とやまなみ

1956年生まれ。音楽、本、美術を愛するが、全て受け取る側にいる。楽器が弾ける、歌える…

とやまなみ

1956年生まれ。音楽、本、美術を愛するが、全て受け取る側にいる。楽器が弾ける、歌える、絵が描ける人を尊敬する。いろんなものを捨てながら下降する人生にKing Gnuが現れ、考えてもいなかったことに手を出し始める。不思議、楽しい。別名義で詩、随筆などを書くこともある。

記事一覧

蜜月

ありがとう 水筒をコトンと置いて 十五歳の息子は言った ここ数年 胸の内を占領していた固まりに 亀裂がはしり 静かに崩れ落ちていく 同じ家の中で N極の息子とN極のわた…

とやまなみ
2週間前
4

ひとりぼっちで観てきた

 井口さん主演の「ひとりぼっちじゃない」を観てきた。なんでも忘れるお年頃、覚えているうちに感想など。  この映画に音楽はない。冒頭からポコポコという音が流れてく…

3

多い 少ない

 ジョブコーチとTEACCHプログラムという言葉を初めて耳にしたのは、30年近く前だ。当時は知的障害者通所更生施設という位置付けの、真新しい建物の一室だった。その前の…

3

King Gnuと66歳と

 11月20日東京ドームの大歓声の中、満面の笑みで肩をくむ四人の若者。どこか見覚えのある光景だった。  オードリーの若林さんによると、おじさんの定義は33歳から…

5
蜜月

蜜月

ありがとう
水筒をコトンと置いて
十五歳の息子は言った
ここ数年
胸の内を占領していた固まりに
亀裂がはしり
静かに崩れ落ちていく

同じ家の中で
N極の息子とN極のわたしが
同じテーブルに座っている
コップが倒れ
ソースがこぼれる
息子の円周とわたしの円周は
けっして
触れ合わず
交わらず
本日の栄養素が
その効能書のままに摂取される
十三歳の息子だけが
理科の実験のように食事をする

地軸がい

もっとみる
ひとりぼっちで観てきた

ひとりぼっちで観てきた

 井口さん主演の「ひとりぼっちじゃない」を観てきた。なんでも忘れるお年頃、覚えているうちに感想など。
 この映画に音楽はない。冒頭からポコポコという音が流れてくる。パンフレットによると、胎内音をイメージしているらしい。何か動きがあるたびにポコポコと流れてくる。わたしには明るい草原でキラキラ光を反射している透き通った湧水の音に聞こえた。映画の中で繰り返される誕生と再生の伴奏音のように。

 ジャング

もっとみる

多い 少ない

 ジョブコーチとTEACCHプログラムという言葉を初めて耳にしたのは、30年近く前だ。当時は知的障害者通所更生施設という位置付けの、真新しい建物の一室だった。その前の無認可作業所から引き続きの人や、新しく雇用された人がいっしょに、アメリカ帰りの研究者から最新の情報の研修を受けた。
 ジョブコーチというのは福祉の観点から出発したのではないと思うと、その研究者は言った。ジョブコーチという新しい職を得た

もっとみる
King Gnuと66歳と

King Gnuと66歳と

 11月20日東京ドームの大歓声の中、満面の笑みで肩をくむ四人の若者。どこか見覚えのある光景だった。

 オードリーの若林さんによると、おじさんの定義は33歳から66歳までらしい。女性も同じとするならば、ぎりぎり土俵際のおばさんがなぜこんなにも彼らに惹かれるのか考えてみた。
 もうすでにいろいろな人がいろいろな表現であの二日間について言及しており、音楽的な素養なぞないただの音楽好きのおばさんが今さ

もっとみる