出するからです。そこで、転職相談に来られたら、視線をどんどんズームバックしてもらいます。一人では難しい作業なので、信頼できる人に協力してもらうのが良いでしょう。

医師転職における「3つの転職戦略」~「攻めの戦略」

「攻めの戦略」の定義は「先取り:プロアクティブ」とします。
キャリアアップや収入アップなどを目指して、自分から積極的に動く転職戦略であり、事前の準備が重要なポイントです。自分のやりたいことを実現できる職場を見つけ、そこでどんな経験やスキルを身につけるべきか、またどうやってアピールするかが活動の中心になります。

「攻めの戦略:プロアクティブ」を採っていて「本当にやりたいことは何か」「人生において一番大切なものは何か」が即答できる方なら、転職エージェントは不要です。そこで働くために必要な資格や症例数、紹介人脈、アプローチ方法と機会など、これらを準備するのは自分自身だからです。

 もし、即答できるその内容が、現在の延長線上にあるなら転職する必要がありません。
もし、その答えが漠然としているなら「未来で自分がしたいこと、現在までに自分ができること」を言語化する作業をします。
 それを信念として人に語れるようになれたら、そこに向かう階段を一つずつ登れば良いのです。

医師転職における「3つの転職戦略」~「守りの戦略」

 「守りの戦略」の定義は「前もって守る:プレザーブ」とします。
自身のキャリアを維持したり、職場での安定を得たりするために行う転職戦略です。この転職戦略では、今の職場で働き続けることも選択肢の一つです。「失うもの」と「得るもの」を比較して「得るもの」が上回れば転職も辞さないのですが「逃げの戦略:エスケープ」と違うのは、今いる職場の居心地がそんなには悪くはなく、まだ壊れていないことです。

 「守りの戦略:プレザーブ」は、30歳代半ば以降の中堅以上の方むけの戦略です。この世代は、配偶者や家族の事情も考慮しなければならず「守るもの」が多くなるからです。一方「攻めの戦略:プロアクティブ」は、30歳代半ばまでの若手の先生向けの転職戦略です。

「守りの戦略:プレザーブ」では「何が譲れないか」を明確にします。「譲れないもの」を明確にできれば、それを確保した上で「自分がやりたいこと」「キャリアを維持できる職場(待遇)」を探します。もちろん「譲れないもの」は、年齢やライフステージで変化します。5〜10年ごとに「譲れないもの」を見直すことが必要です。
エージェントは、転職先の詳しい情報を得るために活用すればいいでしょう。

 以上、「転職活動でたどるべき道筋」を「3つの転職戦略」としました。どの転職戦略を採るかによって、転職活動の準備や進め方は少しずつ異なってきますし、エージェントの使い方も変わります。転職準備をされるなら、自分はどの転職戦略を採るのか考えてみてください。

まとめに代えて

 前述の通り、ご自身が「逃げの戦略:エスケープ」を採ることが予測されるなら、早めに「信頼できる方」への相談をおすすめします。
 実際、転職準備もなしに「退職宣言」してしまった方や、退職してから相談される方もいらっしゃいます。しかし、履歴に「ブランク」ができてしまったら、求人先に「突発的に辞めた先生では?」「メンタルに問題があるのでは?」というマイナスイメージを持たれやすいのです。

 信頼できる相談相手が見つからない場合は、エージェントに相談することもできますが、その際は注意点があります。まず「相談を優先したいので、最低でも2週間は求人提案を受けない」と伝えましょう。相談に2週間かければ「怒り」も鎮まります。自分を客観視して、問題が整理できれば、クールな頭で求人を判断できるようになるからです。

 「信頼できるエージェント」なら、先生の状況を理解して問題を整理してくれます。しかし、そうでないエージェントも存在します。頭がクールでない状態では、すべての求人提案が「良く」見えます。「そんなに給与が上がるのか」「こんな求人もあるのか」と、違いがことさら魅力的に見えて、一時的に錯覚しやすいのですが、入職して頭がクールになると「思ってたのと全然違う」となります。

 そうでないエージェントに限って、転職を早く決断するよう迫ってくるので注意します。もし強引に面談を勧めてくるなら、面会ストップをかけましょう。先生の状況を一顧だにもしないエージェントに義理立てする必要は全くありませんから。

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