ありがとう 水筒をコトンと置いて 十五歳の息子は言った ここ数年 胸の内を占領していた固まりに 亀裂がはしり 静かに崩れ落ちていく 同じ家の中で N極の息子とN極のわたしが 同じテーブルに座っている コップが倒れ ソースがこぼれる 息子の円周とわたしの円周は けっして 触れ合わず 交わらず 本日の栄養素が その効能書のままに摂取される 十三歳の息子だけが 理科の実験のように食事をする 地軸がいつの間にかずれ始め わたしたちは 日ごとに磁力を失う 細かな砂の舞うひなたで 足
井口さん主演の「ひとりぼっちじゃない」を観てきた。なんでも忘れるお年頃、覚えているうちに感想など。 この映画に音楽はない。冒頭からポコポコという音が流れてくる。パンフレットによると、胎内音をイメージしているらしい。何か動きがあるたびにポコポコと流れてくる。わたしには明るい草原でキラキラ光を反射している透き通った湧水の音に聞こえた。映画の中で繰り返される誕生と再生の伴奏音のように。 ジャングルかと思う強い緑の植物に覆われた小さなトンネルを潜りぬけた先に、また緑に絡まれた
ジョブコーチとTEACCHプログラムという言葉を初めて耳にしたのは、30年近く前だ。当時は知的障害者通所更生施設という位置付けの、真新しい建物の一室だった。その前の無認可作業所から引き続きの人や、新しく雇用された人がいっしょに、アメリカ帰りの研究者から最新の情報の研修を受けた。 ジョブコーチというのは福祉の観点から出発したのではないと思うと、その研究者は言った。ジョブコーチという新しい職を得た人、ジョブコーチがいることで働くことができるようになった人、双方から税金を取ると
11月20日東京ドームの大歓声の中、満面の笑みで肩をくむ四人の若者。どこか見覚えのある光景だった。 オードリーの若林さんによると、おじさんの定義は33歳から66歳までらしい。女性も同じとするならば、ぎりぎり土俵際のおばさんがなぜこんなにも彼らに惹かれるのか考えてみた。 もうすでにいろいろな人がいろいろな表現であの二日間について言及しており、音楽的な素養なぞないただの音楽好きのおばさんが今さら何をと、思わないでもない。が、歳をとると見える景色が変わってくるものだ。それに