見出し画像

思索メモ・【 テーマ・部屋の暖炉、書物の温もり】

自分の拠り所となる書物が部屋にたくさんあると、その書物が自分のことを守ってくれているような感覚を覚えることがある。
「本は最良のアドバイザーである」と哲学者のフランシス・ベーコンは言った。
これを本は最良の守護者である、とも最良の味方である、とも言い換えたい。
例えば、その人が属している環境(広義では国あるいは世界、狭義では何らかのコミュニティや集団) に違和感を感じていたり、除け者になっているとしよう。しかし書物で示されるアイデアは時代を超越し、国境をも越えるので、もしその人のアイデアや価値観が真理に近く、フラットで、理性的なものを秘めている場合、その書物および著者はその窮地にある人に共鳴し、味方となってくれるかもしれない。
このようなケースはいたって珍しくないのではないだろうか。
例えば、私の場合、ドベリ著『シンククリアリー』や安宅和人博士の『シン・ニホン』やバートランド・ラッセルの『幸福論』を読んで、現代世界の悪弊的な部分と良い部分を認識し、多面的な観点から、未来や人生をより豊かで、実りあるものにしたいと志向した。
つまり、時代の先を見透すような啓蒙的な著作に触れると、知性に開眼し、少しずつではあるが、人生と私たちが暮らす人間社会を前進させたいというような希望と意志が芽生える。そう、書物はある種の冷徹さがある。世界の観察によって、改善していく必要のある因習なり、バイアスなり、制度なり、行き詰まったシステムの諸々を実に正直に批判してくれることが多々あるのである。それはその書物を書いた著者が弛まぬ努力と決意によって論理を組み立て、多大な労力によって書物を完成したからであり、そうした書物は知恵の塔である。
もちろん、今日出版されているすべての書物にそれが適応できるわけではなく、スタージョンの法則によれば、真価のあり、知的耐用にかなう塔は全体の10パーセントほどであろう。
さて、書物が部屋にたくさんあると温もりがあるというテーマで話してきました。
結論として、人類が動物的本能や悪弊との厳しい闘いの末、ようやく勝ち取った知恵と理性の果実が、今日私たちが図書館や書店で出会うような書物には秘められている。書物は、重厚な知識と知恵へアクセスできる理性の暖炉である。その暖炉は、人類の進歩と平和をデザインするデザイナーによってデザインされた。
だからこそ、書物が部屋の暖炉のように感じられるのでした。 

ご清聴ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?